第4話 路地裏の平和

 この路地裏には私の親友が住んでいる。

 怪しい人ではない、猫なのだ。


「やっほー!いるー?」

 人気の少ない路地裏、ここら辺は空き家も多く野生の動物もよく出てくるのだ。

 今日も私は路地裏の1つに足を運び、彼女を探していた。


「居ないのー!まこねー!」

「五月蝿いんだけど」

「あれ?いた!」

 声のした方に振り返ると姿は見えず、気配を感じ上を見てみると、配水管に器用にぶら下がる女性がいた。

 その黄金色の眼は全てを見透かしているような、はたまた呆れたような様子で細められる。

 音もなく2階以上の高さから舞い降りるその技は人間離れしており、どことない不気味さを漂わせていた。


「なんの用?」

「用は無いけど来ちゃった!」

「,,,,,,寝る」

 露骨に嫌そうな顔をした彼女はすぐに自分の住処に戻ろうとする。

 少女は慌てて引き留めようとするが完全に無視をされていた。

 そこでとあるを取り出す。


「ふふふっ、、、これに抗えるかなぁ?」

 取り出したのロングチュール!猫なら飛びつくこと間違いなし!

「馬鹿にしてる?」

 ダメだった。

 上から呆れたように見下ろしてくる。

 しかし、その口元は自然と笑みが浮かび楽しみにしているようでもあった。

 

「で、でもせっかく買ってきたんだしさ!食べてみない?ね?」

 その様子に気付かず、必死に引き留めようとする少女を見て。

「仕方ない,,,特別だよ?」

 満更でも無い様子で隣に降り立ち、早々とチュールを受け取ると早速食べ始めた。


「どう?美味しいでしょ?新発売なんだよ!」

「まぁまぁかな?」

 そう言いながら彼女食べる手を止めず、引っ付いてくる少女を軽くあしらっている。

 その後も学校の事であったり、家にいる猫が花瓶を落としたりなど、色んな話を次々と笑いながら話す。

 それを彼女は無関心な様に相槌を打つが、耳はしっかり傾けて聞いているようだった。

 そうこう話している間に日が沈んできた。


「あ、そろそろ帰らないと,,,また来てもいいかな?」

 少女は決まって、再度来ることを確認してくる。

「,,,好きにしたら?」

 そして彼女は無愛想に告げるが、いつもここで待ってくれている。

 「それじゃ、またね!また長いチュール持ってくるからぁ!」

 騒がしくやってきて、慌ただしく帰るその姿は嵐のようで、初めてあった時から図々しさは変わらない。



「、、、また来いよー」

 その背中を見送って十分に離れた頃、ボソリと呟き、恥ずかしそうに住処へと戻る。

 恐らくこれからも少女は来るのだろう。

 自分の平穏な日常に土足で入り込んでくる少女。

 それでも何処か楽しみにしている自分に首を傾げ、大きな欠伸をして眠りについた。

 これからもずっとあの子は来る。

 だから、仕方なく此処で待っているんだ。

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