5、こんな所で二択!?

ガシッ!!


「おっす!」


「か!珂玖弥先生!!お、おはようございます!!」


入学してから、3ヶ月、私と珂玖弥先生との関係は、秘密裏に続いていた。今日は、何故か、スクランブル交差点で、頭をつかんで現れた珂玖弥先生。


「彼氏は出来たのか?」


「え?」


私は、びっくりした。何を言ってるの?今更。…と言う顔をした(らしい)。


「冗談だ。ゆくぞ」


「はい?でも、信号、まだ赤…」


そう言う前に、いつかのように、裏路地に私の腕を引いて、私を朝の暗闇にいざなう。先生は、夏服になって、ブレザーの要らなくなったワイシャツとネクタイをスルンと脱がした。


「せ!先生!ここでは、さすがにまずいですよ!!」


「じゃあ、選ばせてやる。ここでするか、もう2度と、私としないか」


「そんなの…!!」


「…そんなの?」


「くちづけ…してください…」


(先生…絶対どSだ…)


私は、裏路地で真っ裸にされて、下半身を撫でられ、胸を揉まれ、くちびるは最高のくちづけをされ、もう…天国にでも来たかと思った。


「あ…ん…あん…うん…はぁ…や…ん」


高校生が出す声か?でも、気持ちいいんだから仕方ない。そうして、3回目のセックスを、(路地裏とはいえ)街中でされ、地面には、少し小さな水が溜まっている。


「私…またノーパン…ですか?朝なんですけど…」


「お前が望んだことだろう」


不敵に、珂玖弥先生が笑う。そして、


「じゃあな。先にゆくぞ。しかし、お前の胸はでかくて揉み甲斐ある」


「そっ!そんな恥ずかしいこと言わないでください!!」


慌てて、ブラジャーを付け直し、スカートをなるべく下げて、ノーパンを隠す。


(風…吹かないでよ!?)


祈る、莉子。




その日も、リーダーの授業を、内股で聞く莉子。スカートを股に挟む。朝からむらむらさせられたせいで、抜群だった成績が、この前のテストでは、多少、落ちてしまった。いつも、成績が良いのは、リーダー以外。もう、最初は、珂玖弥先生に褒められたいと、一生懸命だったが、今は、珂玖弥先生を見ると、欲情してしまうので、授業も、まともに聞いてないし、先生の方も見ない。



「ねぇ、莉子ちゃん」


「ん?なに?麗奈れなちゃん」


「莉子ちゃんて、管野先生のこと嫌いなの?」


「へ?なんで?」


何にも動じることなく、莉子は、質問に質問で返した。


「だって、あんなに真面目な莉子ちゃんが、リーダーの授業だけは成績…ってこれ失礼だけど…」


「あぁ…ただ単に、英語が苦手なだけ。別に、何でもないよ」


あんなに最初はオドオドしていた莉子が、なんの経験からなのか、大人になっていると、クラスメイトの女子は特に感じているようだった。


そこに、ある核心をつく女子が現れた。


「ねぇ、莉子ちゃん、彼氏いるの?」


「え?」


自分には、何となく関係ないことだと思っていたから。高校に入学したその日のうちに、ガールズラブに目覚めた莉子にとって、その質問は意味をなさない。


「いないよ」


「えー?本当?なんか、入学式から見てるけど、可愛くなったし、身支度乙女全開だし、お化粧もしてるよね?なんか、日に日に可愛くなってる気がするよ?」


「そんなことないよ。でも…」


言いかけて、莉子は口をつぐんだ。


『すきな人はいるよ』


そう言いかけたのだ。


『恋は、隠してなんぼでしょ』


珂玖弥先生に出逢った日に、言われた言葉を思い出したのだ。


「でも…何?」


女子達の視線が集まる。


「お…女の子としては、少しでも奇麗でいたいじゃん?自分磨きは、してるつもり」


「へー…自分磨きかぁ…。なんか大人~」


数人の女子が、うんうん、と頷いた。何とかかわした莉子は、心の中で深呼吸をした。



そう言い聞かす莉子。バレたりしたら、幾ら女同士でも、生徒と教師には変わりない。こんなうぶだった、あの日まで、初めて珂玖弥にキスされから、余りにも急激に珂玖弥に惹かれた。そして、くちづけと、3回のセックス。それが、なくなるなんて、もう考えられない。かなりの珂玖弥依存だ。


その反面、心は、揺らいでいた。先生はいつも余裕の表情と態度。莉子の体にはやりたい放題なのに、自分の体は一切見せない。只、くちびると、指先で、莉子を絶頂に持ち上げる。何とも、慣れていらっしゃる。それを考えると、今までたくさんの女の人としてきたんだろうな…と、珂玖弥に少し理不尽な怒りを…嫉妬を覚えている。


だから、リーダーの授業の態度の悪さは、反抗期真っ只中の証拠なのかも知れない。





―夏休み―


莉子は、つまらなかった。こんな長期休み、なんで必要なんだろう?そう思わずにいられなかった。だって、珂玖弥に会えない。部活も違うし、補習を受けるほど成績は悪くないし、先生も、いつもの様に同じ時間に学校へ行くわけではないので、待ち伏せしていたところで、会える可能性は、皆無に近いだろう。


莉子は、さっさと夏休みの宿題を片付けると、何処にも行く気がしなくて、浮かんでくるのは、珂玖弥のことばかり。部屋中、珂玖弥の写真でいっぱいにしたいけど、親になんて言っていいか分からないし、そんなこと、普通に付き合ってる男女でも、1枚や2枚だろう。


顔が見たい。声が聴きたい。くちづけをして欲しい。気持ちいいセックスがしたい。


(これって…欲求不満…てやつかな?)


先生は、きっとがいて、今頃、エッチ…してるのかな?なんて、すっかり珂玖弥に洗脳された莉子は、体が体を求めるような、大人な体へと…心へと成長しつつあった。何とも、異様な育ち方をしているのには、間違いなかったが…。

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