第163話 王権
~スキル詳細~~~~~~~~~~~~~~
色なき王権:無季燦々
・虚ろなる君主の大権。遍く全てを無に帰す純然たる破壊の魔光。
・極限まで凝縮した〖マナ〗を全方位に放出する。欠落の〖マナ〗は
・この力を揮うには、王威を示さなくてはならない。
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『──とまあ、こんな説明なんだが……』
〖ステータス〗に乗っている説明文をそのまま伝えると、学者達は各々に推測を話し出した。
〖マナ〗の専門家もそこそこ居るらしく、オレには分からねぇ理論も飛び交っていたが、最終的には実践してみようっつーことになった。
とはいえ大空洞で試したら大惨事になることは確実。
てな訳でオレは大魔境へととんぼ返りすることとなった。ポーラに孔を開けてもらい、再び氷の大地を踏む。
「ここが大魔境ですか」
「何ンッという〖マナ〗濃度! ここであれば昨年頓挫した例の計画も──」
「この氷もまた特一級の魔性素材ですのう」
続いて学者達がいくつかの機器を持ってやって来た。
彼らもまたポーラの魔法によって守られているため、研究服姿での大魔境来訪となる。なんだか見てるこっちが寒くなっちまう。
「(まあもう寒さなんて感じねぇんだが)」
実験するのに充分な距離を取るべく、氷山の谷間を駆けながら思う。
〖進化〗したオレの肉体は、常に高熱を発し続けている。体温はこれまで出会って来たどんな魔獣よりも高ぇはずだ。
「(それと〖
眩しかったり熱かったりといった弊害を防いでいた〖スキル〗をオフにする。
それまで真っ黒に染まっていたオレの体が、煌々と輝き始めた。
あまりの光量で判然としねぇが、色は白とかオレンジだろう。
なお、〖進化〗の影響で色以外にも多少の変化があった。
オレの本体が球形なのは同じだが、新しく子機が加わったのだ。
子機の数は八つ。
正三角形を組み合わせた三角錐の形をしており、オレの周囲を絶えず回遊している。
この姿を傍から見れば、天気予報とかで表示される太陽マークっぽく見えるんだろうな。
「(よっ、とっ……うん。こいつは便利そうだ)」
大空洞内じゃ危なっかしくて動かせなかったので、移動の片手間に操作感を確かめてみた。
するとまるで体の一部みてぇに動かせた。事実、体の一部なんだが。
「(八つ同時操作も問題ねぇ。〖
体の一部とは言え、新しく付いたばっかの器官。
八機同時操作の難易度は指を八本別々に動かすのより高かったが、そこそこの精度で実現できていた。〖スキル〗様様である。
「(〖コンパクトスラスト〗、雷撃……よし、能力も問題なく発動できるな)」
ピュンッ、と子機が遠くの氷山を貫き、内側から一条の雷が飛び出した。
このように、〖スキル〗を媒介することも可能だ。
子機は変形させられねぇし、あまり離れ過ぎると壊死しちまうが、それでも一キロくらいまでなら全然余裕。
とても有用な身体特性だし、残された時間の中でなるたけ使いこなせるようにならねぇとな。
「(よし、ここらでいいか)」
学者達が砂粒くらいに見える距離で止まる。
そろそろ〖色なき王権:無季燦々〗を試してみよう。
「(まずは〖
オレの頭上に水晶で出来た光輪が現れた。
この王冠にも似た光輪こそが〖
〖マナ〗を大量に消費し続けることで、マナクリスタルやアーティファクトに関する〖スキル〗の効果を高められる。
〖色なき王権:無季燦々〗の説明文の最後には『この力を揮うには、王威を示さなくてはならない』とあったが、これはつまるところ〖
「(しかも、ここからチャージにも時間が掛かるんだよなぁ)」
水晶の王冠を浮かべたオレはすぐに次の工程に取り掛かった。
即ち、絶大な〖マナ〗の収束である。
“極王”の切り札と同じように、この〖スキル〗の発動にも異常なまでの〖マナ〗を費やす必要があった。
〖制圏〗を広げる時のように、溢れんばかりの〖マナ〗を一点に凝縮させて行く。
「(ふぅ、これなら何とか持つか)」
“極王”との対決で〖マナ〗は随分と目減りしていたが、大魔境に来たことで猛スピードで回復しだしていた。
どうやら〖色なき王権:無季燦々〗は最低一万〖マナ〗から撃てるようなので、必要な量は余裕で集まった。
さて、お披露目と行こう。
「(〖〖色なき王権:無季燦々〗〗!)」
──心臓が脈打った。
もちろんイメージの話だ。スライムに心臓はねぇ。
それでも、生命の源が震えるような錯覚を覚えたのだ。
そして嵐を前にしたような一瞬の静寂の後、数多の物が破砕される轟音が鳴り響いた。
四方八方、隈なく広がった光の波が大魔境の氷を砕いた音だ。
その破壊痕はまるでクレーター。
オレを中心として氷原にぽっかりと大穴が穿たれている。大魔境の硬氷の山脈が跡形もねぇ。
「(こ、これで最低限なのか……?)」
あまりの惨状に目を疑っちまう。
けど、これは紛れもなく正常な威力なんだろう。
オレの〖ライフ〗を一発で削り切ったクリオネの〖スキル〗と、恐らくは同列の力なのだから。
それから近くの氷を採取して戻り、学者達の見解を聞いた。
これにより分かったことは二つ。
一つはこの〖スキル〗が砲撃アーティファクト等と同じく、〖マナ〗を直接放っているということ。
なので〖
もう一つは〖マナ〗由来の〖スキル〗を無効化できるということ。
圧縮の過程で〖マナ〗に特殊な性質が付与されているらしく、この光の波に触れた〖マナ〗は本来の働きを維持できねぇそうだ。
『
『破壊力へと転換できる』に続くことから無効化した分だけ威力が増すんじゃないか、って声もあったが、その辺を検証する時間はなさそうだったので実地で試してみることとなった。
その後は大空洞に戻って【ユニークスキル】の検査や実験、アーティファクトの試用を繰り返し。
最後にクリオネの武器を作り、残った部位を食べて再び旅立つ。“極王”討伐からおよそ半日後のことである。
「ここが一番近いスポットだよ。まだまだ大魔境には遠いけどね」
『いや、ある程度近づけりゃ充分だ。あんがとな、行って来る』
「うん、気を付けて」
ポーラに見送られ、オレは未明の空へ飛び立つ。
オレの次なる目的地。それは世界最古の〖王獣〗、“古王”の待つ南の大魔境だ。
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