第8話 怪物達の裏会議

「これで全員か?」

「今回も随分集まったねぇ。」

「我は待ちくたびれたぞ。」

「それでは宣言しましょうか。」

「任せて!【第8回怪物会談】を始めるよ!」

 とある場所で、怪物たちが集まっている。

 容姿、性格、それぞれ違えども

 愚痴を吐き合う、この目的だけは共通していた。


「では俺から行かせてもらう」

 戦士のような、しかし中身がみえない鎧が立ち上がる。

 響くような声を出し、早速怒りをぶつけた。

「まず、魔王軍の武装状況なんだが、、、何故お前達は装備を着ないんだ!」

「着ても窮屈ですし,,,」

「面倒臭いから!」

「着るだけで戦闘能力はだいぶ変わるんだぞ!?余ってる装備が宝箱に捨てられる位幾らでもあるだろ!」

 ガチャガチャと音を鳴らし、鎧が暴れる。

 装備を着れないお前が言っても説得力が,,,という視線を向けられているがそれに気づかない。


 「その点で私の方からも良いでしょうか?」

 軽装の女性が立ち上がる。

 彼女には鹿のような角、爬虫類の様な尻尾、そしてコウモリのような翼が生えている。

 「竜の素材の装備を作るのはやめて貰えませんか?あれ、再生するだけでとても痛いんですよ。貴方の腕も捻り取ったりしてあげましょうか?」

 優しく、静かに、腕を凶悪な怪物のものにして、微笑みながら伝える。

 しかし、返って来たのは


「そんなに怒ってると皺が増えるぞ?竜の中でもBBA何だからな。まぁ、寿命迎えたら素材にしてやるから安心しな。」

「てめぇ気にしてる所突き刺してくるんじゃねぇぇぇぇぇ!」

 鼻で笑うように地雷を踏まれ、全身を巨大な龍にして咆哮をあげる。

 1人はそれを見て頭を抱え、2人は必死に其れをなだめた。

 そして竜が鎧を噛み砕いて真っ二つにしたあたりで何とか落ち着く事が出来た。


「戻るの時間かかるんだぞ?」

「全身噛み潰してやろうか?」

「はーい、そこまで!次は僕の番だね!」

 ピエロが会話を切るように立ち上がる。

 ふざけた調子ではあるが、会議の進行や書類整理など1番マトモでもある。

「この前、人間を沢山生け捕りにして欲しいって言ったんだけど、何でみんな殺しちゃうの?ゾンビ作りとか大変なんだよー!」

 仕事だけは。


「それなら私達も必要なのよ。そんな悪趣味な事に使わないでくれないかしら?」

 魔女も立ち上がる。魔法を研究する為にサンプルや実験が必要なのだが、いつもピエロと言い合ってるのだ。

「割り込んでこないでよー、ほかの研究でもしてれば良いだろー?」

 魔女が棘を飛ばし、ピエロがのらりくらりと避ける。

 竜と鎧よりは平和だが、別の意味での激しい争いと化していた。

 

「戦うためにはまず設備や装備をだなー」

「それよりも民のの事を何とかー」

「研究する為の人員も素材もー」

「そんな事よりこっちの方がー」

 そしてふと、魔女が気づく。

「そういえば、魔王様は何かありますか?」

 忘れていたと全員落ち着きを取り戻し、魔王へ目を向ける。

 静かに成り行きを見守っていた魔王は、遠い目をして沈黙を破る。


「,,,,,我は全員、もっと仲良くあって欲しい」

「「「「すみませんでした」」」」

 魔王の一言により、今回は一時解散となる。

 そして彼らは次の会議までに再度愚痴を溜め込むのだった。

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