第8話 陰謀


二年前…

 

 「なんか日本ってうざくないですか?」


 ある男が国のお偉いさんにそう言った。


 「まあたしかに、まあでも戦争は仕掛けられないからねえ」


 「えーあんな国さっさとつぶしちゃいましょうよ」


 「そうだねえ、なんか作戦とかあるかんじ?」


 「うーん、一応二つほど」

 

 「ほう、なになに?」


 「核ミサイルを日本とその国を守る国々に撃つのです」


 「駄目だ、核はあくまで牽制の為であり、実際に撃ったら地球規模で核の冬が訪れて滅ぶぞ」


 「それは分かってます。では、生物兵器バイオテロというのはどうでしょうか?」


 「ほう、おもしろそうだな、聞かせてくれ」


 「かつて第一次世界大戦の時はという兵器が生まれました、塩素ガス、青酸ガス、マスタードガスなど、そしてその毒ガスは兵器として十分成果を発揮しました」


 「ほう」


 「そして第二次世界大戦では核、日本に二度爆弾が落ち、数多くの犠牲者が出ました」


 「そこで私はbio(生物)の力を信じ、日本でウイルスを蔓延させたいのです」


 「なにか具体的な策はあるのかね?」


 「はい、はじめは日本以外のほかの地域で蔓延させます、この時蔓延させるウイルスはほとんど意味がないものです、そして、タイミングが来れば日本に同じような特徴を持つウイルスを持ち込ませ、罹ったら最期、100のゾンビウイルスを蔓延させようかなと、もちろん我が国の空港や漁港は閉鎖します」


 「いいな、リスクはだいぶ大きいがリターンも大きい、一度やってみるのもありかもな」


 「はい!」


 こうして一年もの月日をかけ、『Zウイルスα』を完成させた。


 そしてアフリカ、南アメリカなど、さまざまな地域で蔓延させ、決して情報が外部に流出しないよう、研究者たちをしっかり消した。


 時が来て日本に流出させるとき、第一号感染者は他国が送った差し金なんて到底日本は気づいていないだろう、と悠長に笑っている。


 「じゃあ、あとは君に任せた、すまない、こんな役を担ってもらって」


 「いいえ、あなた様のような素晴らしい方に貢献できることが私の幸せ、日本は私が滅ぼしてきます」


 「頼んだ、あ、もしあれなら、君の恋人になる予定だったって女に最初うつせばいいと思うよ」


 「ええ、もちろん最初からそのつもりです。俺の人生を滅茶苦茶にしたあいつを」


ーーーー


 「でさ、アフリカ観光めっちゃ楽しかった」


 「うんうん、私も今度行ってみたーい!」


 「じゃあ今度一緒行こう!」


 「もちろんいいよ!」


 そう、この女さえいなければ、俺の人生もっとましで快適だったはずなんだ。


 だから俺はこの国とこの女ごと終わらせるつもりでウイルスを蔓延させてみせる。


ーーーー


 『えー我が日本国で、大規模な暴動が発生し、特に宮崎県にそれは顕著に表れています』


 午後二時、日本全土にJアラートが鳴り響いた。


 そして内容は想像通りの大規模暴動、いわゆるパンデミックだ、


 『えー我が国としては、感染を封じ込めるため、核の使用も検討しています』


 『総理!核を撃ってしまっては日本の非核三原則はどうなるのでしょうか?』


 『この場合は、一時的に非核三原則、憲法九条の無効化をしたいと思います』


 『総理!そんなことをしていいのでしょうか、国民のことをしっかりお考えになってください!』


 『しょうがねえじゃん!俺ら内閣も国会も、臨時に会開いて、いろんなこと話し合ったよ!けどなぁ、少人数の命より大勢の命のほうが大事だろ!そしてこうしててめえらマスコミに話してる時間あったらよお、俺も現地行ってなんかの、役に立ちてえんだよお」


 場の雰囲気が変わった、総理の感情を込めた演説に心を惹かれたものも多く、記者会見をするたびに叩かれていた総理だったが、今回という今回はたくさんの応援のメッセージがやってきた。


 『総理!大変だと思うけど頑張って!』


 『いくらくらい俺は募金すればいい?』


 『珍しくなんか頑張ってんじゃん』


 一方で…


 『どうせまた検討しかしないんだろ』


 『国民の支持率を上げるための一時的な演技』


 など、心無い言葉を浴びせる者もいた。


ーーーー

 

 「なんかやばいことになってんね」


 「みくねえ、どする?」


 「ぼ、僕は、お姉ちゃん連れて早くここから脱出したいです」


 「いや俺はみくねえに訊いて…」


 「研究所に行こう!」


 「それってお父さんの職場?」


 「そそ、そこに行ったら、薬がきっとまだ残ってるよ」


 みくねえのまさかの提案に俺は考える、


 (確かに、君嶋さんを人に戻せる方法があるかもしれない、だけど、その道中にやられるリスクが大きすぎる、せめて君嶋さんが…)


 なんてことは起きるわけもない、時刻は午後二時、俺とこの少年がエンカしてもう一時間半近く経つ。


 「お姉ちゃんを人間に戻せる方法があるの?」


 「ええ、多少の危険はあるけど」


 「行く!僕がお姉ちゃんを守るって決めたんだ!」


 「多少の危険と言ったが、多少どころじゃないかもしれないな」


 手負いの子供が二人、その中で足の負傷者が一人(服で止血してある)、片腕がない子供が一人、大人と気絶してるゾンビが一人、しかもその大人も拳銃持ち。


 (なんかフリーゲームのRPGみたいやな)


 みくねえはなぜか僕が目覚めたときにはまた服を脱いでいて下着だったのがやはり気になった、もしかしたらみくねえはそういう性癖があったのかもしれん。


 「みくねえ、そういう性癖あったんね」


 俺はジト目でみくねえに言う。


 「だーかーら、これは普通に着れんくなったから脱いだから!そういう性癖でも何でもないから!」


 まあ本人が隠したがってることを無理に聞いたりしない、俺は紳士で誠実な人間なのだから。


 「にしても、核が落ちるって相当まずいですよ」


 君嶋さんの弟が言う。


 「そうね、シェルターとかあればねー」


 シェルター、か。まあそうそうないだろう。


 「とりあえず、研究所に早く向かいましょう」


 君嶋さんの弟が言う。そうだ、まだ名前訊いて無いんだった。


 「君、名前なんて言うの?」


 「君嶋コウ。コウでいいですよ」


 君嶋コウ、覚えた。


 「コウ君、じゃあこれからよろしく」


 みくねえが言った。


 そうして俺たちは研究所への道を急いだ。













 

 

 

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