第2話 呪われた願い
ここにはとある龍がいた。
1年に1度目を覚まし、初めて訪れた者の願いが叶うのを助けてくれる。
そしてその日が移り変わる時再び眠りに落ちるという。
しかし、これは呪いでもあった。
「,,,今年も来ぬか」
光が刺す暖かな森深く、かの龍は寂しげに呟く。
かつては邪龍として恐れられ、呪いを付けられ封印され、今は何百、何千、数え切れないほどの目覚めをしてきた。
呪いが解かれるのは「100年願いを叶える事を助ける」という条件なのだが、大抵の者は1度来て満足して来なくなるか、願いで己の身を滅ぼしてしまう。
手助けすると言えど、金持ちになりたいと言えば埋蔵金を見つける事もあれば、壊滅した冒険者の一味から大金を得られる事もある。
しかし、それだけなのだ。
埋蔵金を見つけたのが地下に生き埋めにされた後でも。
壊滅した冒険者の一味と共に魔物に囲まれ葬られようとも。
願いを叶えたという点では間違いないのだ。
「ここ数年1人も来ないまま、今年もダメだろうな」
ここの噂話が廃れたか、何かしら別の要因で近ずけ無くなったか。
どちらにせよ誰も来ないならどうにも出来ぬ話と、早々に諦め眠ろうとしたその時
「トカゲさん?」
「,,,我は龍だ」
冒険者の女が1人迷い込んできた。
嬉しい様な、疲れた様な、深いため息をつくと何時もの台詞を吐く。
【汝、何を求める?最も望む願望を言霊に宿らせよ。】お
これも呪いの魔法だ、相手か最も望む事を喋らせる。
何度か100年忘れずに来いと、脅した事もあるが結局この呪いは相手が本当に望む事しか言わせず、最後には誰も戻ってこなくなるのだ。
「私は、トカゲさんと,,,友達になりたいです!」
【その願い、聞き届けた】「,,,は?」
「え?本当に良いですか!やったー!」
こうして小娘は定期的に我の所に来るようになった。
〜2年目〜
「また来ましたよ!」
「とんだ物好きだな……【汝、何を求める?最も望m「お名前を教えてください!」
途中で遮っても魔法は成立するのか
「お前はもう少しマトモな願いをしてみてはどうだ?」
「良いんですよー、昨年教えてくれなかったトカゲさんが悪いです!」
「トカゲでは無いわ!」
何時か噛み殺してやろうか
〜10年目〜
「お久ー!おじさん!」
「もはやトカゲですら無くなったか,,,【汝、「お家作るの手伝って!」
「家か、しかし我はここから動けぬぞ?」
「おじさんの家を作るんだよー」
「年中寝てる我に必要か,,,?」
しかし、願いは願いな為手伝う他ない。
荒れ果てた洞窟は彼女の手によりみるみる内に綺麗になっていった。
〜30年目〜
「よ、ドラゴンさん」
「全く、、、懲りない奴だな」
「最近じゃここまで来るのも一苦労になって来たよ、いっその事一緒に住もうかなぁ」
「こんな邪龍と過ごすよりもっと人の多いところで幸せに生きろ」
「,,,本当におじさん見たいになってきたね?」
何時からか心を許していた。
どんなに優しくしても、生きる時間の流れが違い過ぎるせいで、訪れる結末は変わらないと言うのに
〜70年目〜
「,,,生きてるか小娘」
「まだ生きてるよ、今更寂しくなったのかい?」
「あれだけしつこく来られたらな、最後の望みが【終わりを看取って欲しい】などと言われるとは思わなかったぞ」
やはり寿命で別れが来てしまった。
ここまで共に居た人間は初めてだからか、呪いが解けなかった悲しみより、コヤツとの別れを惜しむ我がいる。
〜71年目〜
「,,,【汝、何を求める?最も望む願望を言霊に宿らせよ。】」
「、、、また、会いたい、な」
「【その願い,,,聞き届けた】」
そして彼女は息を引き取った。
その日はとても長い1日だった。
きっとこの悲しみは埋まる事はなく、一生引きずる新たな呪いとして刻まれるのだろう。
〜??年目〜
また、久方ぶりの客が来た。
長命種か、またくだらぬ願いを言われるのだろう。
【汝、何を求める?最も望む願望を言霊に宿らせよ。】
そして彼女は満面の笑みでこう答える。
「またお友達になってください!トカゲさん!」
唖然に取られるが小娘との最後の願いを思い出す。
あぁ、このように叶えられるとはな。
【その願い、聞き届けた】
呪いがひとつ解け、もう1つの呪いが解ける日もそう遠くないのかもしれない。
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