第3話 ハルア、モートレック
彼女の前は、ハルア・モートレック。
セルオーネのさらに山奥の寒村の生まれだった。
正騎士なのに、女故か巡礼者たちの来る、大神殿の警備騎士しかさせてもらえなかった。
180テール(cm)もある大柄な彼女は、ツブァイヘンダーと言う大きな剣を愛用していた。
故郷のセルオーネの山中で、熊と格闘していたのを演習中のロゥ騎士団の隊長に目撃されて、騎士団にスカウトされたのだ。
そのためか、あだ名が熊女である。
リカルドが目撃したときもハルアは、熊と戦っているように見えた。
銀の森には、珍重されているいくつかの放し飼いの動物がいるが、神の使いとされる生き物なので、害すれば極刑である。
<あいつ、ドスクと戦ってるぜ>
リカルドの言うドスクとは、銀色の毛並みの熊のことだ。
銀の森の入口付近に、棲みついている。
穏和な性格から、人々のマスコット的な存在だった。
「まさか、ドスクに手を出せばどうなるか分かりそうなもんだか……」
リカルドは、アンナレッタをその女の後ろに着地させた。
女は、すぐに気配を感じて、振り向いて大剣を構えて言った。
「何者!?」
アンナレッタがひょいと見ると、女の前方ではムドクが腹を上にして、甘えるような仕草をしている。
<こいつ、相当出来るぜ>
「本当か?」
<気配に気づいたのも早いし、振り向いた時の剣の構えも基本中の基本だ>
そこまで、リカルドの言葉を聞いて、アンナレッタはハルアに話しかけた。
「お前は、警備騎士か?」
誰だろう、ハルアの第一印象だ。
こんな子供が1人で、迷子にでもなったのかな?それて保護を求めてきたのか。
安直にハルアは、そう思った。
しかし、アンナレッタの口からは、ハルアの思いもよらない、言葉が飛び出てきたのである。
「お前は、今日から私の剣術指南役だ」
ハルアは、意味が分からなくて、アンナレッタと目線を合わせるために、中腰になった。
「お嬢さん、父上か母上はご一緒ではないのですか?」
「いても、いない存在だ。自己紹介が遅れたな。私は、アンナレッタ・エル・ロイル。ロイル家の一人娘だ。」
「ええぇっー!!」
ハルアのビックリした声が、木霊した
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