第9話 研究所まで
『ババババババババ』
自動銃の音が聴こえる、アサルトライフルか何かだろうか。
「自衛隊が来たのね」
みくねえはそう言う、実際日本では銃刀法で一般人の銃の所有が禁止されているので、自衛隊とかの類いだろう。
「しかも結構近いしね」
俺は言う。銃声が聴こえるかんじ、三百メートルとかそこそこ近い距離にありそうだ。
(こんな状況で俺たちが見つかったら絶対にやばいよな)
俺はそう思う、明らか怪しい子供と銃を所持してる大人だ。捕まったら何されるかたまったもんじゃない。
『おい!何してる!』
「ちっ!」
上空から来たヘリに見つかってしまい、走って逃げざるを得なくなった。
『こら!止まりなさい!』
俺たちはこの上ない危機感を感じる。
『ええ、場所は繁華街前、子供三人と大人一人、そして子供一人は負傷者で、おぶさってもらっています、銃を所持してる女がいるので気をつけて』
「見つかっちゃったね〜」
みくねえはそう言いながら走る。
「君嶋さん負ぶさって走るのキツすぎる!」
「……」
君嶋さんの弟は無言で走りながらこっちを見てくる。
「……ごめん」
『こら!止まれ!止まらないと撃つぞ!』
そう言われるが、俺たちは止まることなく走り続ける。
『先輩!発砲許可をください!』
『まだだ!相手が持っている武器が拳銃と確認できたらだ!』
どうやら後ろから追いかけているほうも話をしながら来ているらしい。
『しかしっ…』
『だが、相手に止まる気が無いみたいなら撃っても構わん』
『はい』
その時、俺たちはその話し声は聞こえなかったが、はっきり聴こえたものが一つ、
銃の発砲音だ。
俺たちへ向けられた凶弾は、君嶋さんの右脚と俺の右脚を貫通した。
「ぐっ」
「……」
俺は立ち止まらず、そのまま走り続ける。
「涼太!くそっ」
みくねえは持っている拳銃を奴等に向けたが、
「撃っちゃだめだ」
ここで銃を撃つと、確実に猛攻で反撃される。そうなれば最悪バッドエンドだ。
「でも…」
俺はある策を思いつき、みくねえに提案した。
ーーーー
10分後
「もうやめてください!」
みくねえが声を荒げる、俺たちも静止する。
二人の自衛隊が近づいてきて、
『じゃあ大人しくその銃を放して投降してくれるかな?』
二人のうち、一人がそう言う。
「はい」
みくねえはさも諦めたような返事をする、
『子供三名、大人一名を保護、至急こちらへくるように』
そして全員と思われる人数三人が集まり、総勢五人になった。
(上のヘリも合わせたら八人くらいか)
「じゃあその銃を渡してくれるかな?」
みくねえはそのまま銃を渡すかのように思えた。
「はい、すいませんでし…」
「えいっ!」
その瞬間、君嶋さんの弟により催涙スプレーが、その五人の目に入ったのだ。そう、これこそが策戦だ。
『があああ、目がぁぁぁ』
同様に全員悶える。
『おいっ!何があった!?早く言…』
みくねえはヘリの運転手に照準を合わせて、銃を撃つ。
『バン、バン、バン、バン、』
四発撃ち、運転手ともう一人の奴の頭を撃ち抜いた。
ヘリに乗ってる奴らと、側にいる奴らは、マスクしかつけておらず、簡単に無力化させることができた。
『待てお前ら、こんなことをやってタダで済むと思うのか…』
みくねえは鋭い眼差しでこう言った。
『黙れ、別に今お前らを殺してもいいんだぞ』
こうして、俺たちは研究所への道を急いだ。
ーーーー
しばらく走ったあと、俺たちは研究所に着いた。
「なんだこれ…」
入り口の扉のガラスは割れ、あたりに血とガラスは散乱し、そして研究所内にもゾンビがいることが確認できる。
「こほっこほっ」
「姉ちゃん!」
君嶋さんは口から血を噴き出した。そうだいくらゾンビと言っても失血死しない訳じゃ無い、かく言う俺もかなりまずいな。
「行くしか…ないようね」
みくねえは覚悟を決めた様子で言う。
「僕には、何ができるかな…?」
コウが言う、俺はこの君嶋さんとその弟を無事に帰したい。
「一緒に着いてくるしかないね」
俺は言った。
「分かった、足を引っ張らないように頑張るよ」
と言った次の瞬間だった。
「た、助けてくれぇ!」
奥から片腕を無くしている白衣を着た男が足を引きずりくる。
見ると既にゾンビに噛まれているようで、瞳は緑色に充血しており、もうゾンビになる直前のようだ。
「止まれ!」
俺は命令するが、男は止まることなく必死にくる。
男との距離が十メートルくらいになった時、みくねえは銃を構える。
『カチャ』
弾は発射されず、男はまたこっちにくる。
「くそっ!」
みくねえはそばに落ちていたガラスを拾った、俺も拾い戦いに備えた。
「君たちが、涼治くんの知り合いかい?」
男はそう言うと、俺たちに近づいてきて鍵を手渡した。
「涼治くんから頼まれている、さあ薬はそこにあるから、きっと」
きっと?なんだか腑に落ちない言い方だ、まあいい。
「あの…あなたは一体?」
俺は訊く。
「ああ、涼治くんの同僚さ。さあ早く生きたまえ、俺はもうすぐゾンビになるから…な」
「は、はい。ありがとう、ございました」
俺たちはその場から離れるとこの研究所の地図を発見し、よく見た。
「一階に研究室a、b、と、実験場それと、冷凍室。二階には実験台管理所、と」
「結構あっさりとした作りなのね」
今現在居るのが廊下、ここはゾンビが居ない。
「そしてその鍵を使って保管庫から薬を取り出すって感じか」
ん?待てよ保管庫ってこの研究所の地図にはないよな、
「もしかして保管庫って秘密地下施設とかにあるのかな」
「ちょっと面倒くさいね、まあ行くしかないけど」
俺たちは歩き出した。しばらくして
「あ、みくねえなんか銃が落ちてるけど」
足元にショットガンのようなものが落ちているのを見つけた。
と同時に背中に大きな風穴を開けられている女もいた。
「それ使えそう?」
「うーん、弾も少ししか入ってないし、使いどころ見極めんとね」
ショットガンを手にしたみくねえは、またより一層頼りげに見えた。
ーーーー
俺たちは一階の研究室aに入り、地下施設への手掛かりを探し始めた。
研究室に入るやいなや、腐臭が鼻を突く。どうやら死体から血を抜き取ってその血で薬を開発していたことがわかった。
そして机の上に何やら手記のようなものを見つけた。
その手記にはこう綴ってあった。
『1月20日、正体不明のウイルスのワクチンと治療薬の研究を政府から頼まれた。1月31日、研究がもう少しで完了しそうだ。早く制作し、多くの人命を救いたい。2月10日、ワクチンと治療薬の研究が完了した。期間は少なかったが、このワクチンと治療薬の作用精度をもっと改善していきたい。
2月15日、政府の奴ら…』
手記は千切られていた
「なんだこのいかにもな手記は…?」
「このウイルスの謎を解くいかにもなかんじね」
そして、また別の手記を見つける、今度はかなり古い手記だ。多分10年前程のものだろう。
『橋田、前橋、長谷、保管庫の鍵はしっかり二階の実験台管理所を抜けた鍵室に戻しとけよ、お前らはまだ新人なんだから俺は怒らないけど、桐谷さんが怒るからしっかりしろよそれと橋田、保管庫は二階から地下に行くんだからな、一階からは行けない!覚えておくように!』
そして次のページには若き日の父さんが写った集合写真があった。
『チーム13』
と格好良くそう綴ってあった。
そこからページを捲っていくが、手掛かりになりそうなものは特に無く、最初の鍵の場所の情報だけだった。
「くそー、二階の実験台管理所の近くらへんを通らないといけないってことだろ」
「そうですね、僕が思うに、二階は相当危ないと思いますけど」
「だよなぁ、けど行くしか無いもんなぁ」
その次の瞬間だった
「二人とも!伏せて!」
ドア越しに手榴弾が投げられたのだ、手榴弾は大きく爆ぜ、破片が俺たちの方に飛び散った
「っ!」
そこから驚くべき人物が出てくるのだった。
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