幽世世界を立て直す 閉幕
「北風。いいか、神格じゃなくてマジの神にあった時には一つの事だけを考えろ。何もされず帰る為なら戦うな」
「頭が割れそうっス……!はいっス!!」
「俺がいる。大丈夫だ落ち着いて走ってくれ」
暗闇の中で長居したら発狂しそうだ。
「キイィイィィィィ!!!!!」
金切り声を上げて追いかけている。
提灯の影を作り、手を伸ばす。
「幻覚──だな。身体的なダメージよりも精神の方が強いなら、北風の治療をすれば良さそうだな」
「ご主人、魔力使って走っても良いっスか!?」
「勿論だ!」
北風は足に力を込め、体を低く構えた。
彼の眼光は鋭くすると一気に身を起こし、大地を再び蹴る。
瞬間、風が北風の周りを巻き起こす。
北風の髪は舞い上がり、衣服も風に煽られて揺れ動く。
風の音が耳を刺激し、周囲の景色が一瞬にして通り過ぎていく光景が目に映った。
「……白い霧の向こうが鳥居。アレだな」
「見えたっス!」
蜘蛛の作り出した霧、蜘蛛の霧を超えて鳥居をくぐる。
北風は膝をついて俺を下ろしてくれた。
「ありがとな。ご飯食って、風呂入って……寝て…………家に帰ろう、な」
強い倦怠感に襲われ、目を瞑った。
■■■
「………………」
「あわあわ〜、もこもこ〜」
「
「ご主人が起きた! ご主人〜!!」
「ゔぁっ、ちょっ、ちょっと待て待て風呂場かここ!?」
自宅の浴室だ……びっくりした、自宅のソファで起きるかと思ったのに。
運ばれて風呂に入っているのか?
「北風。戻って、これたのか?」
「帰って来れたっスよ。起きてよかったっス」
「のぼせそうだから一度水を飲みに行ってくる」
脱衣所の鏡を見る。
怪我をしたら痛い、夢の中ではない。
本当に帰って来れた。
はぁーー、とため息をついて脱力する。
「帰って来れたのか。本当に……死ななくて良かった」
「ご主人、お風呂入ってキレイになったらご飯食べたいっス」
「逆じゃないのか? ……まぁ、良いけどな」
浴室の椅子に座って北風の髪を洗う。
よく見れば長い髪だよなー、とか綺麗でサラサラになるのかー。とか浅い考えを浮かばせながら洗っている時が楽しい。
「北風、無事でいてくれて本当に良かった。お風呂終わったら美味しいご飯作るから思いっきり脱力してくれ」
「そんなぁ〜、幸せすぎるっスよ〜」
「尻尾も綺麗にするからな。偉いぜ〜、今日はたくさん頑張ってくれたからな」
「えへへ」
泡を洗い流す。一瞬だけ見える泡が無くなった北風のしょんぼり顔が面白くてたまに覗き込んでしまう。
……予想通りのしょんぼり顔で笑みが
「体乾かして飯食うぞ。雨読のくれた米使って美味いお茶漬けを食べよう、な?」
「はいっス」
■■■
──リビング。
ダークウッドの壁に赤いソファ。下絵の描かれたキャンバスとイーゼル。
落ち着いた雰囲気の部屋の床に、大量の手紙が落ちていた。
「……何だよコレ」
「心配すぎてあいつが手紙を投げまくってたっス。自分が起きたので大丈夫って言ったんスけどね」
「今度声を掛けとくぜ。できたぞ、梅茶漬けだ」
北風が食べている間に落ちていた手紙を一通開ける。
どれどれ。
──兄さんへ。体調を崩したと聞いていたので手紙を送ります。
起きたらで良いので、いつもの『シルク邸』でお待ちしています。
1人で来て欲しいです。体調が改善される事を祈っています。
「シルク邸ってどこだっけか?」
「仲間全員の集合場所っスよ。緊急時にしか使わない場所っス。走り回りやすくて綺麗な部屋もあるんスよ!」
「へぇー、そんな場所が……明日にでも行ってくるか」
「今日はぐっすり寝ましょ!もっふもふボディを抱き枕がわりに使えるっスよ!」
ご馳走様でしたと言うと、寝室の扉を開けて布団に包まった。
北風が寝室の扉を閉めると、おやすみなさいと声を掛けてくれた。
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