第157話 1周年記念配信⑪
『つぼみちゃん、今の気持ちはどうかしら?』
つぼみ『自己紹介!!』
3期生のみんなと話した後、配信には次の人がやってきた。語尾にハートをつけながら色っぽく話す彼女に対し、香織は怒ったように口調を強くしながら自己紹介を求める。
朱里『あはっ、どうもごきげんよう。SunLive.のセクシー担当、鬼灯朱里だよ』
つぼみ『はい、いらっしゃい』
朱里『……なんか冷たくない?』
つぼみ『気のせいだよ~! 今日は来てくれてありがとう!!』
わざとらしく体を大きく動かす猫なで声の香織に対し、朱里はそっかぁ! とこれまたわざとらしく笑ってみせる。割と最近の彼女たちのコラボ配信でよく見る絡み方だ。
性格は少し違うけど、2期生の中では朱里と遊んでいる機会が多いように感じる。なにかシンパシーでも感じているのだろうか。
朱里『いやぁー、私も早くこのナイスバデーを公衆の面前に晒してみたいよぉ』
つぼみ『狂ってるな。脳みそにスポンジ詰まってるのかな』
朱里『うん。メラミンの奴』
つぼみ『詰まってるのかよ……』
互いに殴り合うようなトーク。3Dと言うこともあって香織が呆れたような表情をしているのがありありと伝わってくるが、どうも凄く楽しそうだ。
つぼみ『でもあれだよ、モデルさえできちゃえば3Dは割とみんな使えるみたいだよ。ほら、あのスーツが――』
朱里『あ"あ"あ"あ"あ"! メタいメタい! メタいなほんとにぃ! まったく、振る話題間違えたわ』
つぼみ『そりゃどうも~』
焦ったように香織の発言を遮る朱里。よくやった。
遮った後ももがもが話していたけれど、朱里のきれいな濁音により無事かき消されたようだ。
コメント
:草
:この2人ほんとすこ
:自然体なのが良いんだよな
:メタいwwwww
:このわちゃわちゃ感がたまらないわ
:仲いいなw
:この2人一見合わなそうだけど、めちゃくちゃ合ってて良いね
:つぼみちゃん漏れ出る楽しいオーラ草
朱里『でもこれで配信の幅が広がるんじゃない?』
つぼみ『そうだね。まあ現状はスタジオに足を運ばないといけないというところはあるんだけど、幅は広がった……かな? あれ? 広がってる……?』
朱里『……どうだろ』
つぼみ『3Dじゃないとできないことって何があるかな』
朱里『……跳び箱? えっと、フラフープとか……?』
つぼみ『……ッス~――』
『『これ幅広がってる?』』
『マジで朱里の後に出るの嫌なんだが。普通に厳しいでしょ』
『それ私も思った。一気に破壊してったわ。デストロイヤーかな』
つぼみ『苦労をおかけします。リスナーのみんなはどうせ声で分かるんだろうけど、一応自己紹介をお願いしますね』
メッタメタで幕を下ろしたつぼみ×朱里のトークが終了した後、次の組の2人は嫌そうな声色で配信へとやってきた。
玲音『はい。2期生の柊玲音だ』
百合『鷹治百合です。玲音ちゃんと密室で二人きりだからちょっと興奮する……、フヒ……』
玲音『……』
つぼみ『あの~、引かれてますよ。リスナーもそこ変われじゃないから』
どうやら実際に香織と同じ部屋に行って話しているのではなく、別室で通話越しに話しているらしい。技術的な面でそちらの方が楽なのだろう。
百合『……つぼみ先輩は同類だと思ってました』
つぼみ『私は茶葉ちゃんだけだから。残念ながら』
百合『くっ……、つまりは私も対象外……ってことですか?』
つぼみ『もちろんだね。お二人でどうぞ~』
玲音『ちょっとまって――』
百合『れいちゅわ~~ん!』
玲音『ぎょえぇぇぇええっ!!』
「なにこれ」
あまりのカオス具合に思わず声が出てしまった。まったく、現場で何が起こっているのだろうか。ひとまず玲音ちゃんに貞操の危機が迫っているということだけは理解した。
玲音『もう我帰ってもいいか……』
なんとか自身の体を守り切った玲音ちゃんは、一気に疲れたような声色だ。逆に百合ちゃんは楽しそうに「なんでぇ~」と言っている。自分の胸に理由を問え。
つぼみ『でも私君ら2人が仲良しっての少し意外だったかも。まあもちろん同じ2期生同士だから関わりってあると思うんだけど、結構プライベートとかでも出かけてる感じ?』
百合『そうですね。玲音ちゃん、私は相性良いと思うよ』
玲音『他人からそう思われてるのが不愉快』
百合『でもよく一緒に遊びに行くもんね~』
玲音『それはあんたが誘ってくるからで……』
百合『もう、うちの子ツンデレなんですぅ~』
うんうん、仲良しは良いことだ。
2人とも裏ではめちゃくちゃ礼儀正しいんだよね。普段は口調を崩す百合ちゃんは私達先輩に対しては結構敬語を使ったりする。距離を感じるとか、別にそういうわけではない自然な敬語って感じだ。
玲音ちゃんはもう言わずもがなだよね。お嬢様だから。なんやかんやで相性が良いんだと思う。
玲音『で、3Dはどうだ? 束縛の鎧から解き放たれて、縦横無尽に動き回れる新たな体は非常に爽快ではないか?』
つぼみ『全身使って感情表現出来るのが楽しい!』
百合『かわいい!』
『『???』』
百合『ごめん……』
百合ちゃん、私も可愛いって思ったよ。あの笑顔は反則だよね……。
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