第35話
フロイス自身も詳細を把握しているわけではないのでそれ以上の話は出てこなかった。敵国の攻撃以外に病魔が襲ってくるという想定がなかったため一同は面食らった。まだマキーノ国にもその伝染病の報せはしっかりと来ていないからか、全くと言っていいほどに情報がなかった。
「かなり事態は深刻なようね。フロイス、教えてくれてありがとう。私たちがこれからどうすべきか、どうあるべきかにとって重要なことだったわ。」
アイリスは気丈に振る舞い、フロイスへ返した。
「さぁ、私たちもここでずっと長話をしているわけにもいかないわ。そろそろ晩餐会場の方へ一旦戻りましょうか。」
そうアイリスが呟くと、フロイスも席を立つ準備をした。
「ダリルさん?」
ダリルは虚空を眺めて静止している。
「ダリルさん?」
ダリルはアイリスからの呼びかけで我に返った。無論、最初に呼ばれていたことには気づいていない。誰が見ても狼狽している様子だった。正直、アイリスもフロイスもダリルには同情するし、掛ける言葉も見つからなかった。
晩餐会の会場に戻ってもダリルはどこか気の抜けた様子で漂っていた。
「おう、ダリル!」
と上機嫌なアリドーシが声を掛けてきたが、ダリルの様子がおかしいのを察するや否や神妙な面持ちに切り替わった。
「どうしたってんだ?なんかあったのか?」
心配した様子でダリルに話掛けるアリドーシ。ダリルもこの場で先ほどの話をするのは適切ではないと思い、
「すいません。少し驚くべき情報がありまして。今ここでお話しするのは相応しくないので、後でお話ししますね。」
とひとまず話題を避けることにした。確かに、ここには多くの来客が来ている。それぞれに歓談を楽しんでいるところに暗い話をするのも野暮だ。アリドーシは「そうだな」と受け入れ、再び行商人の顔に戻ってセールスにと向かって行った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます