第11話  怪しい雲行き

 新しく剣術指南になったアレン・シュナイダーとの訓練は、主に竹刀での撃ち合いだった。

(『竹刀での打ち合い』)がアレンの方針で、木刀も使わせてくれなかったのだ。


 それなのに、


「そろそろ真剣を使いますか?」


「良いのか!?」


「姫も大分、竹刀に馴れているご様子、良いでしょう」


 アレンは、唐突に言ってきたのだ。

 あくまで、優しく親切に。

 アンナレッタは、嬉しくなって、屋敷に剣を取りに帰った。


 やがて、アンナレッタは剣を抱えてアレンのもとへやって来た。


「おや、似合っていますね」


 アレンに言われて、アンナレッタは少し嬉しくなった。

 アンナレッタは、数回素振りをしてアレンと本格的な撃ち合いが始まった。

 竹刀でやっていたことを真剣でやるだけだ。


 それでも、初めて真剣を持ったアンナレッタには不思議な感覚に襲われた。

 生まれてから、初めてだとも思える緊張感だ。


 突然アレンは、鋭い突きを放った。


 ビックリしたアンナは、リカルドを呼んだ。


「「「リカルド!!」」」


 突風が吹いて軌道がズレた。

 アンナレッタの目には、リカルドが盾になってくれたことが分かった。


「おや、一発で仕留められると思いましたのに……」


 アレン・シュナイダーは不敵な笑みを浮かべていた。

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