第1話 檻を覗く鳥

 私は永遠に檻に閉じ込められる。

 私の種族は綺麗な歌を歌い加護を与える事が出来て、毒や呪いに敏感。

 だから1人いるだけでそういうトラップを避ける事が出来る。

 でも、私の場合は檻に入れられ、声が枯れても歌わされ、毒があっても逃げられ無いからすぐ教えないと私が死んでしまう。


「はっはっはっ!今日も大量だぜ!」

「こいつが居なかったら危なかったなぁ」

「いざとなれば餌として置いてけば良いが、使えるうちに使ってやらねぇと行けねぇからな」

「本当、歌う事しかできないんだから。ほら、アンタの食いもんだよ、有難く食いな」

 そう言って渡されるのは雑穀を茹でただけの粥。

 毎回、美味しそうな料理を目の前にして罵られ、貶され、笑われる。

 もう嫌にこんな生活は嫌だ。

 だから私はとある計画を建てた。


「あ?声を良くする薬が欲しいだ?」

 初めは殴られたり無視されたりで話を聞いて貰えなかったけど、必死に歌い、貢献して、声が枯れるまで頑張ったら貰えるようになった。


「毒の資料が欲しい?なんでそんなもの」

 体を張ってより貴方たちを助けるため。

 喉の薬の件で少しは認められたのか資料を定期的にくれるようになった。

 私はこれをほんの少しずつ、毎日体に取り込んだ。

 もとより毒に弱い種族だったせいで、毎晩地獄の苦しみを味わった。

 それでも毒への耐性は少しづつ、でも確実に身に付いてきた。

 そして、、、


「なぁ、この辺少し暑くないか?」

「緊張のせいだろ?今回はさらに深い所まで入ってるんだ」

「安心してください。危険な気配は私が教えますし。より良い歌も歌えるようになりましたから!」

「それもそうだ、私らが死なないようにしっかり教えるんだぞ?」

 最初に死ぬのはお前かもしれないけどな、と笑い声が上がる。

 確かに私は逃げられない、しっかり危険を教えないと彼らは私を置いてでも助かろうとするだろう。


「お前も死にたくなかったら働けよ?また欲しいもんは買ってやるからな!」

「はい!任せてください!」

 そして私達は段々先に進んでいく。

 しかし、異変も浮き上がってくる。


「なぁ、なんでこんなに魔物が居ない?」

「運が良いんだろ?そんなに警戒する事は無いんじゃねぇか?」

「それにしても何か気分が、悪くて、オエエエェ」

「おい!?大丈夫か!!」

 やっと

 私は何もしていない、ただ今までより綺麗な歌を、今までより長い間歌い続けていただけ。

 

「これは、毒!?」

「おいテメェ!俺らに教える約束は,,,がぁ!?」

 そして私は

 その途端周りの皆は膝をつく。

 そりゃそうね、大きな加護を与えた肉体でやっとここまで来れて、毒が耐え切れないほどになった瞬間、その加護も切れてしまえば、マトモに動けなくなる。


 「オメェ、俺らが死んだら、生きて帰れると、、!」

「別に良いよ?死んでもいいもん」

 死にたくなかったら働け、それなら死にたいなら働かなくてもいいよね?

 そう笑顔で返す頃には泡を吹いて動かなくなってしまった。

 

「これからどうしようかなぁ,,,」

 周りには何もいない、毒を恐れ魔獣も近寄らない。

 「でも、やっぱり生きたいな,,,」

 幾ら毒耐性があっても、何時かは侵されるかもしれない。

 当然、餓死なんかもしてしまうだろう。


「,,,もう少しだけ、頑張ってみよっか」

 そして再び歌い始める。

 自分に加護を授け、手錠を檻に擦り付ける。

 何度も、何度も、疲れたら休み、僅かな食料を少しづつ食べ、檻から出ようと、諦めなかった。



 後にこのダンジョンではとても美しい歌声と、鎖を引き擦る様な音が響くと噂になった。

 それを知る為に多くの人々はダンジョンを捜索したが、歌声に辿り着く事は出来なかった。

 そして、鎖の音と歌声は同時期に聞こえなくなり、噂も次第に都市伝説として語られる様になっていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る