七不思議
第5話 命の危険
鏡から離れて一階に移動。よし、階段を降りる事は成功だ。
廊下の先を見ても、暗いだけで何もない。このまま普通に抜け出すことできるんじゃないか?
「気配が気持ち悪いな」
「気持ち悪い? どういう事?」
「俺達を外に出さないようにしているのか、気配がどんどんこの廊下に集まっているような気がする」
「それって、まずくない?」
「非常にまずい。このままだと、俺達はマジでこの学校から出られなくなる可能性がある」
「…………マジで?」
「マジです」
や、やばいじゃん。早くトイレまで行って、外に出ないと――……
「っ、美波!!」
「え、うわっ!!!」
視界が回ったかと思うと、静稀が私を脇にだき抱えていた。何が起きたの?
「え、何、あれ…………気持ち悪い!!!」
「確かに、あれは気持ちが悪い」
あれって、理科室にある人体模型だよね? 階段の一段目に立ち私達を見てきている。右手を前に出しているところを見ると、もしかして私を掴もうとしていた? だから、慌てて静稀が私を抱えて距離を取ってくれたのか。
「ありがとう、静稀」
「警戒を怠るな」
床に下ろされ、人体模型を見る。ここで視線を逸らしてしまえば、私達は何されるのかわからない。
どうにか、人体模型に襲われずに済む方法を探して、ここから逃げないと。
「――――ん?」
後ろから、なんか。嫌な気配を感じる。
振り向きたくない、見たくない。でも、見ないといけない。見ないと、逃げられない。
ゆっくりと、振り向く。その時私は、学校に侵入したことを、酷く後悔した。
廊下には、道を塞ぐほどの化け物が集まっていた。
音楽室のベートーヴェン、紫色のおばあちゃん、美術室のモナリザ、学校の外にあったはずの二宮金次郎像。
これは一回、後ろの階段にもどっ――
「だ、だめだ」
人体模型が居るのを忘れていた。それと、階段が、うごめいているようにも見える。
この階段、もしかして、十三階段……??
「静稀、これは」
「あぁ、やばい」
お互い背中を合わせ、じりじりと近づいて来る化け物達を見続けるけど、どうする事も出来ない。
終った、確実に終わった!!! これだったら異世界に招待してもらえばよかったよ!!
「ひっ、ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああ!!!!」
一斉に襲ってきたぁぁぁぁぁぁぁぁ!!
「っ、結界!!」
「……ほえ?」
透明な膜が私達を囲うように出現。隣に立つ静稀が手にお札を持って、七不思議達を見ている。目が赤い、力を使っている証拠だ。
静稀は法力を使う時、体内にある力が溢れ、目が赤くなると聞いた事ある。
「大丈夫なの?」
「長くはもたない」
四方から迫りくる七不思議達。
結界を壊そうと沢山叩いてくるから、ゴンゴンと。頭を殴られているような音が響いて、頭痛がしてきた。は、早くどうにかしないと。
「静稀、どうにか出来ないの!?」
「……………………結界張るので精一杯だ。七不思議に浄化が効くかわからないし、どうしようか」
ん? さっきまでの焦りが静稀から感じない。なんか、余裕そうじゃない?
ん? 上を気にしてる? もしかして、上にも何かいるの!? 私には何も見えないけど、静稀には見えるって事!? 今以上に脅威が増えたら何もできないよ、打つ手なしだよ……。
――――いや、まだある。
異世界への招待人は人の話が通じた。もしかしたら、話を聞いてくれる七不思議がここにもいるかもしれない!!
「あ、の。貴方達は何がしたいの? なんで、学校をさ迷っているの?」
結界の中から声をかけてみるけど、何の反応もない。結界を叩く音のみ。
聞こえていないのか、それとも通じないのか。もう一回声をかけて確認する!!
「すいません!! 貴方達のやりたい事はなんですか!? 少しは手を貸せるかもしれないので教えてください!!!」
お腹から声を出す事を意識して、もう一度聞く。すると、七不思議達が動きを止めた。やっと、声が届いたのかな……?
……………………沈黙。何? 何が起きるの?
え、なに。なんか、さっきまでと雰囲気が変わった……?
ッ、ウアアアァァァァァァァァァ!!!!
「ひっ!?!?」
さっきより強い勢いで結界を叩き始めた!? やばいやばい!! 壊れる壊れる!!!
「おい、こいつら日本語通じたのか?」
「わかんない!! でも、通じたんだったらなんで暴れ出したの!?」
「偽善者ぶるなぁ!! みたいな感じか?」
「ごめんなさい!!!! 助かりたかっただけなんです! 助けてほしくて偽善者ぶりましたすいません!!!!!」
助けてお願い、本当に助けて!!!!
「ヒィィイイイイイ! っ、て、あれ……」
七不思議達の後ろ、少し離れた所に一人の少女。誰もが知っているであろう赤い、おかっぱの少女が、泣いている?
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