16 【本当の神話】
【本当の神話】
殺風景な世界を寂しく思った神様は、山や川などの美しい自然を形作りました。
さまざまな動物を作った後、人間が作られました。
神様は、五人の人間の背中に、星々の光と雲の綿できた翼を二対つけ、それらを天使と名付けました。
五人の天使様はそれぞれの役目を背負って、神の名の下にあらゆる銀河を納めていました。
その中に、死者の魂を天に導く役目の天使様がいました。
その天使様は人間が大嫌いでした。
その天使様は神様のことを何よりも愛していました。
そして、自分の愛と同じぐらい、神様の愛をもらう権利があると思っていたのです。
しかし神様が最も愛しているのは人間でした。
天使は人間のために生み出された存在に過ぎません。
天使様は神様の愛を得る為に、極上の魂を見つけては神様に贈りました。
その度に神様は天使様を叱り、魂を地上に戻しました。
「まだ寿命の残っている善人」の魂を刈り取ってしまうことは禁止されています。
天使様の仕事は、天に召すべき魂だけを天に導くことです。勝手なことは許されません。
天使様は考えました。「まだ寿命の残っている善人」だから駄目なのだ。
極上の魂の人間を、罪人にして仕舞えばいい。
天使様は、目星をつけた人間の望みを叶え、「天使を脅して望みを叶えさせた」という罪を着せて魂を刈り取るようになったのです。
それから・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・。
神話を語る声は、グレーから離れていき聞こえなくなった。
「今の声は、一体・・・」
老爺はめまいを引き起こしているグレーに声をかける。
「それはお前の欲している答えじゃよ」
老爺はグレーの瞳を真っ直ぐに貫いた。試しているようでいて、それでも穏やかな色を湛えていた。
神話が、自分の探していた答え?
グレーは意味を理解しようとして頭を掻き乱した。
「・・・まさかとは思うが、スカイは天使に騙されて罪人となった、だから魂を刈り取られる。そう言っているのか?」
その時、あの夏の日に一緒に寝転がった草原の匂いを思い出した。
『こうしてやっと君に会えたのも、天使様のおかげだ』
ふざけるな、天使なんていないんだ。お前らみんなして、俺を騙しているんだろう。そうやって俺のことをバカにして嘲笑っているんだろう。グレーは怒鳴り散らした。頭がおかしくなりそうだった。
「もう宗教狂いの御託はいいから、スカイを助けてくれ!」
グレーは深々と頭を下げる。老爺は水晶を覗き込みながら、言った。
「わしらは医者じゃない。お前がなんとかするしかないのだ。ここではヒントを与えることしかできん。まあ待て、水晶を見てやるから」
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