第73話 第二章エピローグ
「(むにゃむにゃ、朝か……)」
鳥の囀りで目を覚ます。
朝日に照らされて花々が風にそよいでいた。清々しい光景だ。
昨夜、森亀を倒し諸々の処理を終えた後、オレは拠点に戻って眠りに就いた。
森亀との戦闘やその後の武器作製で疲れていたからだ。
戦ったのが夜遅くだったので睡眠時間は短めだったが、寝起きでも意識はスッキリしている。
こういう部分の頑丈さも〖レベル〗が上がった恩恵だな。
森亀を倒して〖レベル〗は六十以上も上がり、オレはますます生物としての強度を増した。
「(そういや〖スキル〗も増えてたっけか)」
森亀を倒した後は武器作製とかで忙しくて、確認は後回しにしてたんだよなぁ。
はてさて、どんな能力になったのやら。
~スキル詳細~~~~~~~~~~~~~~
嵐撃 一定時間内に攻撃した対象に再度攻撃した時、威力に補正。前記の効果は重複する。前記の効果の重複数に応じ、効果量に補正。
土俵際 常時、その場に留まる力に補正。二十四時間に一度、〖ライフ〗が全損する時、代わりに〖ライフ〗が1残る。
怒涛の妙技 〖ウェポンスキル〗を中断しやすくなる。〖ウェポンスキル〗発動時、バランス感覚を補正。〖ウェポンスキル〗の連続発動時、身体制御に補正、及び〖ウェポンスキル〗の敏捷性に補正。
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今回のはどれも既存〖スキル〗の上位版だな。
上位化するだけあって多用するものが多い。
まず〖連撃〗の上位化した〖嵐撃〗は威力補正が一段と強力になった。
カウント数が高まるほど加速度的に威力が上昇するため、対・強敵ではこれまで以上に輝くだろう。
次に〖不退転〗の上位版、〖土俵際〗。
新たに増えたのは俗に言う“食い縛り”系の効果で、もしもの時の保険として持っていられりゃ安心できる。
まあ、オレの〖ライフ〗をゼロに出来るような奴はそうそう居ねぇとは思うが。
「(そんで、最後が〖怒涛の妙技〗だな)」
これはジュエルウェポンスライムになった時に得た〖流転の武芸〗が上位化したものだ。
〖進化〗で獲得した〖スキル〗は成長が遅い傾向にあるんだが、ようやく上位化に漕ぎつけられた。
〖多刀流〗の補正と合わせ、毎日毎日何本も武器を振るっていた賜物だな。
新効果も単純かつ便利だし、縁の下の力持ちとしてこれからもオレを支えてくれそうだ。
と、そんな風に成果を確認していると〖マナ〗の揺らぎを感じ取った。
これは魔法の前兆である。
「おはよう、コウヤ君」
空中に現れた孔からポーラが姿を見せる。今日は修行の日じゃねぇが、出立予定日だと伝えていたのだ。
オレが挨拶を返すと曖昧に頷き、それから彼女はポツリと呟いた。
「ホントにドワゾフを倒せたんだね……凄いや。……でも、それじゃあもう行っちゃうんだね」
『まあな。貴族も来るし、混沌種って奴の原因も突き止めねぇとだし』
「だよねぇ……うんっ。コウヤ君が納得してるんだしアタシがいつまでも後ろ向いてちゃ駄目だね!」
パチン、と自分の頬を叩く。
「元気でね、コウヤ君。アタシも立派な魔法使いになれるよう頑張るから! それでまたいつか、魔法の相談に乗ってよ。何年後になるか分からないけど、魔法学園を卒業したら会いに行くからさ」
『オイオイいいのか? 試験受ける前から卒業した後のことなんて考えてて』
「大丈夫だよ。誰と一緒に魔法を鍛えたと思ってるの?」
ポーラが不敵な笑みを作って言った。
『ハハッ、言うじゃねぇか。けど分かったぜ、ならオレも東でやる事を片付けたらまたこの森に戻って来るよ。その頃にはさすがに貴族も帰ってるだろうしな』
「じゃあどっちが早いか競争だね」
『だな。……いや、ポーラがどんなに頑張っても卒業する時期は変わらねぇ気がするが……と、そうだ。最後にこいつをやろう』
別れの日に渡すつもりだったある物を〖武具格納〗から取り出す。
「これって……!」
『そう、杖だ。森亀の枝から作った奴だな』
目を瞠るポーラに解説した。
捩じれさせたり先端に葉っぱを残したりしてそれっぽくした杖を差し出す。
『本当はポーラが試験に行くときに渡そうと思ってたんだが、こんな半端な時期になっちまって悪ぃな』
この世界において、杖はシンボル的な役割を持つらしい。
持ってても魔法が強くはならねぇが、最強の魔法使いである魔王が
高級腕時計とかブランドバッグみてぇなポジションだな。
攻撃を防いだり足が疲れたときに体重を掛けたりもできるので機能性が皆無って訳でもねぇし。
……まあ、何はともあれ。
そんな意味合いを持つ杖を、餞別として渡したのだった。
「ありがとうっ、大事にするね!」
輝かんばかりの笑顔でポーラが言った。
喜んでくれたようで何よりだぜ、とオレは胸を撫で下ろす。
実は杖の作製は一度断られてたんだよな、ポーラの武器を作り始めた頃に。
その時は「実用性が薄いから必要ない」って言われたんだが、どうにも心底から要らないと思ってるってよりかは、遠慮している風に見えた。
勘違いだったらどうしようと思ってたが、杞憂だったな。
『あぁ、大事にしてくれると嬉しい。それとちょっとやそっとじゃ壊れねぇと思うが、もし万が一折れたら葉っぱの装飾に光を当ててくれ。そうすりゃ修復機能が働いて勝手に治る』
森亀の杖の性能を説明していく。
つっても、特殊な効果は自動修復くらいで残りは純粋な強度向上と軽量化だが。
『あぁ、それと底の方が薄くなってるだろ?』
「わ、ホントだ。木の剣みたいだね」
『〖スペーススラッシュ〗を使えるかもって思ってそうしたんだが、どうだ?』
「〖スペーススラッシュ〗! おお、出来るよ!」
『それなら短剣が使えねぇ時とかはそっちも使えるな』
それからもう一本の杖と、大きな剣を取り出す。
『こっちの杖はエルゴのだ。アイツにも世話になったからな。森亀が死んだってんでしばらく町は混乱するだろうが、ほとぼりが冷めたらこっそり渡しといてくれ』
「うん」
『そんで剣の方はオレが〖レプリカントフォーム〗で模倣した物だ。壊せば〖スキル〗が解けてスライムの肉片になる。もしもの時はこれでオレの死を偽装して欲しい』
「分かったよ」
さて、これでやるべきことは全て終わった。
ポーラのくれた空間拡張袋を体の上に乗せる。荷物はこの中に全部入ってる──つっても地図しかねぇけども。
『……それじゃあ、またな』
「……うん、またね!」
最後に〖意思伝達〗でそう伝え、北西に向かって進み出す。
振り返ることなく──スライムに首は無いので後ろに意識を向けることなく──花畑を後にした。
こうしてオレはこの日、生まれ育ったドワゾフの森を抜け、この広い広い異世界への第一歩を踏み出したのだった。
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種族:戦火
獣位:凶獣
スタッツ
ライフ :3169/1491
マナ :3849/1811
パワー :856
タフネス:10204
レジスト:833
スピード:741
スキル
方向感覚 カバー 登攀
ブロック 完璧の守勢 逃走本能
ウィップ コンパクトウィップ 愚行 意思理解
スラッシュ コンパクトスラッシュ ジェスチャー
意思伝達 ウェポンボディ 身体修復
水泳 遁走 転瞬 クロスカウンター
挑戦 集中 空中跳躍
墜撃 貯蓄 輸送
武具格納 レプリカントフォーム 蠱惑の煌めき
スラスト 抗体 夜目 コンパクトスラスト シュート
分解液 チャージスラスト 猛進
チャージスラッシュ コンパクトシュート 隠形
軟体動物 一擲 受け流し 噛み千切り
ウェーブスラッシュ ウェーブスラスト 捕縛
ヘビースラッシュ ヘビースラスト ヘビーシュート
精密射撃 毒手 高速再生
武装の造り手 激化する戦乱 多刀流
千刃爆誕 縄張り パリィ
スイング コンパクトスイング ヘビースイング
チャージスイング クエイクスイング 舞闘
暗殺 嵐撃 土俵際
怒涛の妙技
ユニークスキル:
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