第10話 かつての友


 「お、お前は!?」


 「よお、久しぶりだな。涼太」


 そこには一樹がいた。


 「っ!」


 一樹がピストルを取り出し、みくねえに向けた。


 「涼太ごめんなぁ、俺も姉ちゃん助けんといかんからさ、鍵くれよ、なあ!」


 一樹はピストルの引き金に指を掛ける。


 「待て!じゃあ薬は沢山あるはずだからそれを一緒に使おう!」


 俺は平和的な解決策を持ち出した。親友だから俺と仲良くしてくれると思った。


 「っ!君嶋さん!」


 一樹はボロボロの君嶋さんを見ると、君嶋さんのもとに近寄った。


 「おい!どうしたんだよ!おい!」


 半泣きになりながら君嶋さんに声を掛ける、しかし君嶋さんは当たり前だが起きない。


 「涼太!何をした!」


 「っ!」


 俺は胸ぐらを掴まれ、顔を思いっきり殴られた。


 「もういい、君嶋さん!早く起きろ!」


 一樹はまた君嶋さんの元へ行き、膝から崩れ落ち、君嶋さんの手を取った。


 「すきあり!」


 『ガツッ』


 みくねえは持っていたショットガンの持つ部分を思いっきり一樹の頭に打ちつけた、一樹はすぐさま倒れた。


 「ふう、時間もないし、急ご」


 一樹を放置していていいのだろうか?俺にそんな疑問がよぎるが、


 「私たちを殺そうとしたんだよ!?そんなの置いていくしかないでしょ」


 「それは君嶋さんたちも同じで…」


 「……そうだけど、救える人数は限界があるのよ」


 みくねえのごもっともな正論を俺は返すことができず、またあの時みたいに一樹を置いていくことになった。


 「ごめんな」


 そう一言告げた。


ーーーー


 『総理!本当に核を打つのでしょうか!?』


 『はい、我々も尽力しましたが、ウイルスを封じ込めるにはこれしかないかと』


 現在、宮崎県は県境が封鎖され、感染が蔓延している延岡市と他市の高速道路や一般道なども同じように封鎖されている。


 しかし、気づかれていないだけで、宮崎県以外にもウイルス感染の火種は起こっていた。


 『ですので、宮崎県に住む国民は今すぐに離れてください、本日の午後6時にミサイルを発射する予定です』


 この総理の『ミサイル発射します宣言』により、国会議事堂前、各地の市役所前で抗議するデモが起こった。


 『非核三原則はどうした!』


 『民主主義はどこに行ったんだ!』


 『宮崎県に核を打つな!』


 しかし、政府はデモ隊の声に関係なくミサイルを打つ気だった。


ーーーー


 2時間前…午後2時ごろ


 『やあやあ、日本の首相さん』


 『一体これはどうなっているか説明してくれませんか?』


 そこには日本の首相とある国のリーダーが面談していた。


 『ああ、ウイルスが蔓延しかけているんだって、大変だろう、力を貸してあげよう』


 『いいえ、結構です。我々は実質的にあなた方とは敵なんですから』


 そう日本の首相はキッパリと言う、しかし、


 『そうか、だが君たちの軍の力でそのウイルスを抑えられるのかい?それとも、多少のは仕方がないっていう考えなのかい?』


 『……』


 『いいかい、教えてあげよう。私たちは日本に核ミサイルの提供もできるし、なんなら私たちの国から打ってあげてもいい、もちろんタダでだ。

しかし、あいつらはどうだ?本当に日本を助けてくれるのだろうか?日本を見捨てないと言えるかい?私たちは必ず助ける、約束だ』


 『しかし、あなた方と手を組めば我々もただじゃすまない』

 

 『安心したまえ、日本のことは必ず守るから、あいつらは倒してあげよう、もちろんこの事はあいつらには言うなよ、言ったら落とすからな』


 日本の首相は迷っていた、正直、その国が言っていることも一理ある。しかしその国と手を組むと欧米諸国との対立を深めるきっかけにもなり得てしまう。だが…


 『分かりました、支援よろしくお願いします』


 するとその国のリーダーは急に笑顔になってこう言った。


 『ええ、から落としますね』


 『え!?話が違…』


 そこでビデオ会談は終了してしまった。


 『くそっ!向こうから打ったら欧米諸国に関与がバレるじゃねえかよ!』


 こうして首相は絶望していたのであった。


ーーーー


 「みくねえ、ニュース見た?」


 「見た。ミサイルがあと2時間で落ちてくるってやばくない?」


 「そうですよ、僕たちもここまでか…」


 二階へ向かう前に少し情報収集をし、二階へ向かったがまさかミサイルが打たれるなんて。


 「じゃあ早く君嶋を助けないと!」


 と奮起し、二階の『実験台管理所』へ向かっている。


 二階へ着くやいなや、そこは既に地獄絵図と化していて、まず人間の死体。しかも四肢が離れている千切れているものや、胴体の大きい穴が空いているもの、中には変色したものまであった。


 「「おえぇぇぇぇぇ」」


 みくねえと俺はあまりの地獄絵図に吐いてしまい、コウはフラっと目眩が起きているようだった。


 血の池を踏みながら、実験台管理所へ向かう途中、三メートルくらいの巨大な犬が居たり、爪が伸びすぎている熊がいたり、とにかくもう散々だった。


 「ここで何が行われていたのかしら…」


 「……」


 俺たちはなるべく音を立てず、口を抑え、なるべくこの空気を吸い込まないようにして向かった。


 2分ほど歩くと、実験台管理所が見えた。


 そしてその実験台管理所の部屋の中に明らかな鍵付き扉も見つけた。


 「あった!急ごう!」


 俺たちは実験台管理所へと足を踏み入れた。


 


 


 


 


 














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