にた

俺の身長は174cm

相手の身長は210cmを超えるであろう大男だ。立派な立て髪があることよりこいつは獅子族なのだろう。


「よくぞ、ここまで、勝ち残ったな。」


「相手が弱かっただけですよ。あなたもどうせ弱いでしょ?」


「痩せ我慢にしては、吠えるな。もう、満身創痍なのだろう?」


「そうでね。なので、やっぱり少しトイレ休憩をしましょう。2時間ぐらい。」


「いや、お前の消耗は死んでいった奴らのためにも無駄に出来ん。」


「死人に口なし、そんな事思いませんよ。」


「審判」


喋って時間稼ぎしたいのに、全然出来ない。

体力がない。いつもそうだ。

普通に考えて、休憩させろよ。

俺は一人で頑張ってるんだぞ。


「それでは、利用者離れて。」


会場が異様な雰囲気に囲まれる。

俺は咎められるか、咎められないかギリギリの速度で離れて、ゆっくり槍を構える。


「初め!!!!!!」


今日一番の熱狂が会場を包んだ。

相手は武器を持たない。どうやら武闘家らしい。こいつの全身が凶器なのだろう。

武闘家の厄介なところは掴みも寝技もあるという事。

守りに徹したいが、俺もある程度攻撃しないと、掴み攻撃が飛んでくる。

さらに体力を消耗させる。

俺が槍術スキル持っていて良かった。相手がレベル3でも防御に専念すれば捌き切れる。


そして、明らかな防戦一方か30分は続いたであろう。


「良く耐える。経験と自信に裏打ちされた見事な受けだ。」


「そりゃどうも。僕の勝ちでいいですか?」


「それは無理だな。本気を出すぞ。すぐには死ぬなよ。」


「うるせえ。お前が死ね。」


「獣化。」


大男は獣化スキルを使用する。

獣化魔法は選ばれた獣人しか使えない獣人専用魔法。

大男にどんどん獅子の属性が増えていく。

戦わなくてもわかる。こいつさっきより明らかに強くなっている。


「久しぶりだな。本気を出すのは。」


「俺もだ。久しぶりに本気を出してやるよ。」


俺は精一杯強がる。

獣化魔法とは理性と引き換えにステータスを向上させる魔法のはずだ。それでも、喋れるぐらい理性が残っていることは、相当鍛錬を積んだか、相当才能があるかのどっちかだな。

どちらにしても、俺にとっては最悪だ。


そこからはカウンターなんて考えられないほどのラッシュ、ラッシュ、ラッシュ。

毎日、騎士達にボコボコにされて良かった。

あれが無かったら、絶対に死んでた。

俺は途中から吹き飛ばされていた。

守るのではなく、脱力。

攻撃の威力をかわし、かつ休憩して体力を稼ぐ。

騎士達との訓練があったから目が慣れて、こいつの動きが分かる。

素人が170kmを打てるように。

そこにそのタイミングで来るとわかっていれば、なんて事はない。


一時間後。

俺はまだ、立っていた。

正直、意識が朦朧としてる。腕と足の感覚も怪しいが、問題ない。

まだ槍を振れる。

それに、今は俺の方が有利だ。

途中から、超集中で攻撃を最低限の動きだけで、いなせるようになっていた。

だから、とにかく執拗に足を攻撃した。

それも同じ部分を、そうすることによって相手を鈍らせたのだ。

足が止まったら、いくらでも打てる手がある筈だ。



「認めてやる。お前は、俺が戦ってきた中で最強だ。速さじゃない、力強さでもない、ただ、上手い。技術だけで、俺を押さえ込むとは。」


俺は答えない。答えられる余裕がない。

もっと喋ってくれ。俺の体力が回復する。

後、二時間は一人で喋っとけアホ。


「だから、俺も切り札を出さされた。」


切り札?


「完全獣化。」


完全獣化とは選ばれた獣人の中で更に選ばれたものしか使えない魔法。

半人半獣みたいな姿になり、理性が完全に無くなる。

その代わり、とんでもなくステータスが爆上がりする。

それこそ、レベル差を覆せるぐらい。


大男がどんどん獅子の属性が増えていく。

それに伴い、存在感が跳ね上がる。

レベル4ぐらいはあるんじゃないのか?知らんけど。


しかも、俺が頑張ってつけた足の傷は完全に回復していた。

回復力も上がるらしい。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る