ゴブリン図鑑

3日目の朝

砦が半壊していた。

昨日より、オークの数が増えているのだ。しかもオークだけでなくオーガの死体まであった。アリシアパパ頑張ったんだな。


「やばいな。」


アリシアパパが起きてるうちに作戦会議を始めた。


「魔王を倒しましょう。騎士を待ってたら、要塞が壊れます。」


俺は魔王を倒すよう、提言する。


「そうですね。正直、今日の夜が限界だと思います。」


アリシアパパも俺の肩を持つ。実際持たないしね。


「そうか。そんなに早く消耗するのか。」


「普通なら、もう近くの騎士が来ていてもおかしくないですからね。ただ、今回は魔王が2対出ましたから。」


「そうか。それでどうやって倒すのだ。」


「僕が隠蔽のローブを使って暗殺しますよ。それしかありません。」


「危険すぎないか?」


「隠蔽のローブは攻撃にも逃げることにもどちらにも使えます。それに僕は狩人ですよ。」


「そうか。」


アリシアパパも村長も難しい顔をしているが、これが最善の選択肢だ。

といううかこれ以外はない。


「分かった。夜班の奴らが少し休んで、昼になったら作戦結構だ、それでいいな?」


「はい。」


「リュウ君気をつけるんだよ。」


「大丈夫ですよ。今までだってそうでしょう?」


「ああ、そうだね。」


俺はとにかく、できる限り要塞の修繕に時間をかけた。

オーガもオークも無茶苦茶増えてるじゃねえか。クソ疲れた。


「聞いたよ、またリュウが無茶するって。」


「しょうがない。今回ばかりは本当にしょうがない。」


「それは、そうだけど、、、。でも。」


「大丈夫だよ。俺はこの村の英雄らしいからな。」


アリシアは悲しい顔をする。泣きそうだ。

俺だって泣きたい。なんで、こんなに不幸が重なるのか。

本当なら、今はフィーネ達とお昼寝するか、新作料理を作ってる時間なのに。


「生きて帰ってきてね。」


アリシアにキスされた。

いつか、アリシアにこんな顔させない男になりたいぜ。


「当たり前だ。」


俺は森の中を走る、走る。隠蔽の魔法の最も濃いな所を目掛けて、

その先に魔王がいるはずだ。

少なくともこの魔法を使っている張本人がいるはずだ。


「ここか。」


俺の目には何もないように映るが、狩人の勘がそれを否定する。

絶対にここにいる。

木の上から

最も、魔力の濃い場所に魔法弓でない、普通の弓を全力で打ち込む。


「ギャ!!」


隠蔽の魔法がなくなり、その姿が露わになる。


「ゴブリンソーサラーか。」


ゴブリンシャーマンの進化系。

ゴブリンソーサラーは、俺の弓が腹に刺さっていた。

そして、周りを見ると武器ゴブリンの進化系のゴブリンウォリアーが数百匹はいる。ゴブリンの親戚のくせに一匹でオーガ数体を相手にできるクソ魔物だ。

ゴブリンソーサラーともう一匹の黒いゴブリンを守っている。


「あの黒いのがゴブリンの魔王か。強さは普通のゴブリンだけどな。」


感覚的には普通のゴブリンだ。

そう思い、もう一つの矢を打とうとした時、ゴブリンウォリアー達が2匹を守る。


「関係ねえよ。ウォリアーごと貫いてやる。」


全力で射撃する。ウォリアーが守るがそれごと貫いて、ゴブリンの魔王を狙撃する。

しかし、ソーサラーが身を挺して魔王を守り、ゴブリンの魔王は九死に一生を得る。


「もう一つだ。」


もう一度狙撃しようとした時、背後に嫌な気配を感じ、即座に木の下に飛び降りる。


「やっぱり、ゴブリンアサシンか。」


気配を消すことが得意なゴブリン。ソーサラーに隠蔽の魔法を付けられたままだったら、確実に俺が殺されてた。


「でも、お前だけなら、雑魚だろ。」


木の上に飛び乗って、ゴブリンアサシンを殺そうとした時、近くから強い魔力を感じ、飛び避けた。

でかい、火の矢が放たれ、ゴブリンアサシンごと俺に降り掛かってきた。


「ゴブリンワイズだと。最悪だ。」


ゴブリンアサシンは火だるまになって死んだ。

ゴブリンワイズとは、攻撃系の魔法に特化したゴブリンだ。

厄介この上ない。

遠距離攻撃できるやつを黙らせないと、弓なんて打てないぞ。




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