第23話
基地に着いて外に出た時の光景をダリルは生涯忘れないだろう。
木や地面が焼け焦げた臭い、まだ昼間のはずなのに立ち込める煙で薄暗くなっている空、なんとかして帰還したであろう重傷の兵士たち、その奥で足や手だけが出ているシートの下には…、考えるだけで身震いした。今も、そう遠くないところから爆撃音が響いてくる。
シンプルに恐怖を感じた。今まで平和のうちに暮らしてきた。命の奪い合いなんて全く現実味を帯びない話だった。それが、今現実として目の前に広がっている。車から下車してくる者たちは皆一様に静止し、その光景を見て唖然としていた。基地にいるからと安全ではないのだ。ダリルはその場から駆けて逃げ出したい気持ちでいっぱいだった。
基地に入ると迷彩柄の服を手渡された。ポケットが多く収納スペースに富んでいる。
「これは周囲の環境に溶け込みやすい柄である。つまり、諸君の命を守るためのものだ。任務に従事している間は基本的に着用するように。」
皆無言で迷彩服に袖を通した。これを着ることによってとうとう取り返しのつかない所まで到達してしまったという実感が湧いた。中には半べそをかき出す者もあった。それはそうだ。つい先日まで自分がこんな状況に陥るなんて思ってなかった者たちの集まりだ。
「諸君をこうした戦場に立たせることはとても心苦しい。しかし、こうでもしなければジューンベリーは瞬く間に敵勢力の手に堕ち、今まであった「当たり前」が失われてしまう。家族、恋人、友、それらすべてが奪われてしまうのだ。どうか、諸君の力を貸してほしい。」
各部隊の隊長たちの悲痛な胸中が、この惨劇をより克明に示していた。
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