第22話

 そこからは早かった。ダリルやミンカルは自分の置かれた状況を整理する間もなく話はとんとん拍子に進んでいった。

 翌日の朝には領主の名前で通達が届き、昼過ぎにはダリルたちは広場に集められてそれぞれのグループに分けられた。そこから北部へグループごとに送られるという手筈のようだった。

 町中の若者が集められている関係で、ダリルの見知った顔も多く集まっていた。

「お、ダリル!お前も呼ばれてたか~。」

「ダリル久しぶり~。」

「ダリル~!」

 学校時代の友人たちが口々にダリルに声を掛けてくれる。みな学校を卒業してからはそれぞれの仕事をしており、なかなか集まる機会というのもなかった。こういう事態ではあるが、軽い同窓会のようだった。しかし、声こそ明るいが、表情の奥にはこれから自分の身に起こるであろうことに対する不安の色が色濃く表れていた。

「ダリルは何の部隊なんだよ?」

「えーっと、なんて名前だったかな。とりあえず、Eグループってことだけ覚えてる。なんか説明があるのかな?」

 少し周りに注意を向ければ、みな口々にどのグループだ、どの部隊だと話し合っている。

 この時までは若者たちはこれから起こることについて優しい想像しかできていないのだった。


 指揮官らしき者の挨拶の後、それぞれのグループに分かれて大きな車に乗り込んだ。初めて乗るサイズの車だった。多くの者もそうだったようで、目をきょろきょろさせている。

「Eグループの諸君、初めまして。このグループの部隊長、ストックだ。Eグループに部隊名をあえて付けるなら炊事部隊だ。我々は設営した基地で食事と医療を除く衛生活動に従事する。

 はっきりとよく通る声でストック隊長は説明を続けた。ダリルたちは基地に滞在してそこで食事当番等を担当するようだった。前線に送られるわけではないと知りダリルは少し安堵した。しかし、戦争は戦争、命の奪いに優しさなどは介在しない。この後、ダリルの身に起こる凄惨な出来事をまだ誰も想像できなかった。

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