第4話
「今日、これをアーベントのアトリエで見つけてきた。」
ダリルは肩にかけていたカバンの中から1冊の本を取り出し、ミンカルに差し出した。ミンカルはその本に見覚えがあった。
「これは…あいつが学生のときから何度も繰り返し読んでた本じゃねぇか。ん?なんか表紙に…」
「『西へ』」
ダリルはミンカルが本の表紙に注目するやいなやそう呟いた。
「…」
『西』という言葉を耳にしてミンカルは黙り込んだ。
「アーベントたちは西へ向かったんだ。」
すかさずダリルは続けた。まるで何か根拠のない可能性を感じているような言いぶりであった。
「西か…」
ミンカルはついぽつりと漏らしてしまった。そしてすぐに自分の発言をかき消すようにダリルに本を手渡した。しかし、ダリルはミンカルの反応を見逃さなかった。
「ミンカルさん、何か知ってるの?西には何があるの?」
「…」
次はミンカルがだんまりの番であった。
「ミンカルさん!」
ダリルは藁にも縋る思いでミンカルに駆け寄った。ミンカルの反応はきっと西の国のことを知っているに違いない、そうダリルは確信したのだった。
しばらく二人の間に沈黙が続いた。しかし、ダリルがあまりにも真っすぐにミンカルに視線を向け続けるので、ミンカルはついに折れ、おもむろに口を開いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます