「俺はリュウ。君は?」


急に起き上がり、この栗色髪の少女に返事する。


「うあ!!びっくりした〜。私はミーだよ。」


「そうか。それで、ミーはこの学校の学生か?」


「うん、そうだよ。リュウも今日から?」


「そうらしいな。それで俺はどこに行けばいいと思う?」


「さあ?学園長のところにかな?」


「そいつはどこだ?」


「この建物の一番上だよ。」


「そうか、ありがとな。」


4回建ての大きい建物の最上階に、高級そうな扉があった。

とりあえず開けてみた。

そこには、ババアがいた。小綺麗なババアだ。


「俺はリュウ。あんたは?」


「まず、ノックをしなさい。退学にさせますよ。」


「俺はそれでもいいんだが、出来るのか?」


「普通の生徒なら出来ますが、貴方は出来ませんよ。お嬢様の唯一のお気に入りですし。」


「そうか。それで、あんたは説明がうまい方か?」


「もちろん。学園長ですから。」


このババアに、色々なことを説明させた。本当に説明のうまいババアだった。

要は、この学校は騎士見習い育成所で、ここで一定の成績を収めると、騎士見習いに、騎士見習いを勤め上げ、実力十分と認められると騎士になれるらしい。

アンダーハート公爵の騎士だが。


「それで、待遇は?」


「待遇とは?」


「給金と休みと一日の労働時間だよ。」


「ここは学校ですよ。給金は出ませんよ。週休二日ではありますけどね。」


「給金でないのか?」


「出ませんよ。本来なら、学費発生するのですが、アンダーハート公爵家では無料になります。」


「何が無料だ。才能あふれる子供を安い金で青田買いしてるだけだろ。」


「それは公爵家への侮辱ですか?」


「侮辱できるほど、アンダーハート公爵家を知らねえよ。興味もない。」


「なんて子供なんでしょう。本当に退学させたいわ。」


「それでジョセお嬢様の騎士になるにはどうしたらいいんだ?」


「強さを証明することよ。」


「強さ?」


「大会があって、優勝できたらお嬢様の騎士になれるわ。」


「そっちの方が手っ取り早そうだな。」


「無理よ。ただの専属騎士じゃないもの。」


「伝統がどうとか言ってたな。」


「そう、伝統よ。四大公爵の長女は代々、同年代の護衛を専属騎士にするの。そして、その護衛達を戦わせるの。」


「意味わからん。何故戦わせる?」


「伝統よ。といううか祭りね。優勝したら大変ね名誉と褒美が与えられるわ。」


「褒美?」


「望みをなんでも一つだけ叶えるんですって。」


「へ〜。要は金持ちの道楽ってことだな。」


「言い方が悪いわ、伝統よ。それでなぜ、リュウ君がジョセお嬢様の専属騎士になれないかというと、才能かしら。」


「才能?強さの才能か?」


「そうよ。護衛としての才能は強さの才能よ。」


「なぜ、あんたに俺の才能が分かるんだ?」


「そう言うことじゃないわ。この場合の才能は、どれほど準備できるかと言うこと。つまり、強くなるための環境が他の学生達と違いすぎたのよ。」


「だから、勝てないと?アホみたいな話だな。」


「そうでもないわ。だって、大会は1月後だもの。」


これは、このババアが正しいわ。


「ちなみに、その大会が終わったら、俺は村に帰っていいのか?」


「どっちでも構わないわ。騎士になりたかったら目指せばいいんじゃない?」


「騎士の待遇によるな。給料は高いのか?休みは多いのか?」


「貴族になるんだし、給料は高いわよ。休みはほとんどないけど。」


「じゃあ、騎士、目指すのやめよう。もしかして、専属騎士とやらも休みが少ないのか?」


「0ね。常にお嬢様のそばにいなきゃ行けないから。」


「じゃあ、専属騎士になるのもやめる。と言ううことで、村に帰るとお嬢様に伝えといてくれ。邪魔したな。」


学園長室を出て、学校から離れ、公爵の屋敷のあるでかい街を、数日観光してたら、またクソガキが来た。宿の前にわざわざ高級そうな馬車できた。


「帰ってないじゃない。嘘だったのかしら?」


「嘘じゃありませんよ。観光してから帰るんですよ。田舎者ですからね。」


「それで、なぜ帰るの?」


「待遇が悪すぎるからですよ。頑張って手に入れた職業の休みが0って終わってるでしょ。村の方が数倍待遇はいいですよ。」


「そうなの?でもずっと私のそばにいれるのよ。幸せじゃない?」


「ただの罰ゲームですよ。今回はご縁がなかったと言うことで、それでは。」


「ちょっと待って、なら執事でいいでしょ?」


「執事?」


「そう。執事。それなら騎士と違ってずっと一緒にいる必要はないわ。」


「待遇は誰に聞けばいいんですか?」


「さあ?執事長とか?」


「そうですか、では聞きましょうか?」


執事長の強者風ジジイに聞いてみると、執事にも休みはほとんど無かった。

給料は高いらしいが。休みがねえと、高い給料の意味ないだろ。馬鹿か?


「ジョセお嬢様、それでは村に帰ります。それでは。」


「待って。」


ジョセが俺のローブを掴む。


「なんですか?帰りたいんですけど。」


「何かあるわよ。貴方に合う仕事が。」


「なんで、僕にこだわるんですか?他がいるでしょ。」


「リュウは私のこと特別扱いしないから。ちゃんとジョセフィーネとしてみてくれるから。」


「それだけ?」


「後は、なんとなく。」


「なんとなくで、僕は故郷に帰れないんですか?」


「そうよ。ちょっと待っときなさい。リュウに会う仕事を探すから。」


「美味いもん食えるなら、待ちます。」


「いいわよ。好きなだけ食べなさい。」


ラッキー。それから来る日も来る日も、高級宿でVIP待遇を満喫していた。

文字の勉強をしたり、弓の練習をしたり、魔力操作も。観光も楽しんだし。

なぜか、毎日、お嬢様が喋りにくるけど。


「見つけたわ。リュウにピッタリのお仕事。」


「なんですか?」


「公爵専属の狩人番よ。」


「狩人番?村での仕事みたいものですか?」


「そうね、ほぼ同じよ。違うことは、ある程度のノルマがあることよ。」


「ノルマ?」


「一月中に魔物を特定の何体倒すとか、数日中に特定の魔物を殺すとか。」


「へー。つまり、ノルマをこなせば、給料はもらえるし。それ以降は休みなのか。」


「そうよ。給料は倒した魔物の数と種類によるらしいわ。」


「いいですねそれ。それになります。」


「分かったわ。私が推薦しとくから、頑張りなさいよ。」


「分かりましたよ。」


職が決まった。これを村のアリシア家に手紙を書きたいが、文字はまだわからないので、ジョセに代筆してもらった。


「よし、明日から仕事だ。」






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