第3話 婚約破棄だ!

「シンタロウ様、突然どうされました? 学園内では接触を控える様にされていたかと思ったのですが」


 アリエスはそう問いかけながら、シンタロウが隣にいるミレニアに腕を組まれている事に気付き、違和感を感じ始める。



「ちょ、ちょっと、ミレニア様。私のシンタロウ様にくっつき過ぎではありませんの? シンタロウ様は私の婚約者であって、貴女のではないのですけど――」


 と、一応ミレニアに注意しつつも、何が起こっているのかと身構えるアリエス。



 ミレニアの表情は普段以上にオドオドとしつつも、シンタロウにピタッとくっついて離れない。

 シンタロウは若干興奮した面持ちで、雰囲気はいつにもまして熱血少年の様子、そしておもてに出さないように努力しているつもりだろうが、漏れてしまっている悦びの感情。


 一方のユキヒデは2人から少し離れた後ろから「あ~あ」というため息混じりに右手をおでこに当て天を仰いでいるポーズ。



(これは、何かとんでもない事態が起ころうとしつつある……?)



「あー、アリエス嬢。いや、アリエス・グリムス・エルアルスペイド殿。貴女との婚約は今ここに無効とさせていただく。つまり、婚約破棄ということだ」



 シンタロウが口にしたそのセリフの内容は、ある意味、アリエスが咄嗟に予想した通りのものであった。

 問題はその理由だ。

 アリエスはその理由をすかさず問う。



「理由? それは、先ほど我が国『ウァーン共和国』と貴国『アィーヒ帝国』の間で紛争ふんそうが勃発したからだ。そして、この紛争は戦争へと発展する見込みだ」


「せ、戦争ですの? それは、本当に?」


「本当だとも。急いだ方がいい。今から18時間後には、貴国との通行手段は全て閉じられてしまう。そうなったら貴女は戦略捕虜にされてしまうだろう」


「あ、ありがとうございます。シンタロウ様、ユキヒデ様、ミレニア様、短い間でしたが本当にお世話になりました」




 彼らとはこれからてき同士になるわけだが、別に直ぐに憎くいかたき同士になったりする訳ではない。

 アリエスは短いながらも心を込めて今までの礼を述べ、帰国の準備をする為に急ぎこの場を離れた。





 アリエスが退場した後、シンタロウは喜びの声をあげていた。


「戦争だから、仕方が無い。婚約破棄だ!」


 彼の頭の中は、『これで大好きな幼馴染みエルフのミレニアと結婚してエロフできる』という事でいっぱいであった。

 その様子をみて、ユキヒデは『他の政略結婚相手が用意されるだけなのに』と心の中でため息をつく。



「シンタロウ……」と隣で意味ありげに呟いているミレニアは、特に何も考えていない。

 雰囲気だけの女、それがミレニアだった。






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