第4話笑真の家で

夕方、笑真を迎えに行くと笑真は、校門で

待っていた。


「ごめん!遅くなって!」


「いえ、達矢さん忙しいんでしょ?」


「そんな事無いよ」


「あの~」


と言って、笑真が黙り込んだ。


「どうしたの?」


達矢が聞くと


「あの~私の両親と兄が、達矢さんに

会いたいから、是非今日家に来て貰って

って、言われてるんですけど」


「え?いいの?笑真ちゃんは?」


「私は来て欲しいです」


「じゃあ行くよ!」


「はい!」


元気な笑真の返事に、喜ぶ達矢だった。

達矢は、その足で笑真の家に行った。


「ただいま~ママ」


パタパタと音がすると、笑真にそっくりな

キレイな母が出て来た。


「おかえり~笑真ちゃん、この人が?」


「うん」


「初めまして、青柳達矢です」


「良く来てくれたわね、さぁ、上がって」


と母。


「お邪魔します」


達矢はリビングに、案内された。


「もう直ぐ、パパと真吾も帰って来るから

それ迄、ジュースでも飲んでようか?」


「うん、ママ」


「ありがとうございます」


母がジュースを、持って来た。


「どうぞ」


「ありがとうございます」


何だか、ウキウキしながら座る母。


(笑真ちゃんの、お母さん何だか凄く

嬉しそうなんだけど、どうしたのかな?)


達矢は思っていた。


「あのね~笑真ちゃんが、家に人を連れて

来るの始めてなの、もう私嬉しくて」


(あ~そう言う事か)


「いえ、こちらこそ、ありがとうございます

僕は少し緊張してます」


笑真は、そんな達矢の言葉に


「フフフ」


と笑う。


「笑真ちゃん、何が可笑しいんだよ?」


「だって~達矢さん、何時も俺って言うのに

僕って言うから」


「あ!でも笑真ちゃん、今笑ったよね?

そうやって笑えるじゃん!やった!

それを沢山、増やして行こうよ!」


「あ、はい!」


2人の、やり取りを聞いて見ている母は

胸が熱くなるのだった。

そして


「「ただいま~」」


父と兄が帰って来た。

リビングに来ると


「いらっしゃい」


「お邪魔してます、僕、青柳達矢です」


「そう緊張しなくて、いいよ!リラックス

して」


「そうだよ!疲れちゃうぞ!」


と父と兄。


「みんな揃ったから、夕飯にしましょう」


母が夕飯の用意をしてくれた。

みんなで食卓を囲んで


「いただきます」


食事をし出すと、父の健吾が


「達矢君、1つ聞きたいんだか?」


箸を止めて達矢は


「はい!何でしょうか?」


「どうして、君みたいな好青年が家の

笑真を?君は普通にモテるだろう?」


「みなさんには、笑われるかも知れませんが

昨日、初めて会って笑真ちゃんの遠慮

がちな態度、話し方が僕には可愛いくて

一目惚れしました、学校で告白された事も

有りますけど、笑真ちゃんへの感情は

初めて抱く物でした、僕は笑真ちゃんの

目や杖になって、笑真ちゃんを支えたいん

です!」


力強く語る達矢に、笑真も家族も驚いて

いた。


「でも達矢君、支えると言っても大変だぞ?

君には、まだ将来が有るんだから」


(そうだ、達矢さんには、この先沢山の事が

出来る明るい未来が有るんだ、私なんかの

為に無駄に、させては駄目だ)


笑真は思っていた。

それでも達矢は


「はい!笑真ちゃんのお陰で、将来やりたい事が見付かりました!」


「え?私のお陰?」


「うん!そうだよ、笑真ちゃんのお陰だよ!

僕は高校は、都内トップの進学校に入り

大学は医学部を目指します!そして医者に

なって、僕がこの手で笑真ちゃんの目を

治します!」


「「「えっ!」」」


全員から声が漏れた。


「達矢君、笑真の目を治すと言っても」


不安そうに、父が尋ねると


「僕は今、色々調べて居ます、決して

治らない病気では有りません、ただ

手術が成功しても、開眼してからの

治療が大変です、それは側で支える人が

必要だと思っています、僕は笑真ちゃんに

寄り添って、いつか笑真ちゃんの笑顔が

見れる様に頑張りたいんです!」


「それは駄目です!達矢さん」


「どうして?笑真ちゃん」


「あなたの大切な人生を、私なんかに

勿体無いです!」


「ほら又、そうやって自分の事を悪く言う

それは笑真ちゃん、駄目だよ!君は何も

悪く無いんだから、堂々と生きなきゃ!」


「でも~」


2人の、やり取りに父は


「達矢君、気持ちは本当に有難い、でも

私も笑真と同じ気持ちだよ!君には沢山の

可能性が有るんだからな!」


「いえ!僕は決めたんです!どうか許して

見守ってください!お願いします!」


頭を下げる達矢。

父、母、兄は目を合わせる。

みんな内心は嬉しかった。

大切な笑真を、そんなに思ってくれる達矢の

事が、本当に有り難かった。

母の沙羅が、父の健吾に、指でO.K.の

ポーズをする。


「よし!分かった!じゃあ笑真を頼んだぞ!

そして何か困った事が有れば、何時でも

言ってくれ、力になるから!」


「本当ですか?ありがとうございます!」


「まぁ~ママに、こんな素敵な息子が

1人増えるのね~やった~嬉しいわ」


相変わらずの母を睨む、父と兄。

そして兄の真吾も


「俺に、こんな立派な弟が出来るとは

俺も負けずに頑張らないとな!達矢君

俺も医者を目指して居るから、待ってるよ!」


「そうなんですか?はい!必ず着いて行きます!」


1人、取り残された笑真は


「達矢さん、本当にいいの?私で?」


「勿論!笑真ちゃんだから、いいんだよ

僕を信じて着いて来てね?」


「はい!」


笑真は心で笑った。


「笑真ちゃん?今、心で笑った?」


「うん!」


その、やり取りに父、母、兄は、この2人の

出会いは偶然では無く、必然だったのかも?

と思うのだった。

そして達矢は、楽しい食事を済ませて

帰る事になった。


「ご馳走様でした、笑真ちゃん明日迎えに

来るからね」


「うん」


「達矢君、何時でも遊びにおいでよ」


「そうだよ、待ってるよ」


「ママは毎日でも、いいからね~」


と、お茶目な母。


「ハハハ、ありがとうございます!」


そう言って達矢は帰って行った。

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