第12話 7人の刻(下)
その後、俺は走り続けた。
街につき、ギルドに頼み込んで、仲間を連れて戻ってきた。
中々信じて貰えず、時間はかかったがまだ間に合うはずだ。
あの時の場所へ辿り着く。
そこには屋敷があの時と変わらず存在している。
違うのは人の気配が全くしない事だった。
慎重に玄関から中へと入る。
鍵は掛かっておらず、簡単に入ることが出来た。
居間や厨房を見て回ったが、ある日を境に誰も居なくなったかのように生活感の溢れた空間が広がっているだけだった。
俺は間に合わなかったのか?
「お前ら!来てくれ!」
焦りを含んだ声で我に返り、急いで向かう。
呼ばれた部屋はあの日隠れた時計がある個部屋で、まさかという期待と共に中へ入る。
しかし、目の前に現れたのは。
かなり痩せ細り、鎖やロープで全身拘束された怪物だった。
直感的に、あの日居た怪物も同じだろうと察しられた。
「なぁ、ここに日記みたいなのがあるぞ。」
「こっちには写真が貼られた日付表か?」
仲間から声が掛かりそれを見てみる。
それはあの日の子供達の写真と、少女の日記である事が分かった。
7つのマークの様なものが書かれた、最初の日付表に貼られた写真はハーピィの少年のもの。
それからは1つずつマークが減り、それと共にあの子供達の誰かの写真が貼られていた。
数日空くこともあれば、一度に2人消えた時も。
そして最後にはマークは一つだけとなってしまった。
「、、、待てよ。」
あの少女の写真がない。
マークも、時計のマークだけは最後まで着いていた。
縋り付くように日記を見る。
ここに、まだ救いがある筈だ。
この怪物を拘束して助け出してくれた俺じゃない恩人が、何処かで幸せに生きていけるようになった少女が居るはずだ。
そして、最初に書かれた1文目を読み。
【最初の夜、私はお母さんに選ばれ、友達を食べた。】
理想が壊れる音がした。
あの時、少女が言った怪物とは自分の事だったのだろう。
震える手でページを捲っていく。
【 数日の間、私は誰も見つけずに済んだ、安心していたけど、何故かイラついて近くの木箱を蹴り飛ばした。
少しだけ、木箱の中から悲鳴が聞こえてしまった、だから木箱ごと食べた。】
探してみると、倉庫に崩れた木箱の山があった。
近くの壁には何かがぶつかった跡のようなものも。
【今日は何て最悪なんだ、追い掛けていたら偶然他の子が隠れている屋根裏に向かってくれた。でも言い合いして喧嘩をしていたから、2人仲良く一緒に食べてあげた。】
段々と少女も正気を失って言ってるのか、それとも心すら怪物になってきているのか日記の内容も変わってきて閉まっている。
仲間が屋根に空いた大きな穴と、子供1人が何とか入れそうな小さな穴を見つけたが、それを気にすることも出来ない。
【また1人減った。昨日のあの子は大人しかったけど、今日の子は沢山戦ってくれて楽しかったなぁ。
1人ずつ、減っていくのを見て食べてるんだ、生きてるんだと実感できちゃう。
お母さんも喜んでくれるよね?、、、あれ、お母さんって誰だっけ?】
少しづつ筆記が乱れている。
そこから暫くの間、誰も食べられてはいないが少女の精神状態は狂っていった。
そして、ついに6人目が食べられてしまった。
【なるだけ我慢した。自分の体も齧った。でもダメだった。何処かで切ってしまったのかな、血の匂いがするって気づいた時には、思い切り掴み出して、直ぐに食べてしまった。嫌だ。食べたくない。あの子だけでも助けて。私の親ナタ」
筆が途中で折れたかのように筆記がめちゃくちゃになる。
怪物の足元にはインクが乾ききった筆が転がり、親友は恐らく、自ら犠牲になったのかもしれない。
「なぁ、、、あの日、何で俺を助けてくれたんだ?」
怪物は何も言わない、ただそこに縛られているだけ。
最後の約束だけでも果たそうと、俺は剣を抜く。
「もし、俺の事を覚えていたら。恨んでもいい。お前の仲間達の分まで感謝して、懺悔し続ける。だから安心して逝ってくれ。」
そして剣を首に振り下ろす。
その瞬間、気の所為だったかもしれないがその目は笑い
,,,お母さん?
そう、口が動いてた気がする。
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