3、初めて。

(そろそろだな…)


私は、教室にいた。何をしているかって?珂玖弥先生を待っているんだ。


あの、『女犯されたくなければ』事件の後、珂玖弥先生は、やっぱり、私の視線に気が付いていた。の眼差しを…。それを、なだめてくれようとしたのか、それとも、うざったいと思われたのか、【誰もいなくなった教室で待て】という、メモを、私の下駄箱の中に入れて来た。


私は、前者だったらいいけど、後者だったら、どうしよう…と、かなり焦っていた。だって、あの時の私の眼差しは、誰でもわかる、束縛の眼差しだったから。


『私のものでいて。私だけの珂玖弥先生でいて。他の誰にも、あんなくちづけをしないで…』


そう言った類の熱視線だったに違いない。例え、それが女だろうと、男だろうと、珂玖弥先生のくちびるは、私だけのもの。私はもう半分病気だった。『愛の病』と言うやつだろうか?


「でも、思わなかったなぁ…。自分が、ガールズラブに移住していくとは…」


誰もいなくなった教室で、私はぽつりとつぶやいた。


「ふっ。やはり、莉子は可愛いな。そんなことで悩んでいたのか?」


「珂!珂玖弥先生!」


「そんなに慌てることはあるまい。私と約束していたのだから」


「そ、それはそうなんですけど…急にで、びっくりしたって言うか…」


私は、急にモジモジしだした。


友達からはよく、サバサバしてるね。とか、めっちゃ神経太いよね。とか、可愛らしさの欠片もないよね。とか、散々な言われ方をする私だったが、珂玖弥先生の前では、どんなロリータより甘々で、女の子女の子になってしまう。だって、先生の口癖。『莉子は可愛い』が、壊れないように。先生の前では、言葉遣いまでおとなしくなってしまう。


「何故、莉子、お前を呼び出したか分かるか?」


「…やっぱり、あの視線でしょうか?う…うざかったですか?先生は…ベ…別に、私のものじゃ…無いのに…」


自然と視線が足元に落ちる。何だか涙まで出て来そうな勢いだ。


「………」


先生は、何も言わない。じゃあ、やっぱり、今言ったことが正解だったってこと?と、私は、悲しくなってきた。その涙が零れる一瞬前、私のスカートが勢いよく捲られた。


「キャッ!んっ!」


先生は、制服の下の私のショーツを脱がし、お尻もお股も触り放題。その上、抵抗できないように、とろける程の、これはカルボナーラでも収まらない濃厚なくちづけで、私を圧倒した。


「ん!ん!あ!んん!!」


私の露な声が、誰もいない教室に響き渡る。その声が、自分でも恥ずかしい。でも、出てしまう。出てしまう。出てしまう…!


そして、珂玖弥先生は、下半身に飽き足らず、私の上半身までも支配し始めた。おへそを指でなぞり、肋骨の間を手繰り、そして、指を後ろへ回すと、ブラのホックを上手に取るのだ。私を黙らせるためにしていた濃厚なくちづけはもう要らない。だって、もう私は先生の手のひらの上。なされるがまま、胸を揉まれ、乳首を舐められ、お尻を撫でられ、股をすられる。


私は、立っているのがやっとの状態になってきた。ここにはベッドはない。ソファもない。一生懸命足を踏ん張って、やっとの想いで珂玖弥先生のに耐える。


もう気持ちが良すぎる。セックスなんて、したことないけど、女同士のセックスってこういうもの?私は、ただただ、もう声も出せぬほどの頂点まで気持ちよくなり、初めて、私から舌を動かした。珂玖弥先生の顔をつかみ、先生の舌を舐め回す。


そして、先生の指先が、完全に私の下半身を制覇した瞬間、私は、


「ふあぁ~…」


もの凄い気の抜けた声で、私は、あそこ丸出しで、胸丸出しで、その場にへたり込んでしまった。もう…しばらくは…動けない…。


「気持ちよかったぞ。莉子。お前、キスも上手くなったな」


先生は、何事もなかったかのように、立ち上がった。同じことをしていた人間とは思えないタフさだ。


「これからも、あの熱視線で、私の心をくすぐってくれ。とても耐えきれぬ位にな」


そう言って、先生は教室を出ようとした。私は、その時、とても重大なことに気が付いた。


「せ!先生!!私、私…パンツの替え、持ってません!!」


「………」


先生は、ほっぺの赤い私を、これ以上ないまでにからかった。しかも、本気だ。


「そうか。じゃあ、ノーパンで帰れ。痴漢には気を付けろよ」


「え…えぇ!?」


私のバージンは、こうして奪われることとなった。でも、これで良い。これが良い。私は、先生としたかった。先生に初めてキス…くちづけされた時から、私は、を望んでいた。待ちわびていた。


だって、あんなにくちづけが上手いんだ。セックスが下手なはずがない。先生が、男子にも行けるみたいな言い方をした授業。絶対、男子になんて珂玖弥先生を渡さない。女子だってみんな敵。


珂玖弥先生は、私、安達莉子の物。


もう、そう、くちびるが覚えてしまった。


もう、そう、体が覚えてしまった。


もう、戻れない。


もう、逃れられない。


この、ガールズラブからは…。

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