第7話 枯れ木

妖々しい空の下、天へ上って行く階段。

その頂上には枯れた巨木がそびえ立っていた。


…その前に少女二人いる。

「…カカオ様…。準備が整いました。」

「……そう。…あとは、“空亡そらなき”が連れてきた魂達を取り込むだけね~…」

彼女は怪しげに笑う。


そんな二人の元へ、魔術師マジシャンが降り立つ。

「やぁーやー!二人でこそこそ…何をしているんだい?…俺は省いて」

魔術師マジシャンは彼女達へ鋭い視線を仮面越しに送る。

そんな彼を見つめ、彼女はまた笑う。

「うふふ…だって…あなたに教えたら、邪魔するでしょ?やさしいもの…」

「…………やさしいねぇ~?」

男はのらりくらりと下がり、バンっ…!とその場からいきなり消えた。


「っ!待ちなさい!!」

少女は消えた彼を追おうとしたが、止められた。

「やめなさい…アヤメ」

「しかし…!」

「いいのよ。あの子、一人じゃ何も出来ないわ」

男の動向は追わずに泳がせる。彼女達はそちらより、桜達の魂を優先して動き出した……。




そんな裏で、ソルフィは重い足取りで階段をのそのそと上っていた。

「はぁ…っはぁ…っ…はぁっ…!こんなことなら……もっと、運動しておけば…」

もう何段も上っているが、先が全然見えない。

ただただ、ソルフィの身体に疲労が蓄積ちくせきされるのみだ。

「あぁ~……!!もう…ムリっ!!」

そこに座り込んでしまい…顔を下げてしまった。


「こんな良くわからないところで、なんで私が……!…はぁ…はぁ……はぁ……っ!!も~ッ!!!桜ぁーーーーッ!!!どこなのよ~ッ!!!!!!」

大声を上げた。声が山びこの様に辺りに響いた。

「……はぁぁ…。とりあえず…水分を…」

水蛸ウォーター】を使い、水分を補給する。

そんな、彼女へ何かが走ってくる。

振り向くと、その下から爬虫類の魔物が叫びながら走ってくる…!



「うぉぉぉぉぉおッ!!!どんだけ、長いんだよこの階段!!!!桜もソルフィもいねぇし!!!」

魔物は物凄い形相で走っており、その顔を見たソルフィはまた叫ぶのだった。

「キャァァッー!!ヤモリィィっ!?………………って…あれって…」

落ち着いて、魔物の顔をみると…

「あっ!!~~!!」

嬉しいそうに笑顔で手を大きく振る。

「あ?…ああ~~~!!!ソルフィ~~!!!」

手を振るソルフィを見て、魔物も嬉しいそうに手を振った。そして……


「助けてくれぇーーーーッ!!!」

助けを叫ぶ彼の背後にはかげの様な妖怪達がわらわらと追いかけて来ていたのであった!

その光景を見たソルフィはまた叫び出す。

「イヤァァァァァァァッ!!?!」

さっきまで疲れて座り込んでいたとは思えない程の速さでその階段を駆け上がる!?


魔物もその隣に並び、二人は泣き叫びながら何段もの階段を駆け上がって行く。

「おい!!あいつらどうにかしてくれよ!?」

「むっ、ムリムリっ!!!私、体力そこまで尽きてんのよ!?」

「俺がそんなこと、知るかーーーーッ!?」


二人はテンパっているので私が解説いたしますね。

こちらのカメレオンは『ガメ』の爬虫類態はちゅうるいたいとなります。

いつもの人の姿は擬態ぎたい…に近い状態なんですね~。


ところで…彼がなぜこうなったかと言うと?

さかのぼること数分前…。

ガメくんは一人で階段を上っていました。

「ソルフィ~。桜~」

キョロキョロと見渡しながら、階段を上っていたせいでしょうか?

ズボッ!!と何かを踏みました。

「あ?」


その足下を見ると。黒いドロドロとした液体に足を突っ込みました。

それは彼らの巣だったのでしょう。

「うぇ~…なんだこれ…気持ち悪りぃ~…。」

ガメはその液体をまたいで、トコトコと上って行く。

その後ろから何か物音がしました。

「ん?」

振り向くと、その液体から大量の妖怪達があふれる様に出てきていたのでした。

「……………ぎゃぁぁぁッ!!!!」



そして今に至る。

「ソルフィーーーーッ!!!おまえっ、爆発魔法とか燃やす魔法とかあるだろぉぉッ!!?」

「あれはァーーッ!!私と相性悪いのーーーーッ!!!使った後には吐いちゃうのよッ!!!」

「ソウナンダァァァァーーッ!???」

さぁさぁ、困りましたねぇ…。

困ったガメくんは、とりあえず妖怪達の方を向きます。

「(やるしかねぇぇーーーーッ!!)」

さぁて!ガメくんの技紹介の時間ですよ~~!



彼の体内には毒が流れています。

それを皮膚ひふ越しに爪へ流します。

そして…!

「よっしゃ行くぞッ!!

毒牙どくがッ!!!ざんッ!!】」

腕を思いっきり振り、毒で斬撃ざんげきを飛ばし、妖怪達へ攻撃をする。

効き目は、前列にいた数体を撃破できただけ。

「うぁーーーーッ!!!全然効いてねぇ!!!」

「ガメ!避けてね!!!」

「あ!?」


振り向くと、ソルフィは何処からともなくつえを出して妖怪達へ向けていた。

「ハァァッ!!【氷柱アイスッ!!】」

魔法陣から氷が放たれ、妖怪の大群へと当たった。

当たった所から凍りつき、妖怪達は氷塊ひょうかいの中に閉じ込められた。

「やった!!」

「おー!!」

と…喜んだのもつかの間。


パキッ…とヒビの入った音がした。

二人は声を合わせて「あ」と発して、すぐに階段を上りだした。

その後すぐに氷が砕け、妖怪達はまた二人を追いかけ始めてしまったのでした。

「あぁぁぁぁもうっ!!!駄目だったわ!!!」

「あー……どうすっか……。回り回って冷静になってきたぜ…」

「確かに…」

二人は冷静になってきた。そんな時、ガメはソルフィに聞く。


「そういや…お前大丈夫なのか?」

「へ?」

「いやぁ…お前…体力無いはずだよな…って……」

そこに気づいてしまったか。

「あ」

その言葉を聞いた瞬間、ソルフィは階段を踏み外し、妖怪達へ転がって行った。

「きゃぁっ!?」

「ッ!!!ソルフィ!!」



「(あ…まずい……。これ…終わったわ……。私…妖怪に食われて……)」

周りがスローになった。

手を伸ばすが、届かずソルフィは階段の下へ……。

「(これ…走馬灯そうまとうじゃない…!…どうしよう……さく……)」

「ハァァッ!!【水落としッ!!!】」

その瞬間、その妖怪達へ何かが落下して来た。

ガメもソルフィも急な事に驚いく。

バシャァンッ!!と水が跳ね、妖怪達は一網打尽いちもうだじん


妖怪達はちりぢりに逃げてしまった。

「今のは……もしかして…!!」

ソルフィは目を輝かせた。

あの水しぶきで何が落ちて来たのかは、彼女達なら解りきっていた。

そこに立っていたのは、やはり桜だった。

「大丈夫?ソルフィ?」


「あ…桜ぁー!!!」

泣いて喜び、桜へ抱きついた。

「うぇぇん……あいつら、キモかったよぉ~……」

「あえ?ソ…ソルフィ?」

桜の質問も全無視でソルフィは泣いていた。

そんなソルフィを見て桜はやさしく撫でてあげました。

…ガメくんはその光景を見て癒されたとさ。

「ふぅ~。やっと合流できたな。よかった…よかっ…」


ぽちゃん…っ。ガメの声が聞こえなくなった。

桜とソルフィが不思議に思ってガメの方を向くと…、そこにガメはいなくなっていた。

「あれ…?ガメ?」

ソルフィが桜から離れ、ガメがいた方へ行ってみる。

「消え…ちゃった…」

キョロキョロと探しても…。そこをペタペタと触ってみても……ガメの姿は何処にも無い。

「…ガメ~?…何処行ったのよ~?」


「ッ!!!」

その瞬間、桜へ黒いものが飛び込んで来た…!

桜は反射的に刀を構え、防御していた。

ガンッ!!!金属が当たる音と共に、二人は土煙に包まれる。

「…ぐっ…!(なんだ…!なんか…重いっ…!これは…刀?)」

土煙が晴れた時。彼女の前にそれは姿を表した。

その姿に二人は驚愕きょうがくする。

「なっ…え?……桜?」


二人の目に入ったその姿は…

…桜によく似た、少女だった―。


              続く

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