第8話 月には兎がいる -7-
「
「ん~?」
真朱の髪の手入れをしながら
「あの少年、魂の形も視えていなくて、本当に大丈夫なのでしょうか」
玄兎は見た目こそ10歳程度の子供だが、蘇芳の代から仕えている老練で、真朱の生まれた時からずっとそばで成長を見守ってきた。だから、うっとおしがられるとわかってはいても、つい親心で心配になり、口を出さずにはいられないのだ。
「そうだね、力の強さでいったら、おそらくスミレの方が上だろうね」
「今からでも雷蔵殿に頼んで、変えていただいては? このままでは、これから華々しく戦歴を上げるであろう、真朱さまの前途に泥を塗ることになりかねません」
「まだ始まってもいないのに大袈裟だよ。それとも僕が信じられない?」
「いえ、そういうわけではありませんが……」
真朱の強さを疑っているわけではなかった。
「もう、僕のやることにあれこれ口出ししないって約束でついて来たよね? いきなり初日から破るつもり?」
「……申し訳ありません」
真朱は、ふっと軽く息を吐いて言った。
「心配してくれるのはありがたいけど、これは母から『僕へ』の課題でもあるんだから。過度な干渉は無用だよ。祥太郎も悪い子じゃないし」
「それに、持たざる者が歯を食いしばり、もがいて、努力して、どん底から這い上がる物語の方が、僕、好みなんだ。カタルシス想像するだけで身震いするよね」
「左様でございますか……」
むしろ自分は、刺激よりも安定感を求める性質なので、お決まりの展開のほうが落ち着くので好きだ。先が読めるくらいがちょうどいいとさえ思う。そういうワンパターンばかりだと
「大丈夫だよ」
ニコッと真朱が歯をみせて不敵に笑う。
「だって、僕って結構強いもの」
「まあ見ててよ。僕らの紡ぐ物語を、特等席でさ」
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