第31話
誰しもが一度固まった。しかし、すぐに我に返り身の安全を優先した。ところが、ちょうど国軍が通った後で道が開けてしまったのもあり飛行機からはダリルたち後退部隊の姿は丸見えだった。
すかさずダリルたちの付近に爆弾が落とされ、今まで聞いたことのない轟音とともに周囲の地面や木を吹き飛ばし、炎が上がった。ドラートを襲ったのも、きっとこの飛行機でこの爆弾だ。ダリルはそう思いつつ必死に身を隠すため林道を外れ、森の中に転がり込んだ。横ではソニアが震えている。しかし、しっかりと周囲の状況を把握しようと周りを探っているようだった。
「各自、身を隠せ!」
先頭を率いていた者の大声が響く。言われずとも皆一様に森の中へ退避し、上空から視認されないように身を隠した。
しかし、飛行機は無差別に周囲一帯を焼き尽くす勢いで爆弾を落とし続けた。道の反対側の森に爆弾が落とされ、凄惨な悲鳴が聞こえてきた。
「だ、ダリルくん、もっと奥へ逃げよう。」
ソニアが飛行機の無差別爆撃を見て、この一帯から離れることを提案した。
ダリルもそれに頷いて踵を返した時だった。背後で小さな音がした。見ると、ダリルの背負っていたリュックに先ほど林道から逃げる時にどこかに引っかけてしまったのか穴が開いている。そして、先ほどの小さな音はおそらくドラートのペンダントがその隙間から落下した音だろうとダリルは思った。失くさないようにとリュックの奥にしまったのがあだとなった。
「ダリルくん、早く!急いで!」
少し離れた所からソニアが囁くように身振り手振りでダリルを呼んでいる。
「ごめん、ソニアくん、先に行って!すぐ追いかけるから!」
ダリルは低木の垣根を手で漁るようにしてドラートのペンダントを探った。
「(あれだけは持って帰らないと。絶対に持って帰らないと。)」
ダリルは必死にペンダントを探し、ようやく視界の端に銀色の光を見つけた。
「良かった。あった。」
ダリルは安堵し、ペンダントをぎゅっと掴むと急いで振り返った。
するとソニアが物凄い形相でこちらに駆けてきている。今まで一度も見たことのない焦りに満ちた表情だ。そして、何かをダリルに伝えようとしているように口を開け閉めしている。
「え?」
ダリルがそう思った瞬間、
「逃げて!!!!!!」
というソニアの大声が聞こえると同時にダリルはソニアに突き飛ばされた。突き飛ばされる視界の端で、突き飛ばしたソニアのすぐ隣、つまりダリルが先ほどいた地点に爆弾が降ってきた。地面ばかりに気を取られ、頭上への注意が散漫になっていたのだ。
「ソニっ」
言い切る間もなく、今までで聞いた中で一番の爆発音と衝撃がダリルをさらに吹き飛ばした。自分の身体がまるで魔法にかけらたように軽々と宙に浮き地面が離れていく。薄れゆく意識と狭窄する視界の中で、ソニアの身体がバラバラに四散していく様子が見えた気がした。もはやそれが現実だったかどうかすら覚えがない。ダリルの精神とは裏腹に意識は失われたのだった。
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