第4章-鉱山の国ゴルディア-

第37話

「おーい、ミンカル。今日は手紙が来てるぞ!」

 午前の営業のピークを終え、ほっと一息ついているところへ郵便配達員が声を掛けた。

「手紙?」

 ミンカルは手紙が来ることに心当たりがなかったので少し怪訝そうに玄関へ向かった。

「ほら、ミンカル。ダリルからだぞ。」

 配達員はミンカルの手にそっと手紙を置いた。ミンカルは思わずその手紙を目の前まで運んだ。ダリルの字で、ミンカルブレッドの住所とミンカルの名前が記された封筒だった。

「こ、これ、俺にか?」

 ミンカルは思わず配達員に尋ねた。

「そうとも。ダリルが他所の国から手紙を書いて寄こしたんだ。一般家庭に国際便が届くことなんてあんまりないからな。びっくりしたぜ。ジューンベリーじゃ、みんな手紙を書く前に話に行っちまうからな。」

 ミンカルは新しいおもちゃを買ってもらった子供のように手紙を上に掲げてキラキラした眼差しを向けている。そんな様子を見た配達員もニコニコしている。

「ダリルからの手紙か。あいつ手紙の出し方なんて知ってたんだな♪」

 ミンカルはとても上機嫌だ。嬉しそうに手紙を受領した。


ミンカルさんへ


 ジューンベリーを発ってからまだそんなに時間は経ってないけど手紙を書いてみました。ジューンベリーを出た後すぐにアリドーシさんという行商人の方と知り合って一緒に移動しています。手紙の出し方はアリドーシさんに教えてもらいました。

 マキーノという国のヴィザリール領というところに到着しました。マキーノは森の国と呼ばれているところです。ミンカルさんもしかしたら来たことがあるかもしれませんね。ここは大きな巨木に町が囲まれていて、昼も夜もありません。常に暗いところです。でも、色とりどりのランプが町を照らしていてとても幻想的な光景が広がっています。昔学校で読んだおとぎ話の世界のようです。

 まだ来たばかりで町を見たりはしっかりできてませんが、アリドーシさんもこの町に用事があるようなので少しこの町で情報収集をする予定です。

 ミンカルさんとこの幻想的な光景を見たいなと思いました。

 手紙なんてちゃんと書いたことがないのでなんて書けばいいのか分からないけど、また手紙書きます。

                                ダリルより


 ミンカルは手紙をそっと折り直して封に戻した。そして窓の方を向いて、遠く西方に思いを馳せた。あの向こうにダリルがいるんだな。あいつ、元気かな。初めてのことばっかりで戸惑ってないかな。手掛かり掴めてるかな。

 窓から入ってくるそよ風に厨房にかかったダリルのエプロンがひらひらと揺れていた。

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