第57話 新たな〖スキル〗

~非通知情報記録域~~~~~~~~~~~

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>>不破勝鋼矢|(ジュエルアーマリースライム)が〖進化〗を開始しました。

>>種族が戦火いざなう兵器産みに変化しました。

>>〖進化〗に伴い〖スタッツ〗が変化しました。

>>〖スキル〗が追加されました。

・・・

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 オレが選んだ種族は戦火いざなう兵器産みだった。

 理由はいくつかあるが、一番大きいのは武器作製能力だ。既存〖スキル〗とのシナジーが期待でき、応用性も高そうに思えた。


 それに加え、〖凶獣〗の武器を作る手段が他になさそうだから、ってのもある。

 以前エルゴに聞いたんだが、〖豪獣〗の素材から武器を作れる職人は、町全体を見渡してもほんの一握りらしい。


 〖豪獣〗素材でさえそんな有様なのだから、〖凶獣〗素材を加工できる者が居る確率はかなり低い。

 それに、今後この森を離れた時のことを考えても、自前で武器を用意できることはプラスになるはずだ。


「(……ん、終わったな)」


 少しして、〖進化〗特有の燃えるような感覚や満ち満ちる全能感が落ち着いた。

 変化した体を改めて見返してみる。


 オレの体は相変わらず立方体のままだったが、サイズが大幅に増していた。

 周囲の樹木と並ぶほどであり、森亀や赤鬼、ヒュドラなどの〖凶獣〗と同規模だ。


「(遂に、って感じだな)」


 体に掛かる枝を振り払い、感慨深げに呟く。

 デカ過ぎて不便そうって気持ちよりも、ようやく追い付けたって達成感の方が強かった。


 巨体を動かし、思う存分に力を振るってみたい衝動に駆られる。


「(──と、図体にばっか気を取られてちゃ駄目だな。〖ステータス〗も見ねぇと)」



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種族:戦火いざなう兵器産み

獣位:凶獣

魂積値レベル:111


 スタッツ

ライフ :1596/1133

マナ  :1308/1427

パワー :585

タフネス:7039

レジスト:642

スピード:501


 スキル

方向感覚 カバー 登攀

ブロック 完璧の守勢 逃走本能

不退転 ウィップ コンパクトウィップ

連撃 愚行 意思理解

スラッシュ コンパクトスラッシュ ジェスチャー 意思伝達

ウェポンボディ 流転の武芸 身体修復 踊り

水泳 遁走 転瞬 クロスカウンター

挑戦 集中 空中跳躍

墜撃 貯蓄 輸送

武具格納 レプリカントフォーム 蠱惑の煌めき

スラスト 抗体 奇襲

夜目 コンパクトスラスト シュート

分解液 チャージスラスト 猛進

チャージスラッシュ コンパクトシュート 隠形

軟体動物 一擲 受け流し 噛み千切り

ウェーブスラッシュ ウェーブスラスト 捕縛

ヘビースラッシュ ヘビースラスト ヘビーシュート

精密射撃 毒手 高速再生(NEW)

武装の造り手(NEW) 激化する戦乱(NEW) 多刀流(NEW)

千刃爆誕(NEW) 縄張り(NEW)


ユニークスキル:肥大地雷アース・グロウス・サンダーボルト

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 おお……っ、〖ライフ〗と〖マナ〗が素で千を超えてやがる……!

 〖進化〗前は四百台だった他の〖スタッツ〗も軒並み五百以上になった。

 相変わらずイカれてる〖タフネス〗もいずれ森亀に挑むことを考えると心強いぜ。


「(〖スキル〗の方はどうだ……、)」



~スキル詳細~~~~~~~~~~~~~~

高速再生 常時、負傷や欠損を自動で回復する。常時、自身の〖ライフ〗回復量に補正。


武装の造り手 素材の性質を反映させた武器を造り出せる。武器作製時、作製物の武器性能を補正。


激化する戦乱 素材の武装化適性や武器の情報を解析、記録することができる。記録した情報を元に武器を改造することができる。


多刀流 複数の武器を扱う時、武器の操作技術に補正。複数の武器を扱う時、情報処理能力に補正。


千刃爆誕 対象とした素材を多数の短刀に勢いよく変化させられる。


縄張り 〖制圏〗を広げ、操れる。

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 新しい〖スキル〗は六つか。

 〖高速再生〗は多分〖自己再生〗の上位版だな。〖ライフ〗回復量に補正、ってのはつまり自身の受ける回復効果が高まるってことみてぇだ。

 本当は100回復するところを110回復するよう補正を掛ける、的な。


「(クセが無くて使いやすいし、回復が速くなるのは純粋にありがてぇ。それより気になるのはこっからだな)」


 この先は完全に未知の〖スキル〗だ。胸の高鳴りを自覚しながら〖スキル〗の詳細を見て行く。

 まず目を付けたのは〖武装の造り手〗。

 武器を作り出す〖スキル〗だ。


「(ふむふむ、使うには〖マナ〗が必要なんだな)」


 〖スキル〗に意識を向けて使い方を確認しつつ、取りあえずその辺の木の枝を一本折る。

 この木はヒュドラの〖制圏:毒沼〗の影響を一際強く受けており、太い枝にも関わらず葉っぱは一枚も付いてなかった。


 人の腕ほどはあるその枝を鞭で持ち、〖スキル〗を発動。

 木の枝に神経が通うような感覚と同時、オレの頭には大枝の多くの情報が浮かんで来た。

 枝の形状から構成、材質、潜在する性質まで。


 そしてどうやらオレはそれらを操作できるらしかった。

 まずは形だ。剣の形になるように、大枝を変形させていく。


「(おわっ、ちょっ、待てっ、そっちじゃねぇ!)」


 しかし、初めてのそれは失敗に終わっちまった。

 自分の体を変形させるのとは勝手が違い、どうにも思い通りの形にできなかったのだ。

 挙句、力加減を間違えて曲げてしまい、それを正そうとしたところ今度は向きを間違え、結局完成した物はいびつなオブジェであった。


「(よし、ナイスな武器だな。鈍器として使えそうだ)」


 自分を納得させ、次は〖激化する戦乱〗に目を向ける。

 これは武器の解析と改造ができるっつう〖スキル〗だ。

 改造って単語が好奇心を激しく刺激するし、早速今作った枝のオブジェで試してみよう。


「(おお、これはさっきのと似てるな)」


 〖スキル〗が発動すると、枝オブジェの情報が頭の中に流れて来た。

 情報は〖武装の造り手〗で見たのと似通っていたが、増えている部分があった。武器性能の項目だ。


 木の枝の強度や特殊効果を読み取ることができている。

 まあ、このオブジェは作製段階で失敗したので特殊効果は付いてねぇんだが。


「(よし、いっちょ改造して特殊効果を付けてやるか。〖激化する戦乱〗! ……と、こいつは継続的に〖マナ〗を使うのか)」


 改造能力を発動させた途端、〖マナ〗が減少を始める。

 武器情報に変更を加える度、それに見合った量が消費されてる感じだ。

 初めにまとまった量を払えばそれで終わりの〖武装の造り手〗と違い、使えば使うほど〖マナ〗が要る。


「(ただの木だから潜在性質にロクなのがねぇな。ここはシンプルに強度向上でいいか。簡単そうだし)」


 軽いノリで決め、特殊能力を付与。オブジェが小さく光りそれで完了である。

 格の低い効果だと、こんな風にすぐ付けられるらしい。


「(っし、成功だな。これも色々できそうだぜ)」


 次は〖多刀流〗。複数武器を使うオレには持って来いの〖スキル〗だ。

 実際、真紅の槍を三本模ってちょっと振るってみたが、以前よりも格段に扱いやすくなっていた。


「(〖スラッシュ〗アンド〖スラスト〗! よし、同時発動も行けるみてぇだな)」


 これまでは〖ウェポンスキル〗を同時には使えず、〖流転の武芸〗を利用して連続発動していたのだが、〖多刀流〗によりそれも解決した。

 三本の槍でそれぞれに〖ウェポンスキル〗を扱えたのだ。


 直接戦闘を考えるならこれが一番のアタリだろう。


「(そんで次は〖千刃爆誕〗か。短刀を作るのに勢いが必要なことがあるかは分からねぇが……まっ、試してみるか)」


 また枝を折るのも面倒だったので、適当に近くの木へと鞭を伸ばす。

 〖千刃爆誕〗も〖マナ〗が必要なためどんどん込めて行った。


「(…………ま、まだ行けるのか)」


 かなりの〖マナ〗を注いでいるが、なかなか終わりが見えて来ねぇ。

 それからもしばし〖マナ〗を注ぎ続け、そして数値にして五百ほど注いだところで発動可能になった。

 ちょっと予想外のコストの重さだ。


 とはいえ、せっかく完成したのだし使ってみよう。


「(〖千刃爆誕〗、発動!)」


 瞬間、木が爆裂した。

 風船が膨らむのを百倍速にしたようなスピードで膨張し、そのことにオレが何かを思う間もなく爆ぜたのだ。


 森に轟くのは、耳元で打ち上げ花火が炸裂したかの如き爆音。

 爆ぜた木は幾多の短刀となり、爆音に追随して四方八方へ飛び散る。


「(スゴ……)」


 〖スピード:501〗であっても短刀の動きはほとんど見えなかった。

 周囲の木々や地面はズタズタに斬り刻まれており、威力も十二分である。


 これが〖凶獣〗の力なのかと、戦慄と興奮を覚える。

 〖マナ〗消費が激しいから易々とは使えねぇが、切り札としては悪くねぇ。


 さて、他の〖スキル〗は全て調べ終わった。

 残るは本命、〖縄張り〗だ。


 全ての〖凶獣〗が持ち、環境すらも支配するというその能力。

 それを今から見て行こう。

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