一と書いて二の前と読む。
「アリシア。年貢の納め時だな。」
「意味わかんないよ。それよりも、本当にやるの?この前負けたばかりなのに。」
「この一月俺は修行を重ねた。お前が遊んでいる間に、俺は強くなったんだ。」
「なんかやってるとは思ってたけど、頑張ってたんだ。ふ〜ん。」
「さっさとやるぞ。」
「分かったよ。」
条件を合わせるために、短槍は使わない。ステゴロだ。
無茶苦茶泥試合になった。僅差で俺が負けた。なんでだ。
「本当に強くなったんだね。」
「まあな。次は俺が勝つさ。」
「いや、もうやらない。」
「勝ち逃げする気か。」
「違うよ。次やったら負けちゃうもん。」
「それを勝ち逃げというんだ。」
「やらない。やらないと言ったらやらない。」
「じゃあ、お前の負けってことでいいな。」
「負けてない。やらないから負けないもん。」
「そうか。まぁ、アリシアがそうしたいならそれでいいよ。大人気ないしな。」
大人の俺が引く事にした。
なんて器がでかいんだろ。アリシアは同年代では強い方なのか?それとも弱い方なのか?
基準が分からん。
アリシアが強いんじゃなくて、今までの俺が弱すぎたかもしれないしな。
「アリシアって同年代の喧嘩では強い方なの?」
「当たり前よ。パパにたまに鍛えられてるんだから、喧嘩でリュウガ以外に負けたことないもん。」
この村の同年代、プラマイ3歳差の奴らなんて10人もいないので、強いか弱いか分からん。
後で、アリシアのパパに聞こ。
「リュウガってどれくらい強かったんだ?」
「すごく強かったよ。手も足も出なかったよ。」
「具体的には?。」
「パパよりは弱いよ。」
当たり前だ。言おうとしたが、この村では比較対象が少ないので、しょうがないと気づいた。
「ステータスとかわかるか?」
「わかんないに決まってるじゃん。ステータスを見せるのは家族だけだよ。」
ステータスとは、以前の世界での年収いくら?みたいな扱いなので、基本他人には秘密だ。
「レベルが高いのか?」
「そんなわけないよ。多分レベル1だよ。絶対。」
「そうか。ところでレベルの上げ方知らないか?一月ゴブリンを10匹ぐらい殺したのにレベルが上がらないんだ。」
「それは、そうだよ。レベルを上げるには試練を超えなきゃいけないってパパが言ってた。」
「試練ってなんだ?」
「分からんない。試練は試練だと思う。」
こいつ、試練の言葉の意味わかってないだろ。
これも後で、アリシアパパに聞こ。
「帰るか。日も暮れてきたし。」
「うん。晩御飯何かな〜?」
「いつも通りだろ。硬いパンに野菜のスープと少量の肉。毎日これだろ。」
「違うよ〜。毎日地味に味が違うんだ〜。」
「そうか。」
興味のない話だったので、アリシアの話に適当に相槌を打ちながら帰宅した。
俺とアリアシア、アリシアの両親で晩御飯を食ってる時に、レベルアップの話をしたら、アリシアと似たような答えが返ってきた。
「試練は試練だよ。神様が与えた試練に打ち勝った人間だけがレベルが上がるんだ。」
「おじさんはレベルが上がったことがあるんですか?」
「あるよ。一度だけレベルが上がったことがあるんだ。アリシアが生まれる前だけだけどね。」
「どうやって上がったんですか?」
「この村に初めてきた時に、道中盗賊に襲われたんだ。その盗賊から逃げきれたら、レベルが上がってたかな。」
「それだけでですか?」
「アリアがアリシアを身籠っててね、死に物狂いでアリアを守りながら盗賊から逃げたよ。」
アリアとはアリシアの母親ですごく綺麗な金髪美人な人妻だ。
「でも、それでレベルが上がるということは、この村にもレベルが上がった人が多いのでは?」
「嫌。僕だけだったと思うよ。レベルって基本上がりにくいものだしね。」
「でも、盗賊から逃げて生き残った人なんて結構いるでしょ?」
「それだけでレベルが上がったわけじゃないよ。それまでの試練の蓄積があったんだと思うよ。盗賊から逃げきれて、丁度レベルが上がったんだね。」
「へ〜。レベルが上がったら、やっぱり強くなるんですか?」
「なるよ。レベル差は実力差だと思っていいよ。レベル差だけで負けるわけじゃないけどね。」
「今までのステータスはどうなるんですか?」
「ある程度は引き継がれると言われているよ。それに、レベルが上がるとスキルを覚えるんだ。」
「スキル?」
「僕は耐性スキルだったかな。状態異常に強くなるらしい。」
「そのスキルって、ひとつしか覚えないんですか?」
「基本はそうだよ。ただ、中にはレベルが上がらなくてもスキルを覚える人や一度に2つ以上スキルを覚える人もいるらしいね。多分その人達は、多くの試練を越えたんだろうね。」
「なるほど。」
それからもいくつか質問して、知識を埋めていった。
夜、アリシアと同じ布団で寝ながら、独りごちる。
「試練ね。よく分からんが。要は鍛えまくればいいんだろ。強い方が試練を越えられるしな。」
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