第2話 パンデミック開始
「おはよーみくねえ」
「ん、ああ、おはよー」
俺は二階の寝室からリビングに降りるやいなや、ニュースを観て、衝撃を受けた、
「な、に、こ、れ」
画面に映っていたのは、医者がZウイルス感染者に襲われるという映像だったのだ。
『男性はZウイルス感染者で、感染してからわずか三日しか経っていません。ですが、医師を採血の際に襲ったと思われ、警察の捜査を受ける模様です』
『襲われた医師は腕を噛まれましたが、今の所は命に別状は無いと思われます』
『続いて次のニュースです…』
二階から降りてきたみくねえも唖然として画面を見つめていた。と思ったら、速攻でtweeter(ツウィーター)でリサーチし始めた。
俺もすぐリサーチし始めた、すると、こんな呟きがあった。
『あの感染者、挙動が映画とかで観るゾンビの動きしてた』
『身体が緑色になるってあれもうゾンビじゃん』
『ゾンビウイルスだからZウイルスなんじゃないの?』
『政府の情報操作かもしれんで』
俺はあの感染者がゾンビだという可能性を考えてしまい、めちゃくちゃ不安になった。
「みくねえ、怖すぎる」
「うん、今のうちに買い出しとか行っといた方がいいかも」
俺とみくねえは、急いで最寄りのコンビニへ買い物へ出かけた。
ーーーー
「カップ麺が売り切れとる…!?」
みくねえはカップ麺が並んでるコーナーへ行くなり口を空けてそう言った。
「すいませんお客様、カップ麺は先ほど売り切れまして、恐れくZウイルスが不安を煽ったのだろ思われますが…」
「そうですか、ではまた今度来ます」
「はい、またの来店を、お待ちしてます」
みくねえと俺は店を出るやいなや、スーパーマーケットに行ったり、八百屋へ行ったりなどしたが、
「全部売り切れとるわ…」
「そうやね、てかみくねえ」
「何?」
「もしかして大阪おった?」
「そうやけど、何で?あっ関西弁目立ってたか」
「うん」
「って今さほど重要じゃ無いやん、今はこの食糧難をどうするか、このままじゃ、今日の昼飯も食われんで」
「いや、家に非常食が二週間分くらいあるけど」
俺はみくねえにそう伝えた、伝えた、伝えたが、みくねえは、
「えー何でそれ早く言わんとや!」
怒られた、
ーーーー
時刻は午前10時、みくねえの親は色々あって今は施設で暮らしている。ので横島家は今、俺達橋田家が管理しているが、
「母さん、起きて、みくねえと隣の家について話つけよ」
「あっ、うう、母さん頭痛と熱が朝から酷いの、それに背中も少し痛いし」
「母さん!?大丈夫!?」
「あんまり、大きい、声を、出さないで、お母さん疲れちゃう」
息切れしながら必死で伝える母さんに俺はどこか恐怖心を覚えた、
「母さんごめん、ちょっと背中見せて」
「あっ、駄目」
母さんは拒否したが俺はそれを観て驚愕した。
「背中に緑色の斑点!?」
「あっ」
「母さん、病院に行こう?ね?」
「いいのよ、こういうのはゾンビ映画とかでよくあるやつで、私がゾンビになって、この町を、崩壊させていくってやつじゃない」
「じゃあせめて父さんに薬を処方してもらおうよ!?」
俺が母さんに呼びかけるも母さんの背中の斑点はみるみるうちに身体中に広がっていき、あと少しで全身に行きわたるという時だった。
「母さん!しっかりして!ねえ、ねえってば!」
「あなた、逃げなさい、母さんが母さんじゃなくなる前に、ほら、早く」
『ガチャ』
後ろを振り向くとみくねえが部屋に入ってきた。
「ちょっと雅さん!どうしたの!しっかりして!」
「………」
母さんの頬からみるみる熱が逃げていく、まるで命みたいに、
「母さん…」
「涼太くん!兎に角ここから離れよう!ね?」
無論俺は母さんが居なければ生きてはいけないし、生きてるのもつらい、こんな世界に生きてる意味は無い
すると母さんが最期の声を振り絞って俺の頬に手を当てこう言った。
「私はあなたを育てられて幸せだった、あなたは私の宝物よ。血なんて繋がってなくてもいい、だからさあ、早く逃げて」
「嫌だ!俺は母さんと生きる。母さんがゾンビになるなら俺もなる」
俺は泣きながらそう応えた、
「美久ちゃん、この子をよろしく、ごほっ!」
母さんは血を吐いた、いや、血と呼ぶには赤色と緑色が混ざったような、気味が悪い色をしていた。
「美久ちゃん、この子を連れて、逃げなさい、本当の…」
「…分かった、今までありがとう、本当に」
するとみくねえは俺を抱えてこの部屋を出た。
「離せ!俺は母さんと一緒に死ぬんだ!」
「涼太!ごめん!涼太の母さんの最期の言葉だから」
「……」
俺とみくねえが部屋を出たすぐ後に、部屋の奥から一気に腐敗臭がし、想像したくなかったが、事実だということを思い知らされ、俺は腐敗臭と抱えきれない現実に、
吐いた
みくねえの前でみっともない事をしてしまったと思ったが、みくねえは汚れている俺の口を自分の肩に当て、俺を抱きしめ、慰めてくれた。
「辛いよね、泣いていい、泣き止んだら、前を向こ?」
俺は嗚咽混じりの声で泣いた、そんな俺からすればみくねえはもはや母親のような存在だった。
「ガルッ、グルルルル」
ドア越しに狂犬のような声が聞こえた。きっとあれは母さんだ。
『逃げなさい、母さんが母さんじゃなくなる前に』
俺は母さんの言葉を思い出し、みくねえに提案をした。
「みくねえ、考えがあるんだ」
「何」
みくねえの目元が腫れあがっている、みくねえだった人間だ、やっぱり悲しむ事だってあるのだ。
「
「それ私に訊くの?涼太が選べばいいんじゃ」
「俺が選べないから訊いた」
「そ、じゃあ逃げる?」
「えっ?」
「だって私と涼太はきっと涼太の母さんのことを殺せないし、ゾンビだと割り切って殺しに行ったとしても、私たちが無事な保証は何処にもない」
そうだけど、俺もそう思うけど、
「でも、私たちが放っておいたら、私たち以上の犠牲者が出る、違う?」
「そう、だから、やるしか無いんだよ、俺たちで」
俺はみくねえに部屋の外から見張っててもらい、俺は戦うのに使えそうな道具、包丁、マッチ、ロープを手に取り、部屋に戻っていった。
「見つけてきた、で、作戦は?」
「とりあえず、このドアにロープを設置しておびき寄せて、転かす」
「うん」
「転かしたところで、首とか身体中に包丁を滅多刺しにする」
「…うん」
「最後にマッチで火をつけて、この家ごと燃やす」
「大分過激な作戦やね」
結構確実性は高そうだが、この家を燃やすなんて発想は思いもしなかった。だがこうでもしないと倒せないと言うのなら、
「わかった、じゃあ俺が包丁で刺すよ」
だからこそ、自らの手で、母さんを眠らせたい。母さんを人殺しにする前に、
「いいの?全然私がしようか?」
「ううん、こういうのは俺がやってからこそ意味があるんだと思うんだよ、だから俺がやってみる」
「分かった、じゃあそれ以外はせめて私にやらせて」
俺は無言で頷いた、
ロープをドアの入り口の足元に括り付け、
「ありがとう、じゃあやるね?」
「う、うん、お願い」
俺はドアを開けた、するとそこには、ゾンビの姿をした母さんが居て…
いいや駄目だ!俺は
俺が殺らなきゃ誰がするんだよ、
「母さん!戻ってきて!」
俺は大きな声で母さんにそう伝えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます