第27話 〖進化〗3
「(た、倒せた……!)」
大熊の口から這い出し歓喜する。
これでオレはまた一段と強くなった。
〖進化〗もできるみてぇだしな!
「(──と、まずは傷を治さねぇと)」
ズキズキ痛む体の末端に意識を向ける。
最後、口内のオレをどうにかしようと大熊が何度も引っ掻いてきた時の傷だ。
「(〖身体修復〗)」
使用頻度が滅法少ない〖スキル〗を使い、体の傷を癒していく。
〖マナ〗がかなり心許ないので最低限の治療で済ませた。
それから大熊に意識を向ける。他の誰かが来ない内にこいつも食べてしまおう。
毛皮はともかく、体内の柔らかな肉なら溶かせるしな。
「(どれどれ一口……おぉっ!?)」
美味ぇ!
その身を少し溶かす度、旨味が口一杯に広がる。
かつてないほど濃厚な〖マナ〗が、生肉の血生臭さを完全に掻き消していた。
「(──と、そうだ、〖進化〗候補も確認しとくか)」
しばらく夢中で食べていたが、そこで〖ステータス〗に意識を向ける。
~進化先~~~~~~~~~~~~~~~~
ファッティルビースライム 獣位:豪獣
アイオライトウェポンスライム 獣位:豪獣
ラリマーティアースライム 獣位:豪獣
ジュエルアーマリースライム 獣位:豪獣
ジュエルスミススライム 獣位:豪獣
トルマリンマインドスライム 獣位:豪獣
ダイヤモンドスライム 獣位:豪獣
血石
ジュエルミーティアスライム 獣位:豪獣
ドゥームオパールウーズ 獣位:豪獣
・
・
・
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
多いわ!
数えてみたら全部で二十個くらいあった。
うん、多いわ!
まあラインナップを見るに、進化先は所持〖スキル〗とかこれまでに取った行動とかで決まるんだろうし、前回の〖進化〗から時間が経った分、増えているのは当然だろう。
オレはただでさえ〖スキル〗が増えやすいのだからこの数にも納得である。
「(うへぇ、これ全部確認すんのか……)」
納得であるが、辟易とした思いもある。
〖ステータス〗表示は実際に文面が出てくるというよりも、頭の中に知識がスッと浮かび上がる感じだ。
なので実際に読むよりかは楽なのだが……さすがにこの数だと気が滅入る。
「(……いやいや! 進化先の数は可能性の数! 全部確かめて最良の種族を選ぶぜ!)」
怠けそうになった自分に喝を入れ、オレは進化先の情報を読み込みだした。
大熊を半分ほど溶かした頃に一通りの確認は終わった。
それから考えに考えを巡らせ、候補を三つにまで絞り込んだ。
頭を使いすぎたせいで知恵熱に襲われそうだが、一つずつ紹介して行こう。
~進化先~~~~~~~~~~~~~~~~
ジュエルアーマリースライム 獣位:豪獣
・武器を集め『ウェポンスキル〗を使うアーマリースライム、その希少種。
・隔絶した〖タフネス〗と優秀な〖レジスト〗、またそれなりに高い〖パワー〗が特徴。
・魔獣であるにも関わらず武器を好む変わり者で、〖ウェポンスキル〗や武器の扱いに長けている。
・武器を収集するための〖スキル〗を持ち、集めた武器を模して戦うことも。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
まずはこいつ。ジュエルウェポンスライムの発展形みたいな種族だ。
これまでの戦法がそのまま強化される形なので扱いやすそうなのが選出理由。
同じく発展形のアイオライトウェポンスライムとの違いは収集〖スキル〗があること。
どうせ〖進化〗するなら新しいタイプの〖スキル〗が欲しいのでこちらを優先した。
また、『ジュエル』のままであるため次の〖進化〗候補の幅も増えるのではないか、という予想もある。
ルビーとかダイヤモンドとか、一度宝石の種類を決定したら他のにはなれないかもしれねぇ。
凡庸な『ジュエル』のままで居れば、これぞという進化先に出会える確率があがると思うのだ。
まあ、オレの考え過ぎって可能性も充分あるけどな。
~進化先~~~~~~~~~~~~~~~~
ドゥームオパールウーズ 獣位:豪獣
・絶望を振りまくドゥームウーズ、その希少種。
・惨烈なるその肉体はスライム程の柔軟性を持たないが、〖スタッツ〗ではほとんどのスライムを凌駕する。
・強力な酸や呪いの攻撃〖スキル〗を持つ。
・悍ましくも美しいその姿は見る者の正気を失わせ、狂乱へと導く。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
こちらは戦闘特化型みてぇなスライム……ではなくウーズだ。
スライム間の伝聞によると、邪悪なスライムの堕ちるスライムの亜種がウーズなのだとか。
姿も今のようなお餅型ではなく、お化けみたいなシルエットとなるらしい。
スライムの話なので信憑性はイマイチだが。
とはいえ、書いてあることは強そうだ。
きっと今回の〖進化〗候補では一番の戦闘力である。
不安点を挙げるなら『見る者の正気を失わせ~』の部分だろう。
書き方からして〖魅惑の輝き〗みてぇな強制発動型の〖スキル〗かもしれねぇ。
人間を狂わせるのは嫌だし、他の生物でも無差別に被害を出しちまうのは心苦しい。
~進化先~~~~~~~~~~~~~~~~
カーネリアンリベンジスライム 獣位:豪獣
・反撃の〖スキル〗を使いこなすリベンジスライム、その希少種。
・強靭無比な身体で受けた衝撃を蓄え、反撃と同時に解放する。
・多彩な反撃〖スキル〗を有し、遠近両方の攻撃に対応できる。
・〖ライフ〗が減るほどにその〖スタッツ〗は高まる。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
最後はコイツだ。
オレが〖クロスカウンター〗戦法を使っていたから出て来た進化先だと思う。
反撃系の〖スキル〗は発動の制限が厳しい代わりに一撃の威力が高い。
オレの〖タフネス〗なら大したリスクもなく使えるので相性は良い。
しかしながら、自発的な攻撃手段がないと言うのが気になる。
オレはもっとアグレッシブに仕掛けたいので、できれば攻撃手段は欲しい。
今あるので充分と言われたらそれまでだが。
それから悩みに悩み抜き、大熊の可食部を食べ終え、そこからさらに悩み、そうしてようやく進化先を決めた。
「(よし、オレは──)」
「おい、あれ〖豪獣〗の死体なんじゃ……って、あそこに居んの例の魔獣じゃないか!?」
「嘘だろ、ジュエルスライムが〖豪獣〗を……いや、他の魔獣が倒したおこぼれか……?」
「関係ねえ、他の奴らが来る前に殺しちまおうぜ」
げっ、人間達が来やがった。
〖進化〗は一旦置いといてこの場から〖遁走〗するとしよう。
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