蜘蛛の意図①

■■■

「ご主人!ご主人〜!!」


 元気で眩しい彼の声だ。頭を膝に置いてくれたんだろうか、柔らかい髪が当たってくすぐったい。

 自然の匂いだ。木々が育った光が差している。


「森……もうどんぐりが育ったのか?成長期だな……」

「ご主人、寝ぼけないでくださいっス!めっちゃ心配したんスよ〜!?」

「北風はいい匂いがするな。お布団の匂いだ……」

「もぉ〜〜!!そのまま寝てたら牛さんになっちゃうっスよ!!起きてくださいっス!」


 朝に弱いのに叩き起こされた。──機嫌が悪くなりそうだ。

 俺の魔力を吸って急激に成長したのか?全部……持ってかれたのか。


 辺り一体砂漠だったのが森と芝に埋め尽くされている。

『この木 何の木、気になる木ー』と歌いながら好きなだけ走り回れそうだ。


「幽霊と供鳴達が手伝って中心街に町ができてきてるんスよ〜!何だかかっこいいっスよ」

「凄いな……」

「早く行くっスよ〜!」


 俺の体を抱えて神ノ塔に向かう。

 激しく揺れる体に吐き気を誘われたが必死に耐えた。

■■■

 白樺シラカバの木で表現された江戸時代の風情ふぜい

 繁華街の一角には、伝統的な木造建築もくぞうけんちくが見られ、屋根瓦やねがわらの美しい曲線が街を彩っている。

 歩道には石畳が敷かれ、足音が響き渡る中、幽霊達は新しい建築物を作ろうと交差していた。


「文化村っぽい感じがするが……どこか今っぽさを感じるな」

「ご主人、服も変わってるっスよ」

「織物だな。ほんの数分でこんな変わる物なのか?」

──”住民達の未練を動かしてみたのです。凄いですね。まだ勢いが止まっていませんよ”


 白塚に目線を向けると、抹茶をくれた時よりも衣装が煌びやかだ。

 和服の要素を取り入れつつ、現代的なデザインや素材が入っている着物。

 白に淡い黄色や赤、緑の花柄が入り、冬どけの中で四季を感じさせてくれる。


「本当に凄いな……『住めば都』って単語が似合いそうだ」

「ご主人、これなら『転生跡の先の杖』を作ってくれるんじゃないんスか!?」

「いや──もうちょっとだな。文化が惜しい。通貨と文字、後は勉学をちょっとだけ欲しい。北風!端材と木の枝、木屑を集めてくれ」

「何を……あ、なるほどっス。任せて下さいっス!」


「素材が集まったらすぐに作る。──さぁ、商売を始めるぜ」

 胸ポケットに閉まっていた箱を取り出し、中に入っていたタバコに火をつけた。


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