第29話

 間もなくして回収できた遺体や遺物が基地に戻ってきた。ダリルはもしかしたらドラートが数えられていないだけで、何かの間違いでA10部隊の一員じゃないだけで、ひょっこり生きているんじゃないかと思いながら安置所へ向かった。

 しかし、そこには目を閉じ、冷たくなったドラートの姿があった。嘘でも幻でも何でもなく、形をもったドラートの「死」がそこにはあった。

 ダリルはドラートの前で座り込んだ。耳を澄まさずともそこかしこから友の死を悼む泣き声が聞こえる。悲しい音だった。それなのに、時折低く唸るような爆発音が響いていた。


 遺体は焼却され簡易ではあるが骨壺に収められる。ここが隠密部隊の基地でなくてよかったとダリルは思った。そうでなければ、こうやって弔うこともできなかったのだろう。ダリルは遺品としてドラートがいつも首から下げていたシルバーのペンダントと骨壺を旧知の仲の代表として預かった。これを、これだけを、これだけはドラートの家族の元へ届けなければいけない。ダリルはそう強く決心したのだった。ダリルはその後、自身のリュックの中に大切にそれらをしまい込んだ。

 ミンカルの元に帰りたい、リリーやアーベントの元に帰りたい、ジューンベリーに帰りたい、そうした思いとソニアのしてくれた話、そしてドラートの遺志がダリルを動かしていた。

 国軍も、もうすぐそこまで来ていた。

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