第7話 ぼっちと班決め

臨界学校→校外学習に変更いたします。

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「陽野森もこっち側なんだな」


「このイベントに関しては」


 普段の私なら校外学習にはっちゃけてるとは思うけど、吸血鬼となった今は何かしらの弊害に怯えて素直に喜べない。それに、臨海学校の後にはおそらく期末テストが控えている。先生曰く“例外”の私に行事を楽しんでる暇はない。


「お前たち鎮まれ!そんでだが、今日は行事の詳細を説明した後、クラスを四人班に分ける班分けを行う」


 先生がそう発言すると、クラス中から「俺と同じ班になろうぜ」だとか「私と一緒に組もう」とか騒がしい声が聞こえてくる。伊月も私の方を向いてしきりに指をピンピンさせてくるのを無視していると、隣で小杉くんがガタガタと震えているのが見えた。


「わかるよ。小杉くん友達いないもんね」


「直球で言うなよ……」


「仕方がない。私の班に入れてしんぜよう。どうせ男女比1:3のハーレムになって居心地いいでしょ?」


「陽野森に対しては特になにも感じないかな」


「ひっど!!」


 せっかく私がご好意で入れてあげようと思ったのに!

 まあご好意というか、小杉くんには私と同じ班に入ってほしいのは事実なんだけど。


 ホーキ……優子ちゃんに擬態と直射日光への耐性をつけてくれたのはいいけど、正直どんなことが待ち受けてるのかはわからない。吸血鬼の体質は分からないけど鎌倉は海の近くだし、観光気分で海に入ったら体が縮まるとかあるかもしれないし。とにかく近くに私の事情を知ってる人がいてくれた方が心強いから。


 と、前から校外学習のしおりが回ってきた。私はこれを熟読する。


 ええと、なになに?班ごとに別れて鎌倉の歴史探訪。ルートも自分たちで決めるらしいね。


「では、これより組み分けを始める。男女誰でもいいから四人組の班を作ってしおりの班ページの諸項目を記入してくれ。終わり次第HRは解散だ」


 先生の号令と同時に生徒たちが立ち上がり、クラス中を移動し始めた。私と小杉くんは座ったままだけど。

 おっと男子はやはり木野森さんのところに群がってるな。私と一文字違うだけでクラスのマドンナとか呼ばれてる都合のいい女だ。やはり男子にとって見た目が一番らしい。


「こーうーたー!!!なんで無視するのー!?」


 そう考えてる間に涙ながらに体育着姿の伊月が、校庭でなら砂埃を巻き散らしそうな勢いででやってきた。やめ、伊月は私の肩をゆさゆさと……


「ごめん鬱陶しかったから」


「えーーーーー」


「まあうんでもこれで三人だね」


「三人?」


 私は隣の机で蹲っている小杉くんを指さす。


「おー!小杉っちも入ってくれるんだ!」


「え?うん……まあ……はい」


 さすが男女分け隔てなく仲良くできる生粋のギャル伊月。全く話したことのない小杉くんにも初っ端からあだ名で歓迎してくれる。対する小杉君はフレンドリーすぎる伊月にたじろいでいるみたいだけど。


「じゃあ後一人だねー」


「私、適当な人誘ってくるね」


 私が立ち上がろうとすると、小杉くんが私の制服をちょんちょんと引っ張る。


「本当にハーレムにするつもりなの!?」


「別に小杉くんのお友達誘ってもいいのよ」


「ぐっ、痛いとこを……」


 珍しく私に論破されてる小杉くんは見ていて楽しい。

 仕方ない。ハーレムもラノベっぽくてありかもしれないが、小杉くんをハーレム主人公枠に置くにはヘタレすぎるかな。私たちが仲良く鎌倉観光している後ろで一人寂しく歩いている小杉君は見たくない。なのでハーレムは諦めて、ここはちょうどいい人員を……いた。


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