第6話 髪飾り
女の子が、この集団に混ざらず泣いている。廊下の奥、トイレの前あたりだ。なんで、泣いているんだろう。
「……、っ。ねぇ!! 貴方はトイレの花子さん!?」
声を張り上げ聞いてみたけど、反応がない。聞こえていない? もう一回!!
「花子さんじゃなかったらごめんなさい!! トイレの前にいる女の子!! 君!! なんで泣いているの!?」
はぁ、はぁ。叫びすぎて喉が痛い。でも、聞こえたみたい。やっと顔を上げて、私達の方を見た。
「え、可愛い」
「今言う事か」
花子さんかなと思われる少女の顔がものすごくかわいい。クリクリの大きな両目、赤い唇。
なんで、こんな可愛い子が泣いているのだろう。なにか、あったのかな。
「きみ!! なんで泣いているの!? 教えて!!」
聞くと、花子さんもどきが足を動かさないで私達の方に近寄ってきた。
浮いている? なんか、それはちょっと怖い。
四方にいる七不思議達は、花子さんもどきが近づいて来たことにより静かになってくれた。
『私は花子。探して、ほしいものがあるの』
「え? 探してほしい?」
透き通るような声が頭に直接響く。これが、花子さんの声? 鈴が鳴っているような、素敵な声。
『私の、大事な髪飾り。お兄ちゃんがくれた、赤いお花の髪飾り。私の、一番の宝物……。探して』
「髪飾り……か。わかった、一緒に探そう?」
結界の中で手を伸ばすと、花子さんが涙を止めて目を丸くした。
私の返答が信じられなかったのかな。聞こえなかったとかはないと思うんだけど……。
「私でよければ一緒に探すよ。大事な物なんだもんね?」
花子さんが私の言葉に小さく頷いた。
よし、もう大丈夫だろう。周りの七不思議達も結界を叩くのをやめているし、今なら解いても問題ないはず。
静稀と目を合わせると、私と同じ考えだったみたいで頷いてくれた。
「
手を横に動かすと、私達を守っていた結界はスッと消えた。
周りの七不思議達は結界が消えたことに気づくも、私達に襲いかかる気配はない。良かったぁ。
あ、花子さんが私達の前に降りて来た。
空中を飛んでいたから分からなかったけど、結構小さい。私の身長が155なんだけど、そんな私の胸辺りの身長。
茶色の目で私を見上げて来る、可愛い。
「どんな髪飾りなのか、教えてもらってもいいかな?」
『お花。このくらいのお花と、このくらいのお花が二つ付いているの。色は赤』
花子さんは身振り手振りで、一生懸命教えてくれた。
手のひらサイズの花と、一回り小さな花が付いた赤い髪飾りか。確かに花子さんに似合いそう、赤色。
「何をした後に髪飾りが無い事に気づいたの?」
『二階で、人体模型と鬼ごっこしていた時』
「それは今日?」
『ううん、四日前』
四日前かぁ……。意外と時間が経っているな。それだと、誰かに拾われたとかもありそう。
花子さんの所持しているものだから、普通に廊下とかに落ちているとかは考えられないけど。
『ずっと、ずっと探しているの。でも、見つからない。どこ、私の宝物』
あ、あぁ。また泣き出しちゃった。そんなに大事な髪飾りなんだ、それなら絶対に見つけてあげたい。
今日見つからなくても明日とか、明後日とか。絶対に見つけたいな。
「安心して、花子ちゃん。私達も一生懸命探すから。数日かかっても、見つかるまで必ず探すから。だから、顔を上げて。可愛い顔が台無しだよ」
顔を上げさせて、涙を指で拭いてあげる。ハンカチなんて言う女子力の高いアイテムは持っていないから仕方がない。
持ってくればよかった、花子ちゃんの目が赤いよ。
「それじゃ、花子ちゃん。これから学校の中を探そうと思うんだ。一緒に来てくれる?」
手を差し出すと、少し戸惑った末、花子ちゃんは私の手を握ってくれた。よしっ!!
「それじゃ、これから花子ちゃんの髪飾りを探そう大作戦実行だよ!! 全力で探すよ!! ね、静稀!!」
「ここまで来たからにはやるしかねぇか。俺も協力する、一緒に見つけような」
花子ちゃんの頭を撫でる静稀。優しく撫でてあげているからか、花子ちゃん目を細めて嬉しそうに笑ってる。
「それじゃ、まずは上から探そうか。二階に行こう!!」
「はいはい」
『うん』
絶対に見つけるぞ!! 花子ちゃんの髪飾り!!
※
ふーん、花子の髪飾りを探してあげるんだ。こんな人、今まで見た事がない。
まぁ、普通の人は結界を張って時間を稼ぐなんてこと、出来る訳ないから当たり前なんだけど。
それとは別に、花子があそこまで人間に懐くのも珍しい。いつもは人間の前にすら姿を現さないのに。
今回は何でトイレから出てきたんだろう。そこもまた気になるなぁ。
『あの子達、面白いかも。特にあの女の子。いいなぁ、僕の物にしちゃいたい。ふふっ』
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