第17話 接続。

 初めての『接続』を体験したアリエスは、こう証言する。


「――――前世の映画で見たような、人間に寄生したり、お腹の中から飛び出してきたりするタイプの宇宙人エイリアンに襲われたのかと思いましたわ」





 コックピットに魔素が充填され、「デハ、『接続』ヲ開始スル」と巨大ロボットドラグヌフに告げられたアリエスが最初に目にしたのは、コックピットの上部が開き、脂か何かの液体でテラテラと濡れ光る、大量のチューブとケーブルが自分に襲い掛かってくる場面であった。


 逃げられないように、手足をケーブルで固定され、次々と濡れたチューブに『接続』される。

 視界は先端がゴーグルの様に形作られたチューブで塞がれる。

 悲鳴を上げる間もなく、次から次にチューブやケーブルが全身に接続されていくのは、純粋に恐怖であった――。



「本当に酷いですわ。これではまるでレイプ同然です」


 説明無しでこの仕打ちとなったアリエスはご立腹であった。



「スマナカッタ、我ガ主マイマスター……」

「『接続』とは毎回こうですの?」

「コレハ慣レテモラウシカナイ。大丈夫、直グニ慣レルト思ウ」



(――成る程、『全裸、又は下着のみ』になる必要があったのは、この『接続』を行う為だったのですね……。確かに、下着一つを身に付けるだけで、接続度は落ちてしまうかも……?)



『接続』が終わった今、アリエスは全裸――いや、上下白色のシルクの下着だけを身に付け、コックピットに座っているだけ。

 しかし、ドラグヌフの説明によると、この空間コックピットは仮想現実――バーチャルVリアリティR空間であるという。

 きっと、現実のアリエスは、手足をコックピットの座席に固定され、あのどこか淫らにも感じられる大小無数のチューブが接続されてしまっているのだろう。



(きっと、現実の私は『触手モノ』――触手を持つ架空の生物が女性を性的に襲う、前世日本のエロジャンルのひとつ――みたいになってますわね……)



「せめて、仮想現実V R空間では服は着れないのですの?」

「着レナイ事ハ無イガ、余計ナ演算ヲシナクテハナラナクナル。カナリノ性能ニ影響ガ出ル。逆ニ全裸ニナッテクレルカ?」

「下着で、妥協しますわ……」



 シルクの下着に施された凝った刺繍には、大きな演算能力が割かれているのだが、残念ながらアリエスがその矛盾に気づくことは無かった……。


 


接続コネクションコ完了ンプリーテッド。コレヨリ、10分間ノ『初回講習チュートリアルモード』ニ移ル」

「10分間!? そんな長い時間を取ってしまったら、私の連れが捕まってしまいますわ」

「我ノ計算ダト、アト約15分ハ問題ナイ筈ダ」

「そうなのですか? では、良いでしょう。初回講習をお願いします」

「承認。デハ、初回講習チュートリアルモード没入ダイブ開始」


       バシュ


 アリエスが、現実世界の首筋後ろ辺りに繋がれたチューブから冷たい薬品が打ち込まれた様な気配を感じると、アリエスの意識は強烈に暗い奈落へと引きずり込まれていった――――――――。


「また、説明も無しに、本当に酷いです――――――――」






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