戦争

「あんた、自分の村に行きな。」


「なんで?」


狩人のババアがなんか言ってきた。


「あんたの村に魔王が現れるかもしれんだろ。要は探索がかり兼伝達係さ。」


「なるほど。分かった、それでいつからいけばいい?」


「10日後ぐらいには行っときな。」


「分かった。」


フィーネちゃん達と少しのお別れしとかないとな。

フィーネとマークは泣いてた。可愛いから。たくさん遊んでたくさん昼寝した。


「ちゃんと生きて帰ってきなさいよ。」


「大丈夫ですよ。公爵領は広いんですから、流石に僕の村に現れませんよ。」


「それだと良いんだけどね。」


狩人のババアに伝達用の鷹一匹渡された。これ絶対魔物だろ。

俺はピーちゃんと名付けた。お肉を毎日あげてたら、懐いた。

村に戻ると、みんなが何か準備していた。


「何してるんです?」


「ああ、もしものための準備をしてるのさ。」


「へ〜。何か手伝えることあったら手伝いますよ。」


「おう、壁の補修に行ってくれ。」


いつも村の中央にあった古びた壁が綺麗になってる。

NPCジジイによるとこの壁は、昔からこの地域に魔王が出た時に騎士が駆けつけるまで、持ち堪えるための要塞らしい。

要塞ではないだろ。力仕事を任されて、とにかく、壁を分厚く円を描くように建設して、中には村人全員が過ごせるように大きい家を作る。


「よお、アリシア。」


「リュウ!!」


「しばらくは村にいるらしいからな。」


「本当に!!やったー!!」


こいつは元気だな。壁をある程度作り終わってからは、農作物の収穫、もしものための食料づくり、矢の大量生産、なんかよくわからない草のエキスを矢の先に塗り込んで、村長の収納袋に入れる。

収納袋は俺が2つ。アリシアパパが1つ。村長が1つ。全部同じぐらいの収納量だ。


準備が終わったら、狩人達は森の散策。

俺も参加して、森を見回った。そんなこんなであっという間に時間が過ぎ去り、

ある日、一匹の鷹が俺の方に飛んできた。

ピーちゃんに似てる。


その鳥は俺の伸ばした左腕に乗った。

足に巻き付いてる紙を取り出す。


「良かった騎士団が駐屯していた村で魔王が出たか。」


オーガの魔王が出たらしく、かなりやばそうだが、騎士団が駐屯していた村の近くに出たらしく騎士団が迅速に対応して、今はそちらに対応を追われているらしい。

オーガなんて俺でも勝てるんだし。騎士団には俺より強い奴らがたくさんいるし大丈夫か。

このことを村長に伝えて、すぐに村のみんなに広がった。

みんな、安心した顔をしていた。


「なんか、嫌な予感がする。森に行くか。」


森に入り、違和感に気づく。何かがおかしい。

この感覚はゴブリンシャーマンに隠蔽されていた感覚に似ている。


「隠蔽してるな。何かが。」


ローブに魔力を流して、毎日隠蔽をしている俺なら分かる。

集中して、何があるのか心を澄ます。


「何だこの数は!?」


大量のゴブリンの気配。夥しい数だ。

しかも、村からかなり近いゴブリンの足なら、2時間で着く。

俺は急いで、魔法弓を空に向けて2発撃ち空に小さい花火を作る。

これは、村人全員が知ってる魔王出現の合図。


「ピーちゃん頼むよ。」


事前に用意していた紙をピーちゃんの足に巻き付けて、ピーちゃんを羽ばたかせる。


「俺は、まあ最低限の時間稼ぎでもするか。」


魔法弓をゴブリンの大群に向けて放ちまくる。

魔力がなくなったら、魔力回復薬を飲んで、これを繰り返す。

ゴブリン達は俺に襲いかかってきたので、俺は逃げながら、狙撃する。


「とりあえず。村の反対側に誘導するか。」


村のみんなが要塞に避難する時間を稼がないと。子供も老人もいるんだしな。


それから4時間、挑発を繰り返してはゴブリンを惨殺する。次第に俺を追ってくるゴブリンはいなくなっていた。


「村に戻らなくちゃ。」


俺に反応したのは大量のゴブリンだが、それでも大群のゴブリンの一部なのだ。

村に早く戻って、防衛に専念しないと。


村に着くと、そこは人の気配が一人もしなかった。


「良かった。みんな避難できたんだな。」


俺は要塞に着くと、村人みんなに状況を聞かれた。

村長が場を沈めて、俺に話を聞いた。


「おそらく、ゴブリンの魔王が誕生しました。それも村からかなり近い場所にいます。数は数えきれないぐらいいました。」


「そんな、数のゴブリンがなぜ気づかれずに移動している?」


「隠蔽の魔法です。それもかなり高水準の魔法を使っています。あちらには確実にゴブリンシャーマン以上の魔物がいます。」


村人達がざわめく。

普通の村人にとってゴブリンシャーマンなんて出会ったら絶対死ぬぐらい強いからだ。


「そうか、魔王が2体も出るなんてな。ゴブリンの魔王は不幸中の幸いか。」


「ピーちゃんを公爵の元へ向かわせましたか?」


「ああ。賢い鳥だ。それに早い。あれなら1日,2日で公爵様の元へ辿り着くだろう。」


「そうですね。ただ騎士たちが来るまでどれくらいかかるか。」


「そうだな。今回、オーガの魔王が出たのは公爵様の屋敷から見て、私たちの村の反対側だ。」


「4日,5日持ち堪えれば良いでしょう。騎士達は優秀ですから。」


「そうだな。それで行くか。みんな!!気を引き締めていくぞ!!」


村長の掛け声に村人たちは奮起する。

この日から、ゴブリン達との戦争が始まった。1

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