蜘蛛の意図①
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「ご主人!ご主人〜!!」
元気で眩しい彼の声だ。頭を膝に置いてくれたんだろうか、柔らかい髪が当たってくすぐったい。
自然の匂いだ。木々が育った光が差している。
「森……もうどんぐりが育ったのか?成長期だな……」
「ご主人、寝ぼけないでくださいっス!めっちゃ心配したんスよ〜!?」
「北風はいい匂いがするな。お布団の匂いだ……」
「もぉ〜〜!!そのまま寝てたら牛さんになっちゃうっスよ!!起きてくださいっス!」
朝に弱いのに叩き起こされた。──機嫌が悪くなりそうだ。
俺の魔力を吸って急激に成長したのか?全部……持ってかれたのか。
辺り一体砂漠だったのが森と芝に埋め尽くされている。
『この木 何の木、気になる木ー』と歌いながら好きなだけ走り回れそうだ。
「幽霊と供鳴達が手伝って中心街に町ができてきてるんスよ〜!何だかかっこいいっスよ」
「凄いな……」
「早く行くっスよ〜!」
俺の体を抱えて神ノ塔に向かう。
激しく揺れる体に吐き気を誘われたが必死に耐えた。
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繁華街の一角には、伝統的な
歩道には石畳が敷かれ、足音が響き渡る中、幽霊達は新しい建築物を作ろうと交差していた。
「文化村っぽい感じがするが……どこか今っぽさを感じるな」
「ご主人、服も変わってるっスよ」
「織物だな。ほんの数分でこんな変わる物なのか?」
──”住民達の未練を動かしてみたのです。凄いですね。まだ勢いが止まっていませんよ”
白塚に目線を向けると、抹茶をくれた時よりも衣装が煌びやかだ。
和服の要素を取り入れつつ、現代的なデザインや素材が入っている着物。
白に淡い黄色や赤、緑の花柄が入り、冬どけの中で四季を感じさせてくれる。
「本当に凄いな……『住めば都』って単語が似合いそうだ」
「ご主人、これなら『転生跡の先の杖』を作ってくれるんじゃないんスか!?」
「いや──もうちょっとだな。文化が惜しい。通貨と文字、後は勉学をちょっとだけ欲しい。北風!端材と木の枝、木屑を集めてくれ」
「何を……あ、なるほどっス。任せて下さいっス!」
「素材が集まったらすぐに作る。──さぁ、商売を始めるぜ」
胸ポケットに閉まっていた箱を取り出し、中に入っていたタバコに火をつけた。
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