第9話
夕方、ダリルは市街地から少し離れた所にある小川へとやってきた。かつては美しい平原の中を流れていた小川で、小魚の群れが透き通る水の中をすいすい泳いでいるのを見ることができた。今は、上流の方で撤去作業の洗い物でもしているのか、はたまた流れが土砂で悪くなっているのか、濁った水が流れている。また、美しかった平原も少し遠くに目をやれば、落とされた爆弾によって抉られた地面や、延焼して焼け野原と化した区画も見受けられた。そんな凄惨な光景ですら夕陽は優しく包んでいた。
ダリルは自分の中の逸る気持ちをかき消すように首を振った。問題は分かっているのに、その解決策も分かっているのに、手が出せないもどかしさが常にダリルの背後について回っていた。どうすればいいんだろう、ダリルは重く流れる小川の流れを見ながら考え込んでいた。
ミンカルは配給に向かってから帰りの遅いダリルを心配していた。だが、どこで何をしているかは分かっていた。昔から、ダリルは落ち込んだり、悩んだりすると、いつも小川の畔で座っている。案の定、今日も近くまで来てみれば、ダリルの影が小川の傍にちょこんと座っていた。ダリルが首を横にぶんぶんと振っている。そんな様子を遠くの木陰から眺めていた。
夕陽が傾いてきた。木々の影が伸びていく。ダリルははっと我に返り、すっかり時間が経っていることに慌てた。急いで台車を引いて店に急いだ。
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