11

「お前が、リュウか。ただの子供じゃないか。」


シワの多いババアに話しかけられた。

仕事の説明を聞くために屋敷の敷地内にある一軒家に入ると、

ババアがポツンと奥のカウンターにいた。


「ここで、仕事の話を聞けると聞いたんですが、貴方は?」


「私はジュー。公爵様専属の狩人さ。あんたが噂の子供だろ?」


「噂?」


「お嬢様のお気に入りの。」


「どうせすぐ飽きますよ。それより、この森と魔物。そして、ノルマと給料。

魔物の討伐証明。仕事のこと全部教えてください。」


「気の早いはやつだな。まあいい。」


大体のことを説明してもらった。子供に優しいタイプか?

魔物の討伐報酬の値段は村の1,5倍ぐらいの値段だな。

それ以外は大体同じ。


「討伐証明は誰に渡せばいいんですか?」


「私に渡せばいいさ。」


「ちょろまかさないんですか?」


「そんなことしても私に何の得もないよ。危険を背負うだけさ。」


「そうでしょうね。」


「ところで、本当にあんたに狩りができるのかい?」


「オークまでなら倒せますよ。」


「本当か?装備を見る限り、無理ではないが。」


「それは証明していきますよ。」


「そうか。まあ、死んだら、お嬢様が悲しむから気をつけな。」


「分かりましたよ。それで、ノルマは?」


「とりあえず。ここら辺で一月でゴブリン、ホブを100匹ずつでいいさ。最初だしね。これができなかったらクビだよ。」


「分かりましたよ。」


渡された森の地図のババアが適当に赤丸をつけた範囲で、狩りをすることになった。

森に入ると、村と似たような場所で。安心した。


「100匹ずつね。簡単そうだ。」


普通に簡単だった。3日で終わらせた。


「それじゃあ、ババア。これで、ノルマは終わりだな。」


「そうさね。まさか3日でとは。」


「それじゃあな。」


「来月にはきついノルマを上げるから、覚悟しな。」


「金を払ってくれるなら、それでいい。」


俺は、ジョセが用意した高級宿に今日も図々しく泊まる。

宿代も、飯代も払ってないが。関係ない。


「一旦、村に帰りたいけど。遠いんだよな。素早さの訓練にはなりそうだが。」


流石に、距離が遠いので馬か何か使いたいが。俺は馬が乗れない。

そう言う時は、人に聞くに限る。


「子供でも乗れる、長距離移動用の馬とかいるか?」


「どこ行くの?」


「村だよ。今月の仕事終わったし。」


「もう終わったの?でも、子供用の馬なんていなわよ。諦めなさい。」


「それじゃあ、いくつかの街を経由しながら帰ります。走って。」


「そんな危険なことやめた方がいいわ。」


「そうか?簡単そうだけどな?」


「別に今じゃなくていいじゃない。体が大きくなった時に馬に乗れば。」


「一月に一回ぐらいは帰りたいしな。」


「そんなに会いたいの?」


「命懸けで守ったんだぞ。会いたくもなる。」


「ふーん。好きなんだ。」


「将来の嫁だな。俺はあの村であいつと子供を作って、あの村で死んでいくんだ。」


「へー。気に入ってるのねあの村が。」


「お前はどうするんだ?将来。」


「好きじゃないやつと結婚して、子供産んで。その家のために一生を費やして終わりよ。」


「そうか。悪くない人生だな。」


「どこがよ。最悪だわ。」


「子供のことを好きになればいいんだよ。」


「簡単に言うわ。難しいことがあるのよ貴族には。」


「そうか。大変そうだな。」


「いいね。あなたは自由で。」


「いいだろ?俺が命懸けで得た自由だ。お前も自由が欲しかったら。命でもかけるんだな。」


「私の命は私だけのものじゃないのよ。」


「なんだそれ。お前の命はお前のもんだろ。そんなこと言ってる奴は、お前を利用したいだけの奴だろ。」


「リュウには分からないわ。貴族としての誇りが。」


「お前も分からないんだろ?だから、将来が不満なんだ。」


「分かるはずよ。みんなが喜ぶことをしたらいいもの。」


「なんだそれ。アホらしいな。ところで、なんで毎日来るんだ?」


「リュウと喋りたいからよ。わざわざ時間を作っているの。感謝しなさい。」


「お前も暇なんだな。」


「暇じゃないわよ。完璧を求められるもの。」


「俺は、ゴブリンとホブゴブリンの耳が求められる。似たようなもんだな。」


「違うわよ。」


ジョセと1時間ぐらい話して、ジョセは帰って行った。


「明日からは、村に帰る準備でもしとくか。」


とりあえず、長距離走だな。


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