第16話
アイリス一行が去ると、人だかりも次第にほどけて始めた。アリドーシはなおも上を見ながらふらふら歩いているダリルの姿を見つけ駆け寄っていった。
「おう、ダリル!どこほっつき歩いてたんだ~。ヴィザリール領主様のお嬢様がさっきまでここに来てたんだぜ~。そう言えば、やけに「ダリル」って言葉に食いついてたけど、お前さんアイリスお嬢様の知り合いか?」
「アイリス?いや、聞いたこともない名前です。ジューンベリーから出たこともないので、領外に知り合いなんているはずないですよ。」
ダリルは心底心当たりがないというような様子で返事をした。
「そうか。けど、向こうはお前さんのことを何やら知ってそうな雰囲気だったぜ。」
アリドーシがそう言うと、ダリルは少し真剣な顔つきになった。領外で自分のことを知っている者がいる。まだ確信は得られてないが、もしそうならそれは誰かが自分のことを伝えたということになる。ダリルは一縷の希望を見出したが、相手が領主の娘ともなると簡単に面会はできそうにもないと歯噛みした。
「聞いて驚け~。なんとアイリスお嬢様がダリルと話がしたいってことで明日宮殿に呼ばれてる。俺の話も聞きたいって言ってたが、完全についでだろう。明日迎えを寄こしてくれるって話だが、どうだ?せっかくだし、お呼ばれしようぜ。」
願ってもない申出だった。自分の西方への旅がこんなにも順風満帆なスタートを切るとは。ダリルはせっかくのチャンスをものにしようと二つ返事でアリドーシの提案を飲んだ。
ヴィザリール領主の娘、アイリス、彼女はどういうつもりで自分を宮殿に呼んだのだろうか、不安もあったがそれ以上に期待が勝っていた。
ダリルはアリドーシの後について宿へ戻った。
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