第8話 禁じられた聖域【ロスト・チャイルド】
黒死焔山はセィラの首元に銀剣を当てがっていた。眼の前には、白い、ハウス状の建物。グノーシス中央聖教会がある。目視は出来ないが、教会の周りには悪魔払いの結界が貼られていた。至高のアイオーン【プロパトール】の加護を借りて貼られたこの結界は、焔山にも容易には突破できない強度を誇る。焔山が、魔性解放を果たしたなら、また話は別なのだろうが。焔山が、舌打ちをする。
(強固な結界だ。まさかこの俺がこんな手段に訴えなければならんとは……。保険を連れてきて良かった)
セィラの首に、銀剣を押し込む。銀剣と触れ合った肌が裂ける。血が白い肌を垂れてゆく。
焔山は、叫んだ。あらん限りの、大声で。
「貴様ら! 聖女を見殺しにする気か! 音に聞こえたグノーシス中央聖教会の信仰心とはその程度のものであったか! 悔しかったら、結界を解け! 解かなければ、聖女を殺す。八つ裂きだ」
焔山は、我ながら無茶な要求をしていると思った。一人の聖女の為に、悪魔払いの結界を解くとは正気の沙汰ではない。だが、勝算もあった。このセィラという少女の守護天使は、相当格が高いと見える。これほどの霊格を備えた守護天使を持つ聖女は、長く聖女を狩ってきた焔山も見たことがなかった。おそらく、地上で1、2を争うレベルの聖女だろう。その聖女を、むざむざと見殺すとも思えない。
(おそらく結界を解くはず。そして聖女の身柄を確保した上で、俺を殺しにかかるはず――)
果たして、結界は開かれた。焔山が肌に感じていたひりつくような圧力が、消失する。セィラが、安堵の涙を流した。焔山の突然の凶行に、ずっとぶるっていたのだ。股が、濡れている。
焔山は、セィラを連れて、白い、ハウス状の建物――東京ドーム15個分の土地面積――グノーシス中央聖教会に、足を踏み入れた。
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