第152話 挑戦
「クルォォォォッ!」
手足の生えたイッカクの〖亡獣〗、イッカク魚人が裂帛の気合を発し殴りかかって来た。
イッカクは哺乳類なんだから魚人じゃねぇかもしれねぇが、この際そこら辺は置いておく。
「(〖転瞬〗、〖遁走〗)」
筋骨隆々たる肉体が繰り出した正拳突き。
これまでの攻防でその拳を素で受けるのは不味いと知っているオレは、〖スキル〗によって回避を図る。
素早く飛び退き、開いた間合いを利用して遠距離攻撃。
「(〖
〖
これがこの〖亡獣〗の恐ろしさだ。
巨躯を覆う分厚い皮膚は並大抵の攻撃を遮断する。
皮膚を押し上げる筋肉も巌と見紛う程に引き締まっていて、その身体能力は〖亡獣〗の中でも抜きんでていた。
〖嵐撃〗のおかげでダメージ自体は通るようになってきたが、与えた傷もすぐに再生されちまう。
イッカク魚人は〖突進系スキル〗によって間合いを詰め、今度は頭の細長い角を突き刺して来る。
それを横っ飛びで回避し、しかし相手は即座に方向転換。
逞しい足指で氷を踏み締め、その右腕を振り抜いた。
「キュルァァ!」
「(うおっ)」
極めて殴りにくいはずのオレの表面を精確に捉え、拳圧を十全に伝えて来る。
その威力は凄まじく、直撃と同時に後ろへ跳んでなお〖ライフ〗を削られた。
しばらく吹き飛ばされ、氷の上でバウンド。
その時にはもうイッカク魚人はすぐそこまで迫っており、彼は追撃すべくさらに踏み込み、
──ボフン!
「クゥリッ?」
突如、足元の氷が爆ぜたことでバランスを崩す。
~スキル詳細~~~~~~~~~ ~~~~~
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
氷の上でバウンドした時、〖煌廠〗によって生まれたマナクリスタルを〖
踏まれるかどうかは賭けだったが、上手く行って良かった。
「(〖転瞬〗、〖超躍〗──)」
さて、イッカク魚人の殴打は中断された訳だが、体は転びかけた勢いのまま前進を続けている。
それを突進攻撃と捉えることで〖転瞬〗の発動条件をクリアし、オレはイッカク魚人の脇を通って突進を躱す。
「(──〖スラッシュ〗!)」
同時、氷鎖鎌を一閃。
〖クロスカウンター〗を乗せた一撃が脇腹を掻き切った。
それなりに刃渡りがあるので確実に内臓まで届いたはずだが、これで終わりじゃねぇ。
イッカク魚人には回復手段がある。ここで畳みかける。
「(〖呪縛〗、〖レプリカントフォーム〗!)」
素早く飛びつき縛り上げた。
当然暴れられるが、大人しくさせるため土蛟の毒矢を模倣する。
実はあの魔獣、鉱毒系の〖毒〗も持っていたのだ。
なので何かに使えないかと、あいつの牙は毒矢に加工しておいた。
そんな毒矢を何本も模り、イッカク魚人へ一斉に突き刺す。
高い〖タフネス〗に阻まれ傷は浅ぇが、〖毒〗はきちんと入ったみてぇだ。イッカク魚人の体がビクリと震えた後、暴れる力が若干弱まった。
「(【
そこから先は特筆するようなことはねぇ。いつも通りに【ユニークスキル】を連打して命を刈り取る。
……いや、この感覚は刈り取ると言うよりも、もっと暴力的で根源的な──、
~非通知情報記録域~~~~~~~~~~~
・・・
>>遠き光輝の
・・・
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
──と、〖レベル〗が上がったみてぇだ。〖ステータス〗を見てみよう。
「(六百五か、上り幅も小さくなってきたなぁ。北極に来てから
白イタチを倒してからイッカク魚人に出会うまでに三体の〖亡獣〗を相手していた。
おかげで大分〖レベル〗は上がったが、これ以上を目指すのは〖亡獣〗じゃ効率が悪いだろう。
「(……そろそろ挑むか)」
それから倒した〖亡獣〗を食べ、武器に出来そうなところは加工する。
イタチの後に倒した三体はロクに使える部位がなかったが、今回はお誂え向きの物が一つ。
「(よしっ、完成だ!)」
早速出来上がった武器を試してみる。
ギュルルルルルルゥ!
「(うおっ!? 思ったより速ぇっ)」
それは有り体に言えばドリルだった。
箸みてぇに細長い円錐状の穂を持ち、穂の側面には螺旋を描く溝がある。
そう、イッカク魚人の角を利用した武器だ。その名もイッカクドリル。
氷特攻というこの大魔境じゃ大活躍しそうな特殊能力を持つ。
残念ながら素材には回転機能はなかったので、専用のアーティファクトを取り付けた。
接続部も丈夫な構造になっているので強度の方も安心だ。
「(ごちそうさまでした)」
食事を終えたオレは、〖地形把握〗に従い北へ飛ぶ。
目的地はすぐに見つけることが出来た。〖制圏〗の気配を感じ取った……だけでなく、視覚的にもそこが『そう』であることは明らかだった。
奥に居る存在を知らなければ、息を呑むほどに幻想的な光景。
空気中の氷晶が太陽光を受けて煌めき、地上に星空を生み出している。
ドーム状に広がる星空は氷山の頂上すらも呑み込み、地の果てまでも続いていた。
「(ダイヤモンドダスト……に似てるが違ぇな)」
昔テレビで見たが、確かあれは寒すぎても発生しなかったはずだ。
〖亡獣〗のオレが肌寒さを覚える程の極寒の地で、自然に発生する訳がねぇ。
〖制圏〗の効果と考えるのが妥当で、そしてこれ程に広大な〖制圏〗を扱える存在が何者であるかは明白だ。
軽く半径十キロメートルはある氷晶のプラネタリウムを見据え、オレは意を決してその近くに降下する。
「(ふぅ、王様を訪ねるんだからまずはノックからだよな。『収束』、解除)」
移動中は『収束』させていたオレの〖制圏〗を、目の前の〖制圏〗にぶつけるように押し拡げたのだった。
~制圏詳細~~~~~~~~~~~~~~~
あなたの〖制圏〗は〖
〖
追加効果:『制圧』『徴収』『技巧』『識別』『合理』『文明』(NEW)
候補一覧
拡大(NEW) 〖制圏〗の効果範囲を広げる。
精工(NEW) アーティファクト作製時、マナクリスタルの加工能力に補正。
文明(NEW) アーティファクトの性能に補正。
野生(NEW) アーティファクトの性能に逆補正。
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