第162話 帰還
【お詫び】
申し訳ございません、前話の更新日に誤って今話もアップしてしまっていました。
その際にこちらも見られた方には恐縮ですが、次話はもう四日ほどお待ちください。
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孔を抜けて戻ってきたのはイーサ王国直下の大空洞。土蛟と戦った場所だ。
あの戦闘からまだ数日だが、そこは随分と様変わりしていた。
「よしっ、そのまま運び出せー!」
「待ってくれっ、階段は一杯だ!」
「採り終わった第二区画に新しい集積場が出来てるわ、一旦そっちに置きましょ」
大空洞では多くの人々が闊歩していた。
入り口付近では〖煌廠〗の生み出したマナクリスタル採掘されており、力自慢や運搬用疑似魔像機を操る者が多い。
だが、オレ達がやって来たのはそれよりも奥。
そこに居るのは賢人を始めとするイーサ王国の学者達だ。
「無事に〖王獣〗を討ち取ったのですね、コウヤ。観測機の故障や誤作動でなくて良かったです」
様々な実験やアーティファクト作製に励む学者達を代表し、賢人が話しかけて来た。
ていうか、賢人以外はこっちに目もくれねぇ。集中しているようで結構なことである。
『そうか。やっぱり〖王獣〗の死はこっちでも観測できたのか』
「ええ、はっきりと反応が出ていました」
ポーラがタイミングよく現れたのは、とあるアーティファクトで“極王”の死を知ったからだ。
そのアーティファクトとは、神様との交信に使った例の通信機。
星神は回復に専念してるから前みたく交信はできねぇが、星の〖マナ〗の流れから世界中の情報を得る、っていう本来の用途でなら使える。
特に、広大かつ強大な〖制圏〗を扱う〖王獣〗は世界に及ぼす影響も大きく、その消失は確実に観測できるとのことだった。
『それで、今は何日目だ?』
「四日目の正午過ぎになります。この上なく優れた成果であると言えるでしょう」
『そう……か』
大魔境に挑んだのが二日目未明。それから二日半くらいで攻略したんだから大魔境攻略のタイムとしては世界新くらいの記録になるんだろうが……。
『間に合わねぇな』
カオス上陸のXデーは七日目。
今後は〖亡獣〗を無視すっからよりタイムを短縮できるとは言え、移動距離も大分ある。
どう考えても残り三日であと四体〖王獣〗を倒し、〖レベル〗マックスになるのは難しい。
「無理なことを考えても仕方ありません。まずは目の前のことに集中しましょう。〖進化〗は可能になりましたか?」
『あ、あぁ。〖王獣〗の候補は一つだけだったけどな』
~進化先~~~~~~~~~~~~~~~~
※本種族は未解明です。現在は類似種族の解析結果を表示しています。
・到達種が一。幾星霜を生き、遍く文明の興亡を見守る全天の王。
・際限無き知識と〖マナ〗を内包し、其の身は常に太陽の如き光輝を湛える。
・其の〖制圏〗の内に在りて、形
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「……他に選択肢がない以上それを選ぶしかありませんが、どうにも要領を得ませんね」
『だよなぁ……』
〖進化先〗の説明文をそのまま伝えたところ、賢人からはそのように返された。
「コウヤ君がこれまで〖進化〗して来た種族もそんな説明だったの?」
『そうだな。初めの頃はもうちょい具体的だった気がするんだが、〖獣位〗が上がるにつれて段々と』
「成程……それは星神の解析精度と連動しているのかもしれませんね」
賢人が顎に手を当てて言った。
「〖スキル〗や〖進化先〗の説明文は星神の力で解析されている、と言っていました」
『そうだったな』
「そして解析というのは対象の位階が高いほど時間の困難になるものです。星神がその気になれば第六階梯であっても即時解析が終わるのでしょうが、この世界には数え切れぬ程の生命が存在しています。一体だけに全キャパシティを費やす訳にはいきません。故に、〖獣位〗の向上に応じて説明文が雑……曖昧になって行ったのかもしれません」
全て憶測ですがね、と賢人は締めくくった。
そうこうしているうちに学者達が集合して来る。
こうして駄弁っていたのは彼らの実験が中止されるのを待っていたからだ。
『よし、それじゃあ行って来るぜ』
大空洞最奥部が完全に空いたことでオレもようやく〖進化〗できる。
周囲に人が居たら危険だからな。
最奥部に移動し、早速〖進化〗を始める。
体の内側から溢れ出る〖進化〗の熱は、オレが味わった中で過去最高のもの。細胞の一片までもが焼け付くような感覚に襲われながら、ふと気づいた。
それは【ユニークスキル】の理解が進んだからか。この熱の
【栄枯雷光輪廻】……オレ本来の[
恐らくは、神様がオレにくれたっていう、ジュエルスライムとしての[
「(へぇー、こんな構造になってたのかぁ)」
それがぎゅぎゅっと圧縮されて発生した熱が、オレの肉体に伝播しているようだった。
圧縮された[
〖進化〗とはそういう仕組みらしい。
思わぬ発見に熱さを忘れている内に〖進化〗は終息していた。
いつもは〖進化〗直後は叫びだしたくなるほどエネルギーで溢れてるんだが、今回は不思議と冷静だった。〖明鏡止水〗が仕事をしているのかもしれねぇ。
「(──と、〖
オレの発光のせいで周囲の気温が急上昇し始めていたので、慌てて新〖スキル〗で光を消した。
さて、〖ステータス〗を確認しちまおう。
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
種族:
獣位:王獣
スタッツ
ライフ :5298/6657
マナ :9603/341719
パワー :4933
タフネス:28197
レジスト:5206
スピード:5448
スキル
カバー 登攀 ブロック 逃走本能
ウィップ コンパクトウィップ スラッシュ コンパクトスラッシュ ジェスチャー
ウェポンボディ 遁走 クロスカウンター
挑戦 貯蓄 輸送
武具格納 レプリカントフォーム スラスト
抗体 コンパクトスラスト シュート
分解液 チャージスラスト チャージスラッシュ コンパクトシュート 隠形
軟体動物 一擲 受け流し 噛み千切り
ウェーブスラッシュ ウェーブスラスト
ヘビースラッシュ ヘビースラスト ヘビーシュート
精密射撃 毒手 高速再生
武装の造り手 激化する戦乱 多刀流
千刃爆誕 縄張り パリィ
スイング コンパクトスイング ヘビースイング
チャージスイング クエイクスイング 舞闘
暗殺 嵐撃 怒涛の妙技 潜水 透視
逆行 穿孔 絞殺 超躍 神の杖
爆進 地形把握 擬態
念話 弾道予見
呪縛 空蝉 背水陣
明鏡止水 一点集中 コールドブロック
勇気
色なき王権:無季燦々(NEW)
ユニークスキル:栄枯雷光輪廻
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「(ほえー、結構増えたなぁ)」
まあ字面だけ見てても仕方ないのでささっと〖スキル〗詳細を見る。
~スキル詳細~~~~~~~~~~~~~~
焦がしの至宝 〖スキル〗所持者を視認中の生物を対象とし、〖スキル〗所持者への攻撃意思を激しく引き出せる。〖スキル〗所持者が殺害された時、殺害者が収奪できる〖
加護 三十日に一度、眷属あるいは合意を得た対象に、自身の設定した加護を与える。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「どうでしたか? 〖進化〗の結果は」
『おう、それがな……』
ちょうどいいので賢人や学者達に新〖スキル〗の詳細を話していく。
学者達がここで実験してたのは、どれもオレに必要なアーティファクトだった。
彼らもまた、自身の出来る範囲でカオス討伐に協力してくれているのだ。
そんな彼らにオレの能力を教えることは、今後のアーティファクト開発の最適化にも繋がる。
粗方話し終えると、賢人が疲れ切ったように息を吐いた。
「分かってはいたつもりでしたが、凄まじいものばかりですね、〖王獣〗の〖スキル〗というのは。今の状況では活かしづらいですが、〖加護〗も自陣の力を大きく増すことが出来ますし」
『まーな。けど〖
「いえ、過去に存在した全てのアーティファクトの情報を得られるのは現在においても有用ですよ。それに思考力補正も、この条件であればアーティファクトを用いた戦闘でなら発動可能なのではありませんか?」
『あ、確かに』
そんなことを話しつつ、オレは本題を切り出す。
『実は、新しい〖スキル〗はもう一つあるんだよな』
「そうなのですか、それはどういう?」
『ああ、それはな──』
そうして今回得た中で飛び抜けて強力で、最も異質なその〖スキル〗について話すのだった。
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