第8話 言の葉の行方


 

 (言の葉の葉は何だ?)

 携帯の向こうから男は言った。

 

 女は何も答えなかった。

 

 (換気扇を見て思ってたんだ。

 換気扇は、いつから換気扇として存在した?

 扇風機?プロペラ?)

 

 女は、爪でデスクを素早くタップし始める。

 

 (言葉に飽きる事も必要なんだ。

 情報に疲れて自然を求める事と同じ。

 言葉に飽きる時はしかし不思議で、

 思慮の解放、動と静どちらでも無い何か。)

 

 「何が言いたいの?」

 女が言うと、

 (そっちは宜しく。俺は新しい事を作る。)

 弾んだ声で、男は答えた。

 

 5月の風が、勢い良く部屋を駆け抜けた。

 男が一体、なにをしようとしているのか、

女にはわからなかった。

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