第6話 四感の狩人

 長いこと俺は山篭りをしている。

 より自然に触れ、何かを感じたくて洞窟に暮らし、猟をして暮らしている。

 しかし、1人ではなく相棒とだ。

 こいつはとても大きな体を持つオオカミで、崖から落ちてけがしているところを助けたら仲良くなれた。

 とはいえ、一緒に住んでる訳ではなく、狩りをしてるとフラりと現れるのだ。

 俺が銃を撃ち、アイツが獲物を追い詰める。

 狩の後はちゃんと獲物を分け合って、腹が膨れたら戯れる。

 野生の狼であるんだろうが、やけに人間染みた動きをする奴であった。

 そんな毎日を送っていたが、ある日のこと,,,


「今日は荒れるだろうな、、、」

 空を見あげ、風を感じて呟く。

 何時も通り狩りを終え食事中に俺は呟く。

 早めに帰るのもいいが、こいつの事が心配になった。

「なぁ、今日は俺の所で寝るか?」

 その時、過剰に相棒は反応して何故か恥ずかしがるように顔を背けていた。

 嫌だったのだろうか?そう思い立ち上がり帰ろうとすると慌てて着いてきた。


「それにしても、お前は本当に俺の言葉が分かってるみたいだよな」

 そう言えば相棒は振り向き、惚けるように首を傾げる。

 そうして歩いている内に洞窟に着いた。

 真っ暗だが、俺には慣れている場所で今となっては憩いの我が家だ。

 ふと気になったのはオオカミの反応。

 何やら驚いて居るようだが、そこまで酷くは無いと思うんだが,,,


 それから、相棒と洞窟に入り暫くして嵐がやってきた。

 幸いにも深い洞窟なため強い寒さなどに襲われることは無かったが、警戒してるのか相棒はあまり動かない。

 俺も体を休める為に横になる、火は最小限にして、僅かな暖かさに身を寄せる。

 日を大きくし過ぎたら俺達が燻製になってしまうからな。

 それにしても、本当にコイツは変わった相棒だ。

 火も銃も驚きはするものの、恐怖ではなく、興味を持った驚きを示すのだ。

 遠吠えもせず、ただ静かにそこに居る。

 そんな所が俺は気に入ってるんだけどな。

 そして互いに眠りにつき、夜は嵐の音だけが響いていた。

 

 「、、、朝か、嵐も止んだ見たいだな。」

 目を覚ますと、膝に重みを感じる。

 オオカミが乗っかっていたのだ。

 道理であまり寒くないと思ったが、寝ぼけたのだろうか?

 それはそうと、ちゃんと触れた事が無いなと思い、そっと撫でようとする。

 野生とは思えないほどフワフワの毛並みで、とても撫で心地が良い。

 ところが撫でていると、動物には無いような毛並みを感じる。

 「,,,ん?やけに滑らかだが、、、」

 そこで相棒は飛び起きて、恥ずかしがってるような怒りを示してきた。

 流石にしつこかったかと反省し、何とか許せて貰えたようで、2人で外に出る事にした。


「それじゃぁ、気をつけてな。」

 そういうと相棒は尻尾を振り、また森へと消えていく。

 また会えるだろうが、ひとつ疑問が生まれてしまった。

 あれは本当にオオカミなのだろうか?

 とはいえ、オオカミじゃないから何だという話だ。

 種族がどうであれ、相棒は相棒だ。

 これからもそれは変わらない、お互い助け合い、信頼していくだけなのだ。

 男の友情もそういうものだろう。

 しかし、ここでもひとつ疑問が生まれてしまった。


「,,,,, あいつオスだよな?」

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