第146話 神と機人とスライムと
混沌種。オレの故郷のスライム村を滅ぼした因縁の種族。
星神は確かに〔
『混沌種のこと……知ってるんすか?』
『是。其れは一個の〔
『魂を、回収してる? じゃあこれまでオレが倒して来た奴らは……』
『否。
小難しくて分かり辛ぇけどオレの【ユニークスキル】ならカオスに横取りされずに〖レベル〗を上げられるらしい。
まあこれまでも混沌種倒した後に普通に〖レベル〗上がってたしな。
その後、「混沌種とは何ぞや」という顔をしている賢人にざっくりと説明をした。
「成程、諸所に眷属を送り〖
『カオスが
『大魔境……っ』
商人の息子、エルゴに訊いたところによるとこの世界には五つの大陸がある。
オレ達が居るのは中央大陸。人類の栄える平和な大陸だ。
だが東西南北それぞれに存在する外大陸には人類はほとんど存在しねぇらしい。
理由は単純。魔獣が強すぎるから。
凶獣域すら軽く凌ぐ濃密な〖マナ〗が満ち満ちており、そんな〖マナ〗を吸収した動植物達は尋常でない〖スタッツ〗を持つ。
それが〖レベル〗のインフレーションに繋がり、〖凶獣〗ですら食物連鎖の頂点に立てない魔窟が構築されている。
故にそこは『大魔境』。
時折海を渡って来る魔獣の対策にわざわざ辺境伯が置かれる程の修羅の世界。
そしてオレの次の目的地でもある。
「質問です。予言では近いうちに地上が滅ぶとありました。しかし眷属を送り込むだけであるならば、地上人でも対抗できるのではないですか?」
『否。現在の平穏は“緑王”との対決にカオスが注力しているが故のもの。早晩“緑王”の命は潰えよう。さすればカオスの目は此の大陸へ向かわん』
植物の魔獣なのに移動できるのか、とか。海を渡れるのか、とか。そういう疑問は野暮だ。
〖亡獣〗やその上の〖獣位〗に至った魔獣であるならば、生物的な弱点などとっくに克服しているだろう。
『ん? でもそれなら尚更早く行った方がいいんじゃないすか? その“緑王”さんとやらに加勢すれば二対一っすよ。オレの友達が移動に便利な魔法持ってますし、そこそこ早めに着くと思いますけど』
『〖
始まりの機人、とは賢人のことのようだ。
彼女は一瞬誰を差した言葉か分からず混乱していたが。
それから話を聞くところによれば、この世界には〖亡獣〗の先、〖王獣〗にまで〖進化〗した魔獣がカオスを除いて九体居るらしい。
それらと〖第六典〗の“魔王”を合わせて十王。
正真正銘世界最強の怪物達だ。
だが彼らが協調できたとしてもカオスには敵わないという。決定打が掛けているのだと。
『奴の〖属性〗は〖混沌〗。形は無く境界も無く
『それならオレが行っても同じなんじゃないすか?』
『否。先述したが汝のチカラは混沌種に対し
『でもそれって〖経験値〗を横取りされないってだけっすよね?』
『現況では然り。されど汝の【ユニークスキル】は発展の途上、第六階梯が残る。我が〔
す、推定なのか……。
いや、だがそれに縋るしかねぇってことなのかもな。
星神は全生物の〖ステータス〗を閲覧できるという能力があるそうだ。
それにより全ての可能性を探索し、カオスの討伐は不可能だと悟った。
それでも己の死を回避しようと足掻いた結果がオレである。
たとえ確率が低くとも、そこに賭けるしか道はないのだ。
『事情は分かりました。じゃあオレは東に向かいながら【ユニークスキル】を鍛えればいいんすね』
『否。其のチカラは闘争に
『四週間か……』
長いと取るか短いと取るかは様々だろうが、ここはポジティブ長いと考えよう。
オレの【ユニークスキル】なら比較的短期間で成長できるしな。
『あ、でもオレ十王がどこに居るか分かんないっすよ。知ってるのは“魔王”くらいっす』
『四つの大魔境に一体ずつ。
言って、星神は片手の上に地球儀みたいな物を生み出した。
大陸の形からしてオレ達の居る星の模型だろう。
星の上には九つのマーカーが表示されている。
そこに〖王獣〗が居るらしい。
『しかし、全部巡るのは大変そうですね』
どんな角度から見ても九つのマーカーを同時に捉えることは出来ねぇ。
地球儀モドキは自転してるから位置の把握には困らねぇが、この距離を移動するのは大変だろう。
『全てを屠る必要は無し。十王の半数を討ち取る頃には汝の【ユニークスキル】も第六階梯と成っていようし、〖
何だ五体で良いのか。
ポーラの結界魔法があれば移動もショートカットし放題だし、四週間もありゃ──、
『“緑王”が死に絶えるまでで五日、カオスが汝らの大陸に到達するまでで二日、人類の抵抗を考慮すれば“魔王”の元にカオスが着くのに
『──はい?』
ここに来てようやく、オレは神と人の認識にズレに気付けたのだった。
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